執着
「私も、人と同じように一緒に、楽しんだり、悲しんだり、するのが苦手なの…
そして共感できるフリをしているだけよ
そんな自分に私もいつも、絶望しているわ」
思いがけないユミの発言に、驚きを隠せなかったのと同時に、
自分だけでは、なかった事に初めて喜びを感じてしまった。
私[も]と言われた違和感が、自分が思ってた一番欲しい答えであった事が嬉しかった。
「それで、[特別]ってどう言ういみ…?」
もう一つ確かめてないといけない事を思い出した。
「そうね、いつも一人で苦しかったでしょ?
誰にも言えず、一人で抱えて…
私ならマサトの事理解してあげれる!
だってマサトも私の気持を理解できるから」
望んでいた言葉そのままだった。
この時は本当に理解し合えると信じたかった。
「いつも辛かった…生きいるのが辛かった
ユミも同じくらい辛かったんだね…
ありがとう。
あの時本当のオレを見つけてくれて…」
ユミに対する気持ちが
こんな短時間で、左右するなんて思いもしなかった。
恐怖や絶望、感謝や安心
たかが少しの会話の中で、人生で初めて自分が自分で居ていいんだと思わせてくれた。
この時、ユミはまさしく[特別]だった。
ユミの思惑通りなのか、自分で勝手にそう思ったのかはわからないが、間違い無く自分を曝け出せた。
「マサト?私、やっとこの世界に一人じゃないって思えたわ…」
「オレもだよユミ…」
「恥ずかしくて、辛くて、死にたくて、消えてしまいたかったこの気持ち、マサトと一緒なら耐えられるわ…
もし私が一緒に死のうって言ったら、マサトはどうする…?」
「ユミ、オレもこの世界に執着はないよ…
だからユミが望むなら一緒に逝こう…」
「ありがと…マサトだけは私の中で[特別]よ…」
間違い無くこの瞬間から、ユミは自分の中で、[特別]だった。
お互いの、秘密を知ってしまい
他の誰にも理解されない事を理解しあえる、唯一の存在と出会い、
一緒に逝こうと言う言葉は、嘘では無く、お互い本心で思っている事も、わかっている。
一緒に逝ける事実があるからこそ、[特別]を失う訳にいかない。
二人の気持ちが切れて、互いが一人で死なないために
一緒に逝こう
と言う言葉が
この絶望した世界に執着がない二人を、繋ぎ止められる唯一の安心だった…
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