第90話✤依頼1・スライムのメンテナンス5
多少のトラブルはあったけれど、下水路にいるスライムたちは好意的で、リーダー格のすらいむはカタコトだけれど喋ってくれる。
あまり聞いたことはないけれど、前任の魔術師のおじいさんがなにやら術式を埋め込んだ魔石を食べさせたそうで、自分ではない担当者になっても大丈夫なようにとのおとだった。
それを教えてくれたのが最後にメンテナンスで出会ったクリーナースライムのリーダー……というかこの群れ全体の王であるヒュージ・クリーナースライムだった。
『アマリア』という名前の彼女?は元々魔術師さんの所のテイムスライムだったようで、この仕事をするにあたって群れを率いるのを願い出たようだ。
アマリアさんはメルトの持っている小さなスライムをみて、『この子をお願いね。外の世界を見せて楽しませてあげて』と流暢な言葉でそうお願いしてきた。
メルトもノアも、それに頷いて、もう一度広範囲で浄化魔法をかけて、お仕事は終わった。
「きゅ~!」
「のあ、これがおそとだよ」
「きゅきゅ!」
地上に上がり、初めて見た空をノアはどう感じたのだろうか。
嬉しそうにメルトの頭の上で跳ね、一番背が高い僕の頭に移動すると小刻みに揺れていた。
「おそとすごいっていってる」
「きゅーぅ!」
「そうみたいだな。ノア、これからたくさんいろんなところに行って冒険もするからな!」
「頑張ろうね!」
「ねー!」
「きゅきゅきゅ!!」
さて、まずは全員に【
これで服や髪なんかも綺麗になったけれど、帰ったらまずはお風呂だな。
なんて思ってたんですが……。
「聖!枢!メルト!一大事だ!」
なんて、アズールおじが血相変えて待っていた。
やだー!トラブルの予感しかしなーい!
◆◇◆◇◆
「は?
「その兆候が見られるダンジョンが二か所見つかった」
「二か所も!?」
イシュラークの街の冒険者ギルドのギルマス部屋に押し込まれた僕らは、その言葉を聞いてもいまいち信じられなかった。
だって、あの戦争のついでに
それに、僕の感覚ではあと30年は起きない予定なのに。
「それが、その二か所では大規模な魔道具実験が行われていたようでな」
「魔道具実験?」
「ああ、どこぞのバカ魔道具師がドロップ率を上げるだとかレア素材のテーブルを狂わせるとかなんとかで、金持ってる貴族や冒険者に売りさばいていたらしいんだ」
「因果律買えちゃったのかー」
「ああ。一応その魔道具自体はかなりの性能らしくてな、レア素材の流通も増えたんで難しい所なんだが……」
どうもその魔道具、使用するにつき6人以上のパーティ全体の魔力を半分以上使うらしく、放出された魔力はそのままダンジョンの養分になる。
その分、ダンジョン産魔物が生まれるって訳なんだけれど……。
「魔力分魔物が増えたからその分出やすい感覚になったってことかな」
「母数が大きくなるからそれもあるだろうが、余分な養分であったことは確かだな」
「で、その
聖が真剣な顔で聞くものだから、一瞬アズールおじがビクリと震えた。
聖、普段は少年ぽいかんじでほわほわしてるけれど、こういう時は勇者の顔になるんだよね。
しかも前回の魔王戦のときみたいな顔になってる。
それくらい、
街の一つや二つは飲み込まれちゃうからね。
「ノイエファルカス王国とティティア国の国境境にある【ゲータルド・ダンジョン】とオルティア王国の最南端にある【海底神殿】だな」
「うわ、両極じゃない」
「オルティア王国の【海底神殿】にはエイラ・アスラークとオルティア、それに魔族国からも高ランク冒険者が参加してくれるそうだ」
「魔族国も?あの国まだ復興債中でしょうに」
「なんでも内政向きの人材取り入れたのでそっちに内務は任せ、血気盛んな魔族の貴族や冒険者が参加してくれるそうだ」
「ああ、あの国……ほんとに……」
「そうか、なら俺たちは【ゲータルド・ダンジョン】に行けばいいんだな?」
聖の言葉に、アズールおじはちょっと複雑な表情をした。
「いいのか?せっかく勇者であることを隠して娘と枢と旅をしていたんだろう?」
「まぁ一部には隠されてない情報だろう?」
「それはそうなんだが……」
「それに、
「そうだね……」
神龍様には3つの直属部隊がいる。
ひとつは御使いである天司は勇者の配下となり共に邪悪なる存在を打ち滅ぼす実行部隊。
ふたつめはバルキリーは大聖女につき、死者の魂を天やそれなりの場所に誘導する部隊。戦闘もできるけれど天司よりは下かな。基本人への助言をメインにしてるからね。
みっつめは謎。なんか僕ここに属してるような気配があるんだけれど、神龍様も邪龍ちゃんも知ってて教えてくれないんだよねぇ。
「枢、メルト。疲れている所悪いが、行くぞ」
「うん!」
「うん!」
「きゅ!」
ノアもやる気満々で返事した。
「馬車だと急いでも時間かかるだろうから、ノイエファルカスの第二王子が転送陣の使用許可をもぎ取って来たぞ。イシュラークから王都エイラまでいけばそこからノイエファルカスまで飛ぶ事が出来る」
「こういう時転送陣の設置条件緩和して数増やして欲しいよねぇ」
転送陣、今の所国に1つか条件によっては2つだしなぁ。
「わかった」
「馬車の手配はした。旅客高速便だ。途中で馬を替えるから最速で行けるはずだ」
「いや、馬はもってるからそいつ使うよ」
「「「馬?」」」
僕を含めた全員がきょとんとした。
いたっけ?馬……。
「いただろ、あの青黒いの」
「あおくろい……あ!!!」
いたわ、馬。
青い炎に身を包んだ高ランク魔獣【グリムプニル】が。
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