廃れた心

佐々木 煤

三題噺 「雪」「メリーゴーランド」「最高の目的」


幼い頃、家族で遊園地に行った記憶がある。雪が降り始める季節に寒い寒いとはしゃぎながら、両親と手を繋いで園内を歩いた。ゴーカートや観覧車に乗ったり、うさぎの風船なんかも買ってもらったりした。けど、キラキラと輝くメリーゴーランドには乗せてもらえなかった。今思えば、年齢制限で乗れなかったんだろう。当時の私はメリーゴーランドの馬車に乗りたくて仕方なくて、駄々をこねて泣いた。父がわたあめを買ってきてあやしてくれた。いつしかメリーゴーランドに乗ることが人生で最高の目的になった。

20歳になった私は大学2年生になった。あれからメリーゴーランドには乗ってない。あの輝く世界に踏み入れる気持ちはすっかりなくなっていた。受験に失敗したり、恋人に振られたり、人生は踏んだり蹴ったりでメリーゴーランドに憧れている暇もない。きらきらに惹かれる心が回復するまで、私はきっとメリーゴーランドにも乗れないだろう。

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廃れた心 佐々木 煤 @sususasa15

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