第15話
だから私は、3年生の嫌がらせがありながらも部活は楽しくて大好きだった。
3年生が原稿を作り、2年生が印刷機で印刷。
それを私達がクラスの人数分を数えて、職員室にあるクラス用のBOXに新聞部発行の新聞を入れて行く。
それが終わると、夏休みになるのだ。
新聞部発行の新聞は、季刊誌になっている。
年に4回の全校生徒への新聞発行、それ以外は壁新聞でアンケート結果や面白い記事を不定期に貼り出す。
夏の大会になると、私はバレー部の取材を外されてしまった。
剣道部の取材にだけ行き、バレー部は3年生が向かった。
紺野先輩の人気は留まることが無く、何故か月日と共に紺野先輩ファンが増殖して行った。
私は夏休み中、紺野先輩に会うことなく三送会を迎えた。
おそらくバレー部も三送会を行って、3年生は引退したのであろう。
慌ただしく月日は流れ、新聞部は2年生の代になった。
すると
「邪魔な3年生が居なくなったので、今後の新聞部の活動は私達教師の許可を取って下さい」
と、福田先生が新部長の田中先輩と副部長の中嶋先輩を紹介した後、私達に言って来た。
どうやら3年生はやりたい放題やっていて、問題児扱いになっていたらしい。
しかし、どんなに注意しても言う事を聞かないので、先生達はお手上げ状態だったと話していた。
実際、3年生が引退してからの方が、部活は楽しかった。
私と中村さんは、中嶋先輩の大ファンだったので、中嶋先輩も私達を可愛がってくれた。
そんなある日、私はお菓子作りが趣味で、この日はみんなで食べようとクッキーを大量に作って持参した。
夏休みも残り僅か。
お昼ご飯を食べた後、まずは先生達にクッキーを差し入れしてから部活へと持参。
中嶋先輩には、別に可愛らしく包装をしたクッキーを手渡すと
「え!私だけ別にもらって良いの?」
って聞かれて
「はい!大好きなので!」
と笑顔で答えると
「え~?相原さんが好きなのは、小島でしょう?」
って、言われてしまう。
夏の大会以来、小島先輩を見掛ける事も少なくなっていた。
「え!あの……小島先輩は憧れです!」
みんなで私が作ったクッキーをつまみながら食べていた時に言われてしまい
「相原さんが剣道部に取材に行く理由は……そういうこと」
と、みんなにニヤニヤされてしまった。
「ち……違うから!本当に憧れなの!」
そう叫んだ。
すると中嶋先輩は何かを思い出したように席を立ち
「ちょっと職員室に行ってくる。戻るまで、文化祭の出し物の候補を出しておいてね」
と言い残し部室を後にした。
私達がクッキーを食べながら、あれこれ意見を出し合っていると、中嶋先輩が戻って来て
「お待たせ。じゃあ、決めちゃいましょうか」
そう言うと、影の薄い部長の田中先輩の司会で文化祭の出し物を決めて行く。
部活が終わる時間になった頃、突然部室のドアが開き
「中嶋~、さっきのクッキー誰が作ったの?」
って、小島先輩が部室に入って来たのだ。
(さっきのクッキーって……)
私が固まっていると
「あぁ、彼女。相原さんだよ」
って、中嶋先輩が私を指すと、小島先輩は私の顔を見るなり
「あ!新聞部の1年生だ」
そう呟いた。
そして、テーブルに少しだけ残っているクッキーを見付けて頬張ると
「これ、美味かった!ありがとう」
と笑顔で言うと
「それだけ伝えたかったんだ」
そう言って、最後の1つに手を伸ばして再びクッキーを口に入れると
「部活後ってさ、腹減るんだよね。残りは食べながら帰るわ」
そう言って、ポケットから包装されたクッキーを出して悪戯っ子の笑顔で言いながら去って行った。
「小島!お前、自分の分を食べてからこっちを食べなさいよ!」
走り去る小島先輩に怒る中嶋先輩に、小島先輩はあかんべしながらそのまま去って行った。
「本当に信じらんない!相原さん、あんな奴の何処が良いわけ?」
怒って振り返った中島先輩に
「可愛い……」
と呟いた私の声を聞かれてしまう。
私と中嶋先輩は一瞬見つめ合うと
「相原さん、あれが可愛いって……病気だよ」
そう溜め息混じりに言われてしまった。
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