【Gsこえけん音声化】超絶美少女幼馴染と不運体質の男の日常~あのね。まだ、好きって言えてないんだ。内緒だよ?~

月島日向

風邪気味

授業終わりのチャイムが鳴った。

林凌平は体の不調を感じていた。



なんか体が怠い。体が重く感じる。困ったな。これは風邪の引き始めの感覚だ。けど、倒れるほど体調が悪いわけじゃない。

林凌平は誰にも気付かれないように元気なフリをしようと心に決めた。




すると、

隣の席、マロン色のミディアムヘアの美少女。

幼馴染みの出原いではら真朝まあさが林凌平の机へやってきた....。



■■■■■


「凌平…凌平ってば」

気が付けば覗き込んでいた。




「何?じゃないよ。何じゃ。もう5限目終わったよ?次、地理だよ?移動教室だよ?移動しなくていいの?」

大丈夫?ぼーっとしてるけど。



今日の凌平何か変だ。

「んー?凌平…ちょっとこっち向いて。目、反らさないで。こっち見て」



「顔、赤い?なんか凌平の手、熱くない?風邪?」

私がおでこに触れようとしたら顔を背けられた。



「ちょ、ちょっと。顔、反らさないでよ。おでこに手を当てないと分からないでしょ?」

今度は伸ばした手まで握ってくる。相当、体温を確認されるのが嫌みたいだ。



凌平の手、熱い。

「こら。嫌がらない。熱あるなら保健室行かなきゃじゃん?」

凌平が慌てたように『自己管理出来るから』と反論してくる。

それを聞いて私は反論した。



「へー。凌平、自己管理出来てるから風邪なんて引かないんだー。へー。凌平って健康管理ちゃんとできる人なんだー。へー。」


私はアタフタしている凌平に意地悪をしたくなった。わざと冷ややかな視線を送ってみる。



「中学の頃、インフルエンザ明けだったのに弱った体で無理して、球技大会やってさ、



で、雨の中野球して、その後、熱、ぶり返して、こじらせて、免疫力低下してたせいでマイコプラズマ肺炎になって、


で、肺に水が溜まるまで重症化して3週間入院した人居たなー。」

ちらりと凌平の顔を見た。



そう。これは凌平の話。


あの時の凌平は、病室で真っ赤な顔で体をくの字に曲げて酷い咳をしながら点滴に繋がれていた。

「他にも、高校の入学式の日、お腹痛いって変な汗搔きながら玄関で座り込んでるから、


『お腹痛いなら無理して出席しなくていい』

『早く病院に行ってきて』って言ったのに、


大丈夫だって言うし、結局、一緒に入学式出たら、式中に横で倒れて大騒ぎ。


救急搬送されて、破裂寸前の盲腸で緊急手術。



我慢のしすぎだ、もう少し遅かったら腹膜炎を発症していたぞ!


って医者に怒られてたのはどこの誰だっけ?」




あの時は本当に怖かった。

入学式の日の朝、凌平を迎えに家の玄関を開けると、脂汗を滲ませ真っ青な顔でお腹を押さえながら靴を履こうとする凌平がいた。



『どうしたの!?』って聞くと凌平は『お腹が痛くて....。


多分、入学式だから緊張してるんだ....。心配かけてごめん』とヘラっと青白い顔で笑って見せた。そして、通学カバンを手に立ち上がった。


私はノソノソと歩く凌平の隣をゆっくり歩く。

通学途中、公園や駅で何度か凌平が『トイレ』と言って青白い顔でふらふらと消えていく。



凌平が修学旅行とか運動会とかのイベント前に緊張でお腹を壊す事は昔からの事だ。


けど、数回トイレに行けばわりとケロッとしていた。けれど、その日は何度トイレに足を運んでも戻ってくる凌平の顔色は冴えないままだった。



むしろ、お腹を抑える凌平の力も強くなっている気がする。高校に近づくにつれ気分も悪くなってきたのか時折、小さく嘔吐えずく声が男子トイレから聞こえてきた。



流石に今日の凌平はおかしい。緊張からくる腹痛だけじゃきっとない。私は心配になって言った。『病院行こう。病院で見てもらおうよ』

けれど、何度行っても凌平は『大丈夫。真朝と一緒に入学式出たいじゃん?』と言って言う事を聞かなかった。



せっかく同じクラスになれたのに、入学式中も前から凌平の荒い息遣いが聞こえてきて、『お願い。入学式早く終わって!!』と式どころじゃなかった。



新入生退場のタイミングで私達は立ち上がる。その時、凌平の体が傾いた。体育館の真ん中で凌平は倒れた。



そこからは本当にバタバタだった。担架で先生達が保健室に連れて行き、養護教諭の判断で救急車が手配され、近くの総合病院に運ばれていった。

緊急入院で緊急手術。



下された診断結果は『急性虫垂炎』所謂、盲腸。しかも、虫垂が破裂寸前で、危険な状態だったらしい。破裂して中の膿が腹膜に漏れたら、腹膜炎を併発してしまい、最悪死ぬ事だってある。



緊急手術の麻酔から目覚めた後、『体の異変を我慢するのは良くない。君はもっと自分の体をいたわりなさい』そう主治医から怒られていた。



段々、凌平が言い逃れ出来ないぞみたいな顔になっていくのが面白くて、私は続ける。

「結局、高校に来れるようになったのは、入学式の2週間後だったよね?そのせいで、ボッチ生活だって嘆いていたよね?」



私は最後に会心の一撃をお見舞いする。

「これ、目の前にいる林凌平君の話じゃなかったっけ?違う???けど、へー。これでも、自己管理徹底してるって言いきれるんだー。へー」

私がさらに冷ややかな視線を送ると、目を泳がせた凌平が無理やり言い訳を絞り出してきた。



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