第11話

一番変な人に、『変な人』扱いされるのは納得いかない!

私が頬を膨らませていると、紺野先輩が私の膨らませた頬を親指と人差し指で潰してきた。

「やめて下さい!もう、子供ですか!」

「そっくりそのまま、お前に返すよ」

笑う紺野先輩が、私の額に再び何かを当てて来た。

ひんやりとした感触に、思わず受け取ってしまうと、それは缶ジュースだった。

「これ、なんですか?」

「あ?見て分からないのかよ」

「ジュースですね」

「ジュースだよな」

そう会話を交わした後で

「それ、俺様の奢りだ」

と言うと

「感謝して飲みたまえ!」

って言って、ニッと子供みたいな笑顔を浮かべた。

「え?これ、開けたら吹き出すとかじゃないですか?」

疑いの眼差しを投げると

「お!良く分かったな!いっぱいシェイクしてあるから気を付けろよ」

そう言うと、私の額にデコピンしてバレー部の人達の輪の中へと入って行った。

「変な奴はお前だ!」

ポツリと呟き、私達に用意された席に座る。

中村さんはニヤニヤしながら

「紺野先輩ってさ、相原さんを見るといつも飛んで来るよね」

って呟いた。

「え?そう?」

迷惑そうな顔をして呟くと、中村さんはニヤニヤしたまま

「妹相手に、わざわざジュースまで用意しないでしょう?」

と続けた。

「え?上げようか?これ、凄いシェイクしてあるらしいよ」

中村さんにジュースを差し出すと

「あ!私は川上先輩からもらったから、大丈夫」

って微笑んだ。

「えー!じゃあ、私も川上先輩から欲しかった!だって、飲めないジュースって罰ゲームだよね?」

私の言葉に、中村さんは大きな溜息を吐いて

「鈍感って、時には罪だよね」

そう呟いた。

私が中村さんに疑問の視線を向けると

「あ!ほら、そろそろじゃない。ウォーミングアップ始めてるよ」

って、指さして叫んだ。

いつも悪ふざけしてる顔しか見た事が無い紺野先輩の、真面目な顔がなんか……不思議だった。

でも、一生懸命打ち込む姿は、どんな人でもカッコイイ!

ちいさな158cmの身体で、高く飛んでボールを操る紺野先輩は確かにカッコ良かった。

いつも飛んで跳ねて走り回るだけの事はあるなぁ~って、コートの中を走り回る紺野先輩を見ていた。

が!何気に川上先輩もめっちゃカッコイイ!

派手な動きは無いけど、どんなボールも必死に拾う姿はさすがキャプテン!

気が付いたら、私と中村さんは我を忘れて応援してしまっていた。

そして見事、バレー部1回戦突破。

新聞部で1回戦突破の感想を聞く。

嬉しそうに

「新聞部の応援のお陰だよ!みんな声が出てたし、動きも良かった!」

って笑う川上先輩に、私達も笑顔になる。

「2回戦、午後だけど居るよね?」

笑顔で聞かれて、私と中村さんが顔を見合わせる。

「すみません……剣道部に行くんです」

小さくなって答えると

「剣道部って、あそこの武道館だろう?俺達の2回戦のときは、抜けて応援に来いよ」

他のバレー部の先輩達に言われて困ってると

「我儘言っちゃダメだよ!新聞部も都合があるんだから。ほら、こっちの試合が終わったんだから、向こうに行って来いよ」

黙ってスポーツドリンクを飲んでいた紺野先輩が、タオルで顔を拭きながら呟いた。

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