【完結】婚約破棄された私は異国の地で小麦を育てる。そして祖国ではお家騒動が勃発する。

えんぴつけずり。

第1話 婚約破棄&妹の暗躍

私はこの辺りで一番の大国である

カリンルカ王国の第一王女で、

名はナタリーという。


そんな私に衝撃的な一言が告げられる。

「結論から言おう。私と君との婚約は破棄される事になる」

そう言ったのは私の婚約者で、

隣国アンバル王国の第二王子でもあるアレックス王子だ。


勿論私は納得できなかったのでこう叫んだ。

「どうしてなのですか!?納得できません!!」


アレックス王子はこう答えた。

「どうしてなのかは、君が一番分かっているのではないか?」

そう言われたが、私には全く身に覚えが無かった。


「これは何かの間違いです。私は何もやましい事などしておりません」

私はそう反論したが、アレックス王子は淡々とした表情でこう続けた。

「ふむ。あくまでも認めないのか。では証人に話をして貰おうじゃないか」

そう言ってアレックス王子が手を叩くと、一人の男性が現れた。


それは私の幼馴染で、王国軍の騎士でもあるジョンだった。

彼は申し訳無さそうな表情をしながらこう言った。

「申し訳ありませんナタリー殿下。全ては私の責任でございます」


いきなりそう言われても、私には何の事だか全く分からなかった。

しかし彼は俯いたまま黙ってしまった。


そんな彼の代わりにアレックス王子がこう言った。

「君は私という婚約者が居る身でありながら、この者と淫らな行為を行ったのだ。その様な事は看過できるものでは無い」


その言葉は寝耳に水だった。

確かにジョンとは幼馴染でそれなりに仲が良いが、それだけだ。

やましい事など一切していない。


私は反論を続けた。

「これは何かの間違いです!その者とはただの友人でございます!」

しかしアレックス王子は声を荒げながらこう言った。

「複数の騎士の証言があるのだぞ!!それでもまだ言い逃れをすると言うのか!?」

私はその剣幕に気圧されていた。


そこに私の妹で、

我が国の第二王女でもあるローズマリーがやってきてこう言った。

「往生際が悪いですわねお姉様。大人しく罪を認めれば処分は軽くなりますわよ?」

妹はそう言うと邪悪な笑みを浮かべた。


その瞬間に私は全てを察した。

これは私の妹が仕組んだ事なのだと。


彼女は頭が良いし人望もある。

だが悪い噂もちらほら耳にする。

今回の事も、私を貶める為の陰謀なのだろう。


観念した私はこう言った。

「納得できませんが、処分は甘んじて受け入れます」


妹に逆らっても無駄である。

それは何度も同じ様な経験をしてきたので良く理解している。


それにアレックス王子との婚約は、

いわゆる政略結婚という奴である。


私と彼には幼い頃からの付き合いがあるが、

特別な感情を抱いたりはしていない。


なのでこれは最善の選択だろう。

私はそう信じる事にした。


すると私の父でもあるカリンルカ国王がやって来てこう仰った。

「それでは我が娘ナタリーとアンバル王国の第二王子であるアレックス殿との婚約破棄を正式に認める事とする」


それを聞いた私の妹は、

また邪悪な笑みを浮かべていた。

やはり彼女が裏で手を引いているのだろう。


父様はこうも仰った。

「だが安心するといい。ナタリーの新しい婚約者が早くも見つかったのだ」

私は驚いたが、平静を装いながらこう答えた。

「新しい婚約者とは一体どの様な御方なのですか?」

すると父様は笑顔でこう仰った。

「ヴァルイリス王国の第一王子のウラジーミル殿だ。彼となら上手くやっていけるであろう」


ヴァルイリス王国とは最近我が国の属国になった国である。

その為我が国の事を快く思ってない住人も多い。

父様は私を嫁入りさせる事で、両国の関係の安定を図ろうとしているのだろう。


私は半ば呆れていた。

結局また政略結婚なのかと。


父様は昔からこうである。

実の娘の私ですら国家繁栄の為の手駒に過ぎないのだろう。

こうして私はヴァルイリス王国に嫁ぐ事になった。




ーーーーーー

その後、とある部屋にて。

第二王女のローズマリーは密会をしていた。


「計画通りに行きましたね。お見事です」

そう言ったのはローズマリーの側近のフレデリカだ。


「そうですね。これでアレックス様は私のものですわ」

ローズマリーは微笑みながらそう答えた。


ローズマリーの目的は

姉を追い出す事でアレックス王子と結婚し、

ゆくゆくは国の実権を握る事だ。

……というのはただの建前である。


実際の所はローズマリーが愛してやまない

アレックス王子と結婚したいだけであった。

だから姉を貶める陰謀を企てたのだ。


そしてフレデリカはこう言った。

「でも良かったのですか?作戦の為とはいえ、ただの騎士と一夜を共にしたのですよね?」


その言葉に対して

ローズマリーはこう答えた。

「それなら心配はいりませんわ。彼を酒に酔わせて眠らせてから、ベッドに運ばせて添い寝をしただけです。でも彼は一線を超えてしまったと思ったでしょうね」


それを聞いたフレデリカは

安心した様な表情でこう言った。

「そうですか。流石はローズマリー殿下ですね」


陰謀の詳細はとても単純なものだった。

姉のナタリーに変装したローズマリーが、

姉の幼馴染であるジョンを酒に酔わせて眠らせてから同衾する事で、

いかがわしい行為をしたと思い込ませ、後はそれを噂にしただけである。


ローズマリーは元々姉に似ていたので

軽い変装だけで姉になりすます事ができた。


勿論その作戦は姉のアリバイが無いタイミングで決行され、見事に成功した。


「ふふふ。お姉様と顔が似ているのが初めて役に立ちましたわ」

ローズマリーは笑いながらそう言った。


ローズマリーと姉のナタリーは幼い頃は仲が良かった。

だが顔が似ていたのでよく姉と間違われた。


それを煩わしいと思ったローズマリーは

髪型や服装を姉とは異なるものにする様になった。

それでも姉妹の仲は良好であった。


しかし、ある出来事をきっかけに姉妹の仲は悪化した。

その出来事と言うのは姉のナタリーとアレックス王子の婚約だ。


ローズマリーは密かにアレックス王子を慕っていた。

そのアレックス王子が姉と婚約したと聞いて、

ローズマリーは嫉妬にも近い感情を覚えた。


それでもローズマリーは二人の仲を応援しようとした。

だが二人を見ていたローズマリーは、

姉がアレックス王子を愛していないのに気づいてしまった。


その為ローズマリーは姉に嫌がらせをするようになった。

それは陰謀にまで発展し、ついに婚約を破棄させる事に成功したのだ。


そしてローズマリーはこう言った。

「その上お姉様がヴァルイリス王国に嫁ぐ事になるなんて、嬉しい誤算ですわ」

その言葉にフレデリカはこう答えた。

「全くその通りですね。おかげで手間が省けました」


元々はローズマリーがフレデリカと結託して、姉を国外へ追放する予定であった。

だがローズマリー達の父であるカリンルカ国王がその手間を省いてくれたのだ。


ローズマリーはため息をつきながらこう言った。

「父様はきっと私達姉妹の事を政略結婚の為の道具だと思ってるのよ。でもおかげで助かりもするわね」


それを聞いたフレデリカはこう答えた。

「ええ、そうですね。これで陛下はあなたとアレックス王子を婚約させるでしょう」


カリンルカ王国には跡継ぎとなる王子が居なかった。

なので国王は、遠縁関係にあるアンバル王国の王室から婿を取ると決めたのだ。


だが第一王女のナタリーとアレックス王子の婚約は破棄となった。

こうなれば、今度は第二王女のローズマリーをアレックス王子と婚約させるだろう。

ローズマリーとフレデリカはそう考え、二人で笑いあった。

ーーーーーー

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