第12話 デソーサの家


 ジョンと話し合い、早速、彼のもとに向かう事にしました。


 デソーサは、郊外に立派な家を構えていました。ジョンによると、のんきに 一人で研究ができるほど、経済的に裕福なのだそうです。


 変わり者だが、頭も良く、事態を話せば、何か協力を得られるかもしれない、彼はそう言いました。


 デソーサの家に付くと、彼は気軽な様子で出てきて、私たちをリビングに通してくれました。


 大きな熱帯魚の水槽があり、シックで凝ったデザインの壁紙の高価そうなソファがある部屋に通されました。


「そんな深刻な様子をして、どうした! そして、そちらの方は、どういうお知り合いなのかな?」


 ジョンはいきなり言いました。


「そんな事よりも、もし、石をお前が盗んだのなら、返して欲しい」と、言いました。


「何のことだ?」


「お前に電話で話した、通信障害を起こす石の事だ!」


「なぜ、俺がそんなことをしなければならないんだ?」


 とデソーサは肩をすくめました。


「まあ座れよ」


 私たちは、ソファに座り、ジョンは、自分に起こった事を話し始めました。謎の男が、石を渡せと言ってオフィスにやってきて、多数の死人が出た事。石が無い事で、謎の男と、もみあいになり、寄生生物に感染した事。そして、私にまで感染させてしまった事。さすがに、警官を死なせた事は黙っていましたが。


 デソーサは、呆れ顔で、それを聞いていました。


「どこから、そんな妄想が出てくるんだ。しかも、二人もそろって。集団で幻覚を見るような現象もあると聞いた事はあるが……」


 ジョンは憤然と立ち上がった ので、私は慌てました。デソーサを殴りつけるのではないか。しかし、ジョンが取った行動は、そうではありませんでした。水槽に手を突っ込み、大きな熱帯魚を鷲づかみにして水槽から取り出したのです。ジョンにつかまれた魚は抵抗して、水しぶきが上がりました。


「何をする……!」


 デソーサは叫びましたが、声が止まりました。


 ジョンの手の中で、枝根が伸び、魚の体はそれに貫かれ、魚の抵抗が止まりました。ジョンは、血だらけになった魚を枝根から引き抜くと、床に叩きつけました。手の枝根はゆっくりとジョンの体の中に、戻っていきました。


 デソーサは茫然と、その光景を見ていました。


「わかったか? 俺が言った事は妄想じゃない。現実なんだ。俺達は、命が危ないんだ。お願いだ。石を持っているんだったら、返してくれ!」


 デソーサは震えながら言いました。


「わ、わかった。できる範囲の協力はする……! 取り敢えず、あまりのことで頭が回らない。コーヒーを入れてくる……ちょっと待っていてくれ。お前たちも飲むか?」


 と、デソーサはキッチンらしき方へ行きました。


「ジョン! いきなり何をするの! あれは賢いやり方ではないわ! 彼は怯えていた!」


「こんな異常な事は、体験していない者には、ああでもしないと、信じられないだろう!」


「脅されたら、誰だって表面上は協力するわ……!」と自分で言っていて、はっとなって、私はキッチンの方へ向かいました。

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