あまりにも働かないから弟にTSさせられて、俺の嫁になれと言われたんだけど…でも百合のほうが良くない?

真堂 赤城

第1話 働かざる者…

「兄さん、そろそろ仕事したら?僕の魔法師団になら今すぐ入れてあげられるよ?」


 まただ、また我が弟が俺に囁いてくる。

 働け働けと何度も、耳にタコができるほどに聞かされた言葉。


 いいじゃないか、俺はかなり頑張ったはずだ、ちょっと休憩するくらい許してくれよ。

 今は羽を休めているんだから。


「また今度な、今は忙しいから」


「そんなこと言って、この前もそうだったじゃないか。今回は何に忙しいんだい?」


「そうか、そうだな…今回はあれだよ、時空魔法を習得するのに忙しんだよ」


「忙しいって…兄さんならすぐに出来るようになるだろ?働きながらでも出来るじゃないか!」


 そりゃあ習得ぐらいならすぐに出来る、だがしかしそこまでだ。

 その先がない、俺は何でもできるが極めることができない器用貧乏なんだから。


「はぁ…分かってないなぁお前は、しっかりとやることに意味があるんだよ」


「そう…兄さん、僕のところにくる?父さんたちに追い出されそうなんでしょ?」


 弟は一気に話を変えた、本当に言いたかったのはこっちなんだろうと言うことがうかがえる。

 いつものこと、弟が俺に働けと言うときは何か言いたい本題があるとき。


「いやいや、別に追い出されそうじゃないよ。早く働けって圧をかけられてるだけで」


「でも働かないなら出てけって言われてるじゃん」


 弟のところに行けば絶対に何か仕事をさせられる、嫌だ!

 でも返す言葉が見つからない、クッソ。


「ぐぬぬ…」


「兄さんが僕のところに来ても働かなくてもいいよ?僕と結婚してくれるなら」


 結婚…?弟が冗談を言い始めた、それも全く面白みのない。

 これは…笑った方がいいのか?


「は、はははは…はは」


「兄さん、別に冗談を言ってるわけじゃないよ?僕は本気さ。兄さんは僕のことをいつも励ましてくれて…感謝してるんだ」


「おいおい、俺は男だからお前とは結婚何てできないぞ?まぁ女になったなら考えてやらんこともないけどな!はっ!はっ!はっ!」


 弟の珍しい冗談に俺も軽口を返す、久しぶりのまともな会話。

 少し楽しい。


「言ったね?」


 しかし弟はとても真面目な顔、そして“今の言葉覚えたからね?“と一言残して部屋を出ていった。


「ふぅ、楽しかった。一応時空魔法の本でも読んでみるか」


 言葉に出したからには粗を出さないように少し読んでみることにした。

 良い暇つぶしにもなるしな。


      ☆


「兄さん起きて!早く起きてよ!」


「んぅぅ?」


 弟の声で目が覚める。

 そしてまだ重たいまぶたと目を開きたくないという精神をねじ伏せ、なんとか開く。


「なにぃ…?まだ眠いからねたいんだけどぉ?」


「兄さん、もうお昼だよ?いつもこんなにも遅くまで寝てるの?」


 弟が言うにはもう12時らしい、だがおかしい、俺はほんの少し前に寝たはず…。

 そう思いながら外を見ようと体を起こすと、違和感を感じた。


 胸が重い、そして股間が寂しい、大きな違和感が…。

 俺は瞬時に弟を疑った、もっと信じてあげろという声が聞こえてくる気がしないこともないが速攻で疑った。


「何かした?」


「兄さんは昨日の言葉覚えてるでしょ?ふふ」


 俺は昨日の自分に感謝した、時空魔法を少し学んでおいた事に。

 即、家の外に瞬間移動を開始した。


 あの狂気的な笑顔から逃れる、その一心からの最速の発動。

 惚れ惚れするほどのスピードだった。

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