異世界の捜査官〜魔性の花を植えましょう〜

アポロBB

第1話 プロローグ

少女はその花を水車のある広場に植えた。


水車はワイン醸造を生業とする村のシンボルで、広場は村の中心だ。

ぶどうの収穫を祝うお祭りもここで催される。

色とりどりの花が咲き乱れる花畑もあり、格好の遊び場だ。

いつも家の手伝いや幼い弟の世話に明け暮れる少女にとって、時々与えられる自由時間に花冠をつくるのが一番の楽しみだった。


その花は鮮やかな黄色で、他の花と比べても一際目立った。

最近知り合いになった薬売りからもらった珍しい花。

はるか遠くにある異国の花だろうか。

五角形の花びらとギザギザの葉っぱが特徴的だ。


その花はみるみる増えていった。


一日一日と目に見えて黄色の絨毯が広がっていく。

あっという間に花畑を埋め尽くした。

村でも話題になり始め、大人たちも珍しがって見物にやって来た。

花を見ながら宴会をする者たちもいた。

みんな幸せそうだった。


しかし、少女の目には黄色い花が他の花を食べてしまったように見えた。

見慣れた花たちが駆逐され、大好きな花畑が異物によって壊されたように感じた。


気味が悪いと思った。

植えたことを後悔した。


いつしか黄色い花は村全体を包み込むように広がっていった。


そして、一週間後、その村は滅びた──

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