第4話 児童公園
今、都心の公園なんかに1人で来ている女の子はいないんじゃないかと思う。
俺が住んでいる辺りでは見たことがない。
今はもっと娯楽が沢山ある。スマホを持たせておけば、子どもを夜まで放っておける。YouTubeやゲームなど無料のコンテンツが無限にあるからだ。昔は今ほど子どもにゲームを与えてなかっただろう。漫画だってゲームだって、手元にあるのは限られている。飽きると公園にでも行こうか、となる。
でも、その頃はまだ外に一人でいる女の子がいた。
俺が住んでいた所は、親が子どもを放置している家庭が散見された。近くのショッピングモールに行くと、小学生がゲーセンでメダルゲームをしてたり、夜9時くらいになっても一人で100均に来ている子供がいたもんだ。
俺が子どもの頃は、ゲーセンは立ち入り禁止だったから、随分すさみ切った小学生だと思った記憶がある。ああいう子は中学校で彼氏彼女ができて、酒タバコを始める気がする。退屈で時間を持て余して、居場所を求めているんだ。
俺は公園に一人でいる女の子に声を掛けてみようと思った。
別に話すだけでよかった。
理由は単に面白そうだったからだ。それに、子どもに慕われたい。
大人の女はすぐ勤務先を聞いて来る。業種や年齢から年収を見積もって、合格なら愛想がよくなるし、そうでなかったら距離を取るようにする。以前は、そういうのを何とも思わなかったが、大企業をやめたせいで、前ほどもてなくなっていた。
俺は近所の公園全部に行ってしまった後、隣の駅まで遠征するようになっていた。走るのが早いからすぐ着いてしまう。とりあえず、児童公園など子どもがいそうな所に行く。一人でいるのは男子が多い。そういう時はがっかりするし、スルーする。俺がベンチに座っていると、男子でも話しかけて来るのがいる。
基本的に一人でいる子は心細いのかすぐ話に乗って来る。基本的に子どもは構って欲しいもんだ。一人で外にいる時点で、親が構ってくれない子である場合が多い。
こんなことを言っていた子がいた。
「親が5歳の時に離婚して、今はお父さんと住んでる。お母さんにはたまにしか会わないけど、会うと何でも欲しい物を買ってくれる。5歳くらいが一番幸せだった」
こんな話を見ず知らずの俺に言う。可哀そうだけど俺にしてあげられることはない。話を聞いてやったとしても、その子の心の渇きは埋められない。
今はもう大人になっているだろうけど、親と同じような人生を送っている気がするんだ。
俺が子どもと鬼ごっこなんかしてると、お父さんだと思って誰も疑わない。
子どもと遊んで「変な人がいるから気を付けるんだよ」と言って別れる。
俺は善良な変態だから、子どものことが本気で心配になる。
子どもは人の言うことに素直に従うし、隙だらけだった。
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