【No. 066】【うんこ注意】The best partner of yours

我々生物にとり、最大のパートナーとは誰であろうか。ふと、そんなことを考えたところ――結論は、一瞬にして見出された。


うんこである。


うんこ。便秘でもなくば、今日も貴様の肛門からプリっと生まれてきたはずだ。いや、ミチミチィッ、やもしれぬ。或いはブッシャァッーwwwべべべべべッwwwwwビョッヌッヘッハッホッフゥッーwwwやもしれぬ。だがそこはどうでもいい。うんこは、いわば貴様自身なのである。物体αが経口摂取され、貴様の体内を駆け巡り、やがてうんことして育ち、生まれる。そのドラマに思いを馳せるが良い。それは例えるならば、ダンテ・アリギエーリ「神曲」も真っ青な道程であろう。ところでなんの気もなしにつぶやいたが、ダンテはその作中にて九なる地獄を渡り歩いた。翻るに我々人類一般の消化器官を順に語れば口腔、食道、胃、十二指腸、小腸、上行結腸、横行結腸、下降結腸、そして直腸。こちらも九である。うんこにはダンテを導いたウェルギリウスがごとき存在こそおらねど(いや、蠕動がウェルギリウスであるとも言えようか)、直腸、すなわちコキュートスをさらに進み、たどり着きたるジュデッカに待ち受けるは、氷漬けの堕天使ルチフェロ、ではない。肛門である。ああ、何という符合であろう! かくてうんこはブッシャァッーwwwべべべべべッwwwwwビョッヌッヘッハッホッフゥッーwwwと現世にあらわれ出でるのだ。まるでダンテがウェルギリウスとともに、煉獄へとたどり着いたかのようではないか! だが悲しいかな、出会いは一瞬である。あるいは野に放たれ、あるいは水に流され、あるいはパンツとともに捨てられ、貴様とうんこは別れるさだめである。数多くの苦難を乗り越え、出会った二人であると言うのに、なんとも酷なことではないか! ならば見よ、とくとうんこを見るのだ。貴様の体内は、まさに地獄である。口腔内では唾液。胃では胃酸。十二指腸では胆汁。小腸ではトリプシンやエンテロキナーゼ。これら獄吏よりの切れ目なき責めにさらされた後、さらに上横下行結腸では水分を搾取され。その上で、ようやくうんこは貴様の前に姿を表した。悲しきかな、うんこにもたらされた責めが過酷であればあるほど、それは貴様の壮健なるを示している。翻るにうんこがうまくうんこに転生しきれずに物体αの面影を残しているのであれば、それは地獄が、すなわち貴様が弱っている証である。うんこは貴様について、貴様が思った以上に多くのメッセージを秘めている。すぐに別れると知りながらも、それでも貴様の前に姿を表すのは、他でもない、貴様のためである。貴様により良き人生をもたらさんと思うからこそ、多くの責めを乗り切ってこれたのだ。これではどちらがダンテで、どちらがベアトリーチェなのかもわかったものではない。この得難きパートナーには、圧倒的感謝しかない。さあ、ならば今日もよきうんこと出会うため、物体αを摂取するが良い。新たなる出会いと別れを繰り返し、我々はまた成長を遂げる。ネガティブな因子は、すべてうんこが引き受けてくれよう。


すべてを、解き放つのだ。

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