ある老人の例
第4話 手伝いロボット
一人の男は、使い慣れない手つきでネットニュースの画面を眺めていた。
「人気配信者、チキチキンさん死亡。原因不明の自宅死、警察も狼狽」
そう書かれたネット広告。ニュースでも話題になっていた。
――たかが人気配信者だ。そんな若もんの死など、別に何の興味もない。
最初はそう思っていたが、メディアが騒いでいるのはそのせいじゃないということを知った。
彼の死は自宅死だった。
彼の死から3日後、さすがに何の動きもないことを気にした近隣住民が管理人に報告し、インターホンを押したが何の反応もない。メールしてもダメだということで、合鍵を使って入ってみたところを発見された、ということだった。
彼は、自宅の布団で眠るように死んでいた。病気か、老衰か、それとも殺人か。警察は早速調査を始めるわけだが、畳の上に敷いてある布団の上で死んでいる、そして、すぐそばに開封された段ボールがあるということだった。
警察は段ボールにウイルスが入っていたのではないかと思って捜査を進めているらしいが、後頭部が少しだけ凹んでいることが分かり、殺人の可能性も出てきた。だが、それにしては状態がキレイすぎる。そんなこんなで、捜査は難航しているそうだ。
だが、60代後半の老人には少し興味を引かれただけで、日常に関係はなかった。
去年、定年退職したばかりで、妻と二人でいたが、妻が先月に病気で死亡したわけで、一人で暮らすしかなかった。
料理は適当に作るか、弁当を買うか、外食だった。火事は手馴れないわけで、洗濯はコインランドリー、風呂は温泉という生活だった。当然金を消費するわけだが、趣味のパチンコはどうしてもやめることができず、彼は完全に貧乏暮らしだった。
―—手伝いしてくれるもの、自分を管理してくれるものが欲しい。
そう思い始めたのはほんの数日前のことで、家事のロボットをたくさん探した。
自分にはパチンコというものがある。それはどうしてもやめられないから、せめてしっかり家事をして節約をしよう。
そう思って探し始めたわけだが、やはり最新のロボットというものはどうしても高く、ギャンブル生活の貧乏人にはとても手が届かないものだった。
だが、それでもめげずロボットを探し、サービスを探す。
今日もいつも通りネット検索でロボットについての記事を見ていたところだったのだが、そこから何やら変なところを押してしまったか、変なサイトに入ってしまった。
「戻らないとな。ええっと・・・・・」
そういうわけで、いつも通りパソコンに慣れない老人だったが、なぜか左矢印ボタンを押しても、戻れない。
「何でだ?」
何回試してもダメだ。もう、諦めたところでずっと流れていたアニメーションが止まり、サイトが出てきた。
「魂コレクターズ」
サイトにはそう書いてあった。
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