第16話
真夜中に、一助が大声で騒ぐ、一心の寝室のドアをガンガン殴っている。
「一助!うっさい。どうした?」
「美紗が!美紗が!美紗が!・・」
「美紗がどうした?」
「美術館に乗り込んだ!メモが事務所にあった・・大変だ、殺される!」
「何い!」
一心は跳ね起きて、静も数馬も起きてきて美術館に急行する。走りながら、丘頭警部に緊急事態を告げる。
警備室のインターホンを鳴らす。ドアをガンガン叩く、中から驚いた顔の警部員がかおを出す。一心はドアを強く引き「娘が殺される!」
叫んで、館内の入口を開ける。反射シールが道案内をしてくれる。左へ進んで角を曲がるとトイレがあって、その隣のドアに反射シール。数馬がGPSで美紗がその中にいると叫ぶ。
ドアを引くと施錠されている。ガチャガチャやると数馬がどけっ!と叫んで、カチカチとやると開いた。中に入ると左の方に反射板、そしてまたドアがあって反射板が貼ってある。数馬が小さく中だと叫ぶ。一助が一心を差し置いて飛び込む。床を転がって中央まで行く。
美紗がクレーンで釣られて水槽の上に向かっている。
「金谷!止めろ!もう、全て分かった。これ以上の犯罪は止めろっ!」冷凍倉庫内に一心の声が響き渡る。警部が駆けつけてきた。銃を抜いている。
「金谷義信!手を離して下がりなさい!」
「うるさいっ!こいつを殺して俺も死ぬんだ。お前らこそ動くな」
クレーンはゴーっと動いてゆく、一心と静が水槽の側で操作している金谷に突っ込む。
金谷がニヤリとして
釣りワイヤーから美紗を切り離そうとする。
一助が警部の銃を取り上げバンバンバンと立て続けに銃を撃つ。
水槽がビシッビシッビシッと悲鳴を上げて、穴が開き四方八方にひびが広がる、同時に中の水が氷に変わる。過冷却水だった。
ゴチンと大きな音を立てて美紗が氷の上に落ちる。
一心は金谷にタックルして転がす。静はボクサー色の眼差しを三角にして馬乗りになり、左右のパンチを金谷の顔の左右や正面から叩き込む、そして次はボディに数えられないくらいのスピードでパンチを食らわす。既に金谷は意識を失い口端から血を流している。それでも静はボクサー色の目をし顔は引き攣って鬼の形相をしている。
止まらない静を数馬が羽交締めにする。一助が美紗を縛り付けているロープを解き、平手打ちを両頬に食らわす。
「ばかやろーっ、誰が勝手に突っ走れって言ったあ。お前死ぬとこだったんだぞ!」そう言って美紗を抱きしめる。
「あっ、ごめん。ちょっと焦ってた」
バチンと美紗の頬が鳴る。
「あほお、命はひとつしかあらしまへんのや。大事にせなあかんやろ!」殴った静の顔は涙と笑顔の母親の顔に戻ってる。
また、バチンと美紗の頬が鳴る。
「こんな事に命かけるな!ばかやろー」
数馬だ目に涙を浮かべて怒っている。
また、バチンと美紗の頬が鳴る。
「勝手なことすんなら、探偵なんか辞めてしまえ!ばかやろー」一心も泣いている。
美紗の両頬は真っ赤に腫れ上がっている。
警部が美紗に近づくと、美紗は目を瞑って頬を差し出す。
警部はそんな美紗を優しく抱きしめる。
「良かったな。あんまり無理すんな、みんながどんだけ心配したかその頬が語って、でしょ」
「うん」それだけ言って警部にしがみついて泣いている。
金谷は担架で連行されて行った。
「あったあ〜、盗聴器あったぞ〜」
既にバッテリー切れになっていたが、登美子の殺害時の会話が残されていることを祈って、それを警部に渡して全員揃って美術館を後にした。
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