夢の中で
Bさんは若い頃に海外へ留学していた経験がある。
「語学力を身につけるためにどうしてもね。さばけてる両親だから大丈夫かと思ってたんだけど」
予想に反してかなり反対されたんだそうだ。
「特に母がすごくて。母の友人で留学したまま海外に住みついちゃったり、音信不通になっちゃう子なんかもいたらしくて留学にすごく否定的だったの」
絶対に日本で就職する、でもやりたい仕事には語学力が必要不可欠なんだと言っても頑として受け付けてもらえなかった。
「それでどうしようもなくなってね」
抗議の意味も込めてBさんは家出した。
「思いつめちゃって、ちょっと死ぬこととかも考えてた」
当面、隣駅のネカフェにでも泊まるつもりだったのだが
「家を出る前に寄っておこうと思って行ったの」
T市には学業に強い神社がある。
受験生などはわざわざ初詣に参拝しにくるパワースポットだ。
「T神社って言うんだけど、最後の神頼みをしてみたの。そしたら…」
その日の晩、ネカフェで寝てると夢に「彼」が出てきたんだそうな。
「菅原道眞って知ってる?なんか多分そうなの。スーツを着た優しそうなおじさんでネームカード下げてたんだけど「すがわら」って書いてあるの」
あなたが熱心に勉強してるのも知っているので自分が良いようにしておいてあげるからバカなことは考えないで家に帰りなさい、とその菅原道眞らしきおじさんは言ってくれたのだと言う。
その後、家に帰ると両親も冷静に話し合いに参加してくれて無事に留学となったのだそうだ。
聞くとやはり両親も同じような夢を見ていたらしい。
「今もちゃんと初詣には家族みんなでお礼に行ってるよ」
そうBさんは笑う。
完
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