ミャーマのスキル講習
俺は三歳になった。生まれたての頃に比べればそれなりに自由に動けるようになった。
(やあ、元気かいザウグレス)
俺の中には唯一神を自称するミャーマ=クライマという存在が居座っている。なんでも色々あって療養するためであって俺の体を乗っ取ろうとしているわけではないと初めて話しかけてきたときに説明してきたが、警戒することに越したことはない。
(何か用か?)
(この間魔法を教えたし、今度はスキルの使い方について教えようかと思ってね。例のところで教えるから親の目の届かないところに行けるかい?)
(ん、わかった)
信用はしてないが、こうやって異世界知識を教えてくれるのでこういうときは素直に従うようにしている。
「おかあさん、もりのほうであそんできていい?」
「いいわよ。気をつけてね」
「はーい」
家はお母さんが所有している山の頂上に建っていて、麓から家までの整備された道以外は木々が生い茂る大森林となっている。一応森には魔物や野生動物も住んでいるのだが、お母さんはとても強い魔術師なので俺が危険になってもすぐに助けられるのだろう。もちろん危険なことはしはしないのだが。俺が森の中に入るとミャーマが空間魔法で俺を異空間に引きずり込んだ。
「やあ」
ミャーマの姿は白い人型のようなもので顔もないし突然出くわせば誰でも逃げ出しそうな見た目をしている。
「お前、もうちょっとその姿どうにかならないのか?」
俺に姿のことを指摘されたミャーマは大げさに肩をすくめた。
「私の場合魂が残ったって言ったってほとんどの情報を喪失した状態だからね、元の姿を投影するのはとても難しいのさ。そんなことは置いておいてそろそろ始めようか」
「へいへい」
ミャーマはどこからか一枚の薄茶色のカードを出すと俺に手渡してきた。
「これは?」
「ステータスカードといわれるものさ。自分のステータスなんて解明眼使ったって見えるもんじゃないからね。それは先人たちが涙ぐましい努力の果てに作り上げた魔道具だよ。それに魔力を流してごらん?」
俺が魔力を流すとよくわからない文字列が表示された。
「何この文字」
「ああ、そりゃ読めないか。それは古代魔法文字って言ってね、人魔大戦の頃まで使われてた魔法文字だよ。それはその頃に造られたオリジナル品に限りなく近いものだからその文字で表示されるようになってたのか。懐かしい。ま、私が紙に現代文字で書き写してあげるよ。それとも日本語がいいかい?」
「日本語で頼む」
正直こっちの言葉は話せるけどまだ文字がよくわかってないからな。簡単な文なら読めるが長文になると何のこっちゃかよくわからない。
ザウグレス=リームロック
人族/3歳/男
職業:剣士レベル99
筋力:120
敏捷:140
体力:400/400
魔力量:12000000/12000000
魔力強度:2700000
魔法適性:火、水、風、土、雷、氷
スキル:
《転生の神》ランク6
『無制限時間制御』ランク6
『無制限空間制御』ランク6
『無制限物理法則制御』ランク6
『無制限地形操作』ランク6
『無制限物質生成』ランク6
『直截干渉無効』ランク6
『炎神の加護』ランク6
「うん、さすがにまだ進化はしていないか」
「え!?レベル99!?なんでこんなに高いんだ!?」
スキルの数々や魔力量の多さはイザナミという俺を転生させてくれた神様も驚いていたから今更何も言わないが、さすがにレベルが高いのは看過できない。何か特殊なスキルがあるわけでもないのになんでこんなに上がってるんだ?
「というか、レベルってどこがカンストなんだ?」
「一応の上限は99だな。進化すればその限りではないけど」
「進化って?」
「今はその話はやめておこう。今日はスキルについてレクチャーするからな。私もあまり長時間活動したくないからな」
「むう……」
ミャーマは大量の巻物をドサドサと俺の前に落としていった。
「これは?」
「スキルスクロールだ。スキルの習得は条件を満たしたりすれば勝手に獲得できるもんなんだけどな、このスキルスクロールを使えば手軽にスキルを獲得することができるんだ。ここにあるのは基本的なスキルばかりで珍しいものはないけどな。表面にスキルの名前が書いてあるだろ?書いてないやつは習得不可能スキルだから私に渡せ」
「ん」
俺は数ある巻物の中からなにも書かれていない巻物を全てミャーマに渡していく。俺が巻物を渡す度に段々とミャーマの顔が変なものになる。
「お前、耐性系のスキル全般がだめなのか?」
「別にいいだろ。要は攻撃をくらわなければいいんだろ?」
やることは転生前と大差ない。強いて違いを言うなればゲームか現実かといったところだ。
「ま、それもそうだな。試しに残ったスキルを習得してみろ」
俺がスクロールを開くと巻物が一瞬光って消滅し、ステータスカードに新たな文字列が追加された。
「この火魔法、水魔法とかってなんなの?別に魔法なんてスキルなくても使えるよな?」
「使えるぞ。今はスキルを使って魔法を使う愚か者が多いが、昔は威力上昇などに使ってたな」
ビックリした。スキルがないと魔法が使えないのかと思ったがそんなことはないらしい。
「スキルってどう使うんだ?」
「簡単だ。スキルの名前を唱えるだけで発動はできる。慣れれば無声発動もできるようになるだろうよ」
「ほえー」
「とりあえずスキル借りるぞ。手を出せ」
俺が手を出すとミャーマがそれを取る。
「『無制限地形操作』」
ミャーマがスキルを発動させると俺らからかなり離れた所の地面が盛り上がりエベレスト並の山が出来上がっていた。
「これに関してはイメージがしやすいからな。お前の持っているスキルの中でももっとも使いやすい部類のスキルだろう。戦闘では使えんだろうが、まあやってみろ」
「わかった」
俺はミャーマが作ったような山をイメージして『無制限地形操作』を唱える。ミャーマが作ったものよりも低いし形は悪いが山が出来上がった。
「初めてにしては上出来だ」
俺はとんでもない疲れを感じてその場に座り込んだ。一瞬魔力切れかなとも思ったが、魔力が抜ける感覚はなかったし、何より俺の膨大な魔力量でそんなことが起こるなど到底考えられない。
「意思力切れだね。スキルは魔力だけじゃなくて意思力、精神力みたいなものを消費するからね。無制限系のスキルは魔力は使わないけど、意思力の消費は普通にあるからね」
「名称詐欺だろ……」
「これでも意思力の消費はかなり抑えられているんだよ?本来なら魔力の消費もあるし、意思力の消費も二倍くらいあるからね」
「意思力を回復させる手段は?」
「休む以外にないわね」
「まあそりゃそうか」
精神力を回復させるポーションなんてあったらそれはそれで問題か。
「じゃあ、今日はもう無理?」
「そうだな。また教えるのは今度になるな。次起きれるとしても1か月後ってところか。それまで多少は練習しておけ」
「ん」
ミャーマが俺を異空間から出してくれた直後、視界が暗転した。
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