03 学校に不要な私物を持って来ちゃダメなのです

 仏の顔も三度まで、ですよ。三度目の正直という言葉もありますよね。まったく、きみと言う人は.......! 千秋先生の指導をまた受けたいとは、随分と物好きですね。


 きみの持ち物が没取された理由は、明白ですよね。今回は、悪ふざけが過ぎましたから。朝のホームルームが終わった途端、クラスメイトに見せびらかすなんて最低です。清々しい時間が、一気にピンク色になりましたよ。十八歳の輝かしい幕開けを、くだらないことに使ってしまいましたね。本当に残念です。


 いやいや。どこからどう考えても、くだらないことでしょう? 常識的に考えたら、分かりますよね。

 学校に、みだらな本を持って来ないでください! 学校の風紀がっ! それから、わたしの心が乱れてしまいます!


 表紙の問題だけではありません。内容も過激すぎます! キャッチコピーだけで人を殺せますよ。


 うっ。どうして、きみから取り上げた雑誌を遠目に見ているかって……?

 それは、その……内緒です。


 たいした理由はありませんよ。やましい気持ちなんて、ある訳ないじゃないですか。ふぇ? 目を逸らさずに言ってほしい?


 だから本当に.......や、ややややましい気持ちにゃんて、これっぽっちもにゃいんですってば!


 ううっ。憐れむような視線をやめてください。


 はぁ。隠し通すのはここまでのようですね。きみの指摘した通りです。


 マイクロビキニを着たおねーさんのパイオツが、あまりにも劣情を掻き立てるからですよ。女の人だって、こーいうのを見てドキドキしてしまうものなのです。水着なんて、ほぼ裸ですから。たゆんたゆんとした横乳、胸元のほくろ。普段は見えていないものが見えると目の毒です。なのに、ガッツリ見てしまう。そんなわたしを、きみに見せたくなかったんですよ。


 それだけで、今日一日きみと話さなかったのか? はい。十分な理由ですよ。わたしは、うら若き乙女なのですから、恥じらって当たり前だと思いませんか?


 えっと。きみを避けたのは、そのぅ。なんと言いますか、話しかけるタイミングが合わなかっただけですよ。


 ち、ちがっ! 嫌いになる訳ないです! きみのことを嫌いになれる訳が、ないでしょう.......?


 泣いてなんか、いませんよ。きみがぼやけて見えるのは、涙のせいではありません。スギ花粉のせいです。

 今は真夏だから花粉は飛ばない? 細かいことは気にしないのです。


 きみのことが嫌いじゃないなら、どうして避けたのか教えてくださいって?

 ずるいです。きみにお願いされたら、わたしが抵抗できないって分かって訊いているんでしょう?


 じゃあ、はぐらかさないで話しますけど、笑わないでくださいね? 絶対に笑わないでよ? 絶対に笑っちゃダメなんだから。


 きみの雑誌を見た後にね。悶々としてしまったのですよ。勤務時間中なのに。


 えっ? 今の説明だと、分かりにくかった? 嘘でしょう。勇気を出して、恥を承知で言ったのに。もっかい言うから、今度こそ聞いておくんだよ。


 あのね。そ、存在しないはずのアレが、その.......おっきくなってしまうような気がして。鎮まるのを待っていたと言いますか。


 もう! 最後まで言わせないでください! 変態、ドS、思春期男子め。


 最後の言葉は罵っていないから、物足りない? そこに快感を見出さないでください!


 きみに書いてもらう反省文は、八百字詰原稿用紙一枚にします。公私混同するな、ですって? 一体、誰のせいだと思っているのですか。


 そもそも、反省文を書くことは、嫌じゃないのでしょう? きみにとっては、大好きな千秋先生と二人きりでいられるのですから、ご褒美みたいなものですよね。


 反省文を書くまで帰っちゃダメです。きみの誕生日プレゼント、まだ渡せていませんから。早く書き上げられたら、きみのために歌ってあげるオプションもつけてあげますよ。わたしが愛してるなんてセリフを囁くのは、滅多にない機会だと思います。わたしからのプレゼント、喜んでくれたら嬉しいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る