最高級の紅茶

トーナメント戦を終え俺が家に帰ってドアを開けるとそこにはノストラおじさんがいてお茶を啜っていた。もういいや。一旦閉めよう。


「なんで閉めるのかな!?」

「家が近くなったからって日常的に来るな!」

「いいじゃないか」

「良くない!仮にも国王だろ!仕事は!?」

「もう終わった」

「息子のお祝い」

「あとでやる」


あわれなエトレート。親にお祝いを後回しにされるとは。


「はぁ」

「人の前で大きなため息をつくのやめないかい?」

「だっておじさんの前じゃん」

「いや私はこれでも国王なのだが?」

「国王なら国王らしく帰って仕事しようよ」

「イヤダ、シゴトキライ」


ノストラおじさんがいきまりカタコトになった。どんだけ仕事嫌いなんだよ。


「はぁ」

「だから人の前で大きなため息をつくのやめないかい?」

「新入生代表挨拶なんてしたくない」

「なんだ。そういうことか。でもどのみちトーナメントなくても首席はザウグレス君かレストン君だろう?」

「まあ、そうなんだけどさ。やっぱりやるとなったらこうなるんだよ」


昔からこういうのは苦手なのだ。だからオンラインゲームでもギルドマスターだけは絶対に引き受けなかった。強いからといって皆の前に立てる才能があるかと言われたらそうではないだろう。


「ふふっ。平和な悩みだね。それよりもこの紅茶美味しいね。どこで買ったんだい?」

「買ってないわ。それ、自家製よ」


キッチンの方から母さんの声が聞こえてくる。自家製?ってことはアレか。


「多分それ竜の骨だよ」

「よくわかったわねザウグレス。さすがだわ」


よくわかったもなにも、この材料を狩ってきているのは俺なのだから当然行き着くべき答えだろう。


「竜の骨?そんな名前の紅茶なのかい?」

「いや、竜の骨を砕いて粉末状にしてお湯にとかした紅茶もどきだよ。それ、以外と美味しいんだよね」


ブフォン!とノストラおじさんが紅茶もどきを吹き出した。


「汚いな」

「ちょっと待って!竜の骨の粉末!?それ最高級の紅茶の茶葉を100セットくらい買ってもお釣りが来るよ!?そんなにお前金持ってたか?いや、持ってそうだな……」

「流石にそんなにお金持ってるけどそこまでして買うようなものでもないでしょ」


そう言って母さんがリビングに出てきて俺の方に視線を向ける。


「ま、まさか……ザウグレス君が竜を狩ってくるのか?」

「そうよ。最近は毎日のように持って帰ってくるわ」

「ざ、ザウグレス君?なんで売らないんだい?売ったら相当高く売れるよ?」

「いや、もう何回か売って相当金になったからもういいかなと思って」

「そ、そうかい」

「まだいっぱい異空間収納に余ってるからいらない?」

「い、いや……いいかな。どうせ竜の骨の粉末なんてまともに取れないからね」

「なんで?」

「竜を狩ることができたとしても相当状態が悪いからね。それに一定以上の魔力を受けると竜の骨に毒を持つようになるからね」

「大丈夫だよ。毒は浄化してるから」

「そんなこともできるのか……」


ノストラおじさんは呆れた目で俺を見ていた。

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