女子高生、北を目指す

超七

第1話

「掛からない……」

額から滴る汗を袖で乱暴に拭いながら、思わず呟いてしまう。

一体何百回試したでしょうか……いえ、日数を考えたらおそらく何千回と言える位は試したでしょうか。

お父さんは一回で掛けていたのに。

いとも簡単に。

お父さんと私で何が違うのでしょう?

そもそも手順はお父さんにしっかり教えてもらったから覚えています。

自分のモノだという嬉しさもあって私はしっかりとメモを取っていたので、手順に間違いは無い筈。

なのに掛かりません……。

やはり壊れているのでしょうか……だとしたら私にはお手上げです。

では修理に出す?

それが現実的なのは分かっていますけれど、学生の身分で幾ら掛かるかも分からない修理費を捻出するのは厳しいものがあります。

お母さんはそれくらい出してあげるわよと言ってはくれてますが……。

そしてこれはあくまで個人的な我が儘でしかないのは百も承知ですけど、他人に触ってほしくないのです。

子供っぽいと他人は笑うかもしれませんが、これはお父さんとの思い出だから見ず知らずの人に触られるのは、どうしても嫌なのです……仕方がないですよね?

それで結局自分で何とかするべく悪戦苦闘してきた訳ですけど、正直なところ心が折れそうです……。

そんなどん底気分の私の元に訪れたのは。

「掛からないのか?」

救世主な同級生、天川琢斗(あまかわたくと)君でした。

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