第11話 チュートリアル終了
ロベルト王子を撃退してしまった僕は一人で国王様と王妃様の場所へ戻る。
「おや? 私達の息子は逃げ出したのかい?」
ニヤニヤしつつローウェル様が声をかけてくる。なるほど、息子の性格を矯正するために僕を使ったんだね。ニッコリと笑い返して返事をする。
『雪どけはまだまだ先のようですわ。ごえいの皆様も付いておりますし心配することはありませんよ』
「それは残念ね。では例の約束もなかったことにしましょう」
・これ自分が幼女ってこと忘れてるよな
・腹黒幼女か。……うむ。それも良い
うむじゃないよ。思わず笑みが引きつる。
「うふふ。そんなに私と何かを約束したかったのかしら。でもね。淑女たるもの表情を顔に出しちゃダメよ」
『ご指導ありがとうございます。今後も学んでまいりますね』
「ぶふぁ」
「あなた?」
「いや、すまんな。あれと同一人物とは思えなくてな」
「ドロップちゃんを娘にできなかったのは残念だったけど今日は得たことも多かったわ。これからもよろしくね」
『はい。よろしくおねがいいたします』
こうして良いのか悪いのか評価が分かれるようなお茶会が終わった。
―――
屋敷に戻ると心配そうな顔をした両親が出迎えてくれた。夕食の時に何があったか説明するとお母様が卒倒しそうな一幕もあったけど無事に部屋へと帰還することが出来た。
「お嬢様。無茶はなさらないでくださいね」
『もちろんよ。ハイネもこれからよろしく頼むわ』
部屋に入ると自動的に口と体が動き始める。突然何!?
・チュートリアル終了だね
・お疲れさまでした!
・レイ:これはハイネさんの好感度が一番高いかつ国王、王妃との好感度が一定以上のときに発生するエピローグだね
・さすが乙女ゲーム大好き実況者
・おばあちゃんの知恵袋だ
・レイ:誰がおばあちゃんだい! 我ピチピチぞ!
・アーワカイナ―
・ピチピチダナー
・若い子は自分でピチピチって言わないんじゃ?
・しっ! 言っちゃダメだ! 消されるぞ!
・レイ:コラー! 好き勝手言いおってからに!
な、なるほど。じゃあ次ログインするときは成長した姿かな。
コメントを読んでいるうちに画面が暗転してゲームデータがセーブされた。そしてバーチャル空間に放り出された。
「ありがとうございました。これでチュートリアル編は終了です! 明日からは本番が始まるのかな? 続きをやっていくのでよろしくお願いします!」
・これは丁寧なあいさつ
・お疲れさま
・楽しみにしてます!
・スパチャ解禁はよ
・次回の放送はもっと罵ってくれていいんですよ!
好意的なコメントが流れてくるのを見て思わず笑顔になる。僕はこれからも頑張っていけそうだよ。
・うぐぅ
・レイ:はぅっ
・やばい、新しい扉が開きそう
・ダメだ! その扉はくぐってはいけない!
・あれ? 川の向こうにお花畑が見えるよ? あ、死んだばーちゃんだ! 今行くよ……
・逝くなーーー!
「えへへ。これからも頑張ります! では、お疲れさまでした!」
―――
バーチャル空間から外にでて固まった体を念入りにほぐす。ちょっと長時間ログインしすぎちゃったよ。
「雫! 今日もお疲れ様!」
バーンとドアを開けてくるのはもちろんお姉ちゃんだ。部屋の中を見た途端目が泳ぎ出す。
「お姉ちゃんどうしたの?」
「雫。お姉ちゃんは今の雫の姿が刺激的過ぎると思うの」
「刺激的?」
首を傾げて今の僕の姿を確認する。VRに入りやすくするために薄着の半袖とショートパンツでごくごく普通だと思うんだけどな。
「はぅ」
「お姉ちゃん!? 鼻血出てるよ!?」
幸せそうな顔をしながら鼻血を流すお姉ちゃんを介抱した。お姉ちゃんの部屋に連れて行ってベッドに寝かせようとする時に「待って」「私達姉弟なのよ!?」「これが禁断の……ごくり」とかよく分からないことを言いつつ鼻血の量が増えていたのが心配だったけど騒ぎを聞きつけたお母さんが僕の代わりに介抱してくれて助かったよ。
―――
次の日、配信はせずに光と影の
確認したかったのは二つ。一つは悪事メーターがどうなったか確認するため。もう一つは配信中にコメントに返答する方法を試すためなんだ。
周りの時間が止まってる中、ステータスを確認する。
―――
名前:ドロップ
年齢:6歳
称号:ラメリア公爵令嬢
特性:極悪非道
口調に補正がかかり全ての人物からの好感度が上がりにくくなる。また、悪事を働くことでカリスマがあがる。悪事を働かなかった場合、カリスマが下がり破滅する。
・カリスマレベル1
悪事(4/10)
好感度:人気者
・ハイネ:高
・エリザベス:高
・ローウェル:高
・ロベルト:中
―――
やったね! 悪事のカウントがたまってるよ! もっとたまってると思ってたけど判定の基準が知りたいな。せめてカウントされたときに通知が来れば楽なのに。
・レイ:設定からいじれない?
「そうなの? 試してみるよ」
そうそう、一人で調べても分からないことが多そうだったからお姉ちゃんを読んでるよ。設定の方法とかアドバイスをもらうんだ。
お姉ちゃんの指示にしたがって設定画面をいじる。
あったあった。これだね。よし! オンにできたよ!
「お姉ちゃんできたよ! ありがとう!」
・レイ:ぐふっ。雫……ドロップ様のためなら当然のことさ
「えへへ。照れちゃうね」
・レイ:んぐっ。次はストーリーを進めながらコメントに返信する設定をするよ
お姉ちゃん大丈夫かな? さっきから変な声? コメントを残してるけど。
・レイ:こほん。実はコメントには二つの入力方法があるんだ。一つはキーボードをタップする方法。これは知ってるね?
「うん。お姉ちゃんの実況にコメントをするときにキーボードを使ってるよ」
・レイ:そうだな。もう一つは心の中で思ったことを直接入力する方法だよ。これはVR空間にいないとできない特殊な方法さ
心の中で思ったことを? 確かにそれならコメントに反応するのに話さなくて済むね! なになに? ここをこう設定して……。できた。よし、試してみよう。
・ドロップ:こう……かな?
・レイ:そうだね! さすがドロップ様!
・ドロップ:ありがとう
次からはもっと視聴者さんたちと絡みつつ頑張るぞ!
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