第16話 すれ違う思い
学校が文化祭一色になり始めた頃、徳山先輩が彼女と別れたと噂になった。
うちの学校の生徒会は、良きにつけ悪しきにつけ注目を浴びる。
徳山先輩は生徒会というより、生徒会の議長団だった。
学級委員会を取り纏めする人で、その議長をしていた。
性格は温厚で、垂れ目で笑うと目が無くなるのが可愛いと人気だった。
いつも周りに気遣いしていて、私が倒れた時に保健室に連れて行ってくれたのがきっかけで、私とは兄妹のような関係になっていた。
いつも紺野先輩と一緒に居て、凄く仲が良いらしい。
「相原」
廊下を歩いていたら、徳山先輩に声を掛けられた。
「あれ?先輩、1人ですか?」
紺野先輩をキョロキョロ探すと
「紺野?あいつは今、職員室」
そう言われてホッとする。
「そんなに紺野が苦手?」
苦笑いされて言われ
「紺野先輩は平気ですけど、仲良くしてると周りが……」
って苦笑いを浮かべた。
すると徳山先輩は
「あぁ……。あいつ、今、人生最大のモテ期だからな」
そう言って、クスクス笑っている。
徳山先輩と居ると、お兄ちゃんと居るみたいで安心出来る。
「でも、迷惑だって叫んでますけどね」
そう呟いた私に、徳山先輩は
「まぁ…紺野はどっちかと言うと、好きとか嫌いとか分からないって言っているタイプだからな〜」
と言うと、
「俺に彼女が出来た時『彼女と友達の違いって何だ?』って聞いて来たな」
そう言って苦笑いしていた。
「あの……大丈夫ですか?」
ぽつりと先輩に聞くと、先輩が私の顔を見て
「何が?」
って不思議そうな顔をした。
「彼女さんと……別れたと聞きました。先輩が大好きな人だったと、紺野先輩から聞いていたので……」
すると徳山先輩は苦笑いのまま
「うん……、そうだね。でも、仕方ないかな?俺さ、男ばかりの兄弟でね。がさつなんだって。女の子の気持ちとか、良く分からなくて」
そう答えた。
私は先輩の無理している笑顔が辛くて
「あの!私も好きとかそういうの……良く分からないです。でも、先輩が優しくて良い人っていうのは分かります。だから、先輩の良いところも悪いところもひっくるめて『好き』って言ってくれる人、絶対に現れると思います!」
そう叫んだ。
先輩は少し驚いた顔をしてから、ふわりと優しい笑顔を浮かべて
「ありがとう」
と言うと、私の頭を撫でてくれた。
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