事故物件
連喜
第1話 事故物件住みます
本作品は『賃貸マンション』の続編です。
色々あった俺の物件探し。
不動産屋にも世話になったから、彼を飯に誘った。
長い付き合いだから、ちょっといい物をおごってあげた。
銀座のお寿司屋さん。客単価はたぶん3万くらいのとこ。
「遠慮しないで好きな物食っていいよ。俺、独身でおごる相手もいないから」
「いいんですか?こんないい店来たことないんで感激です!」
と、嬉しそうだった。ずっと写真を撮ってた。インスタにでも上げるんだろうか。
「若いうちはいいよね。初めて~するっていうのがあって。俺なんか接待とか外食が多くて、ありがたみがなくなってるから」
ほほえましい。と言うか、大げさに喜んでくれると、いいことしたみたいで俺も嬉しくなる。
俺は彼のプライベートな話とか、不動産屋の裏話なんかを聞いていた。
埼玉出身で、大学は知らないところ。体育会出身。
若い人っていいなと思う。未来があるから表情が明るい。
「そういえば、この間刺殺事件があったマンションなんですけど」と、いきなり思い出したように言う。
「あ、あれどうなってるの?」
「オーナーが賃貸に出したがってるんですけど、事故物件なんで、家賃タダでいいから、間に一人住んでくれる人を探してるんですよ」
事故物件の告知義務については、色んな解釈がある。国交省のガイドラインはあるけど、一人住んだらその後は告知しなくてもいいという判例があったりする。ガイドラインの方は昨年変わって、賃貸だと3年間は告知しないといけないことになった。
そのオーナーは判例を支持しているらしい。つまり、誰か一人住んだら次の人には告知しないんだろう。
「家賃、タダでいいの?」俺は食いつく。
「はい」
「じゃあ、俺やろうかな」
「え!本気ですか?」
「うん。だって、もう強盗は捕まってるし・・・もう、大丈夫そうじゃない?」
俺はその部屋に申し込みをしたけど、キャンセルしていた。
きっかけはネットバンクで振り込みした時に、エラーになってしまったこと・・・きっと、俺の守護霊がその部屋を借りるなと言っているのだと思った。俺はこういう経験が何度もある。そのたびに、やらなくてよかったという結果になっているんだ。危険から毎回俺を救ってくれる何か・・・目に見えない神の手。本当に不思議に思う。
今回の危機は、強盗に入られること。その強盗はもう捕まって、外に出て来る心配はない。合鍵を持っていたけど、すでに交換も済んでいる。
俺はその部屋を、女の子とおうちデートするために使いたかった。
もちろん、持ち家があるからずっと住むわけじゃなくて、週2ー3回くらい利用する程度になるはずだ。1ケ月ホテル代を節約できたとしても、大したことはないけど、事故物件に住んでみたいと言う好奇心もあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます