第93話✤ゲータルド・ダンジョン1
「お前ら、ほんと規格外だよな……」
「「「えー?」」」
開口一番、クレイオール第二王子殿下に心外な事を言われた。
「チケットはまぁともかく、早く着いてくれたのは嬉しいしありがたい。でもな?でもな??魔獣グリムプニルで城門やら関所やら街の上をひとっとぴでくるとかどういう了見なの?」
「早く到着した方がいいじゃない?その分、事前準備はかどるだろ?」
「勇者基準で物を考えないでくれって言ってるんだよ!」
「あだだだだ!!!!」
聖の言葉にキレたクレイさんは拳でつむじをぐりぐりしてきた。
もれなく三人とも。
曰く、止めなかったのも悪い、と。
解せぬ……!
「早くても三日位で来るかな?とか思ってたら、翌朝にお前らの姿を見たときの絶望感わかるか?魔王襲来かとおもったぞ?」
「いやー、そんな……」
「照れんな!褒めてねぇ!」
クレイさんは一応各関所やら通るだろう経路の要所要所に伝令をだして、聖ご一行……すなわち【PT名:プレイヤーズ】を最優先で通すようにって手配してくれてたんだって。
でも僕らはどうせ空飛ぶイキモノだしなって感じで、重力制御と風魔法を駆使して翌朝にはダンジョン手前の前線基地に着いちゃったわけだ。
全くの無駄骨だったわけだ。
そしてどや顔の轟天。前足をたっしたっししてご機嫌この上ない。
「まー。魔獣グリムプニルを見れただけでよしとするか。名前は轟天だっけ?」
「そうそう。俺が勇者として旅してすぐの頃に出会ってさ。ほら、少年って黒くて青く光るイキモノカッケー!てなるじゃん?気づいたらノして従魔にしてた」
「普通はな、9歳かそこらのガキがノせる相手でもなければ従魔契約なんかできないんだよ!勇者補正マジ規格外!」
ぎゃぁぎゃぁと喚くクレイさんに、メルトはそっとノアを見せた。
薄水色のゼリー状のすらいむはぷるん、と揺れる。
「ノアです」
「そうか。ノアちゃんか。かわいいなぁ、撫でてもいいか?」
「きゅ!」
「そうかそうか、撫でていいんだな、かわいいなぁ、かわいいなぁ。クッキーだべるか?」
「きゅう!!」
何やら現実逃避をし始めたクレイさんはノアとメルトにお高いクッキーをあげ始めたので、僕らもそっと手を出した。
疲れてるときの甘いものはいいよね!
「枢、お前はこれよりもイイモン作れるだろうに」
「人様のお手製クッキーは市販品よりも高級品だよ。ミルッヒちゃんから?」
「いや、ラクトだ。料理にはまってるからいろんなものを大量に寄越してきたぞ」
「ごちそうさまです……(じゅるり)」
「ご相伴に預かります……(じゅるり)」
「ごはんたのしみです!(じゅるり)」
「きゅっきゅー!」
「……おまえらほんと……ほんとそういうとこだぞ……!」
クレイさんと夕食の約束をして、聖は轟天にクレイさんの隣の天幕まで幌馬車を移動してもらうと、お礼を言って送還した。
『ニーサン、枢サン、メルトサン、ノアサン、またっす!』
ひひん、と片足をあげて挨拶して送還陣の中に消えていった。
何気に礼儀正しいんだよね、あの子。
そして、僕らが早く到着したことにより、事態を重く見ていると勘違いした兵士さんたちがざわざわしている。
そんなんじゃないよー。
渋滞も関所のアレコレもない直進ルートのお空の旅だっただけですよー。
とりあえず、昼過ぎには総指揮官であるティティア国の第一皇女殿下のアークレイン様が来る様だ。
その時に僕ら三人+1匹とクレイ殿下、アークレイン殿下、高ランク冒険者パーティ5つの各リーダー、ティティア国とノイエファルカス王国の騎士団の隊長とで打ち合わせをするようだ。
今回、クレイさんは補給物資担当で、両国から専門家を招集したり、前線基地の維持を任命されていた。
「あ、聖あのな」
「ん?」
クレイさんの天幕でお茶を飲んでいたら改まって話し始めた。
「昼には来るアークレイン皇女なんだがな」
「うん?姫将軍って言われている人だよな。その皇女様がどうした?」
「勇者オタクだから気を付けろ」
「……は?」
「あいつは歴代勇者関連の品々を漁り、収集し、聖地巡礼までやってのける権力・財力・胆力を兼ね備えた勇者オタクなんだよ」
「……はぁ」
「なのでちょっと視線がうっとおしいかもしれんが悪い奴ではない」
「う、うん……。なんかあったら枢の後ろに隠れるよ」
「ちなみに先の大戦での記録のすべての写しを持っている。実際に手を出してきたりはしないだろうが、何かあれば俺にってくれ。どのみち女性用天幕は別の場所にあるが、端っこに追いやってもいい」
「おおう……」
なんか大変な人がくるようですよ???
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