第85話✤イシュラークの街3
「所で、この街でお願いしたい依頼なのだが」
「突然ですね」
僕とメルトは席を移り、アズールおじの前に聖を据える。
僕らの前にはハルカさんが座り、お茶とお菓子と軽食がこれでもかと取り出された。
この人も
「来るのを楽しみにしていたのよ!このバターケーキは自信作なの!」
「ありがとうございます。ではこちらも……、レモンアイシングのパウンドケーキとジャムサンドクッキーです」
「あらあらあら!楽しみだわ!」
「母、食べていい?」
「いいよ」
メルトが袖を引いて聞いてきたので、いただきます、をしてから手を伸ばした。
うん。このバターケーキ、ちょっとだけラム酒が入っていてアクセントになって美味しいな。
あとでレシピ貰おうかな……。
ハルカさんは名前の通り例によって例のごとく、召喚勇者関係の一族の人だった。
やはり召喚勇者に関係した名前というものは一種のステータスの様で、数名分でもいいのでと頼まれることがよくあった様だ。
ハルカさんの所は10名分。ハルカ、ユウキ、アオイ、リナ、セオ等、男女どちらでも使える名前だそうだ。
「あの人ね、あなたが来るって聞いてからずっとそわそわしていたのよ」
なんて話をされると、ちょっと照れてしまう。
やはり、連合軍時代以前の身内ともなると、別の羞恥心がくるね。
◆◇◆◇◆
「この街の未消化依頼は3つだって」
「へ~。思ったよりも少ないね」
「メルトがんばる!」
ある程度はアズールおじが自分でこなしちゃったのかな? あの
僕らはギルドからの依頼を受けた後、ギルドが管理する一軒家に案内された。
ギルドからは徒歩10分もかからない場所にあり、市場に近い。
事前に掃除と最低限の生活用品を持ち込んでくれていた優遇っぷりだ。
アズールおじとハルカさんに感謝だな。
「まず、①地下下水路にすみついたヒュージスライムのメンテナンス。通年なら領主に雇われている聖属性高位魔法使いが定期的に浄化してくれてたんだけれど、高齢の為お亡くなりになったそうなので、とりあえず今年分だけだって」
「あー。浄化槽に棲んでもらっているピュリフィケイション・スライムか」
「そうそれ」
ピュリフィケイション・スライム……ピュリスライムとも呼ばれるいわばクリーナースライムの上位種だ。
この個体とスカベンジャースライムやクリーナースライムで下水浄化槽を回しているようだ。
スライムを地下浄化槽で使うには定期的にメンテナンスをしなければならない条例になっている。
それを怠るとあっという間にスライムが増えたり変に合体されて地下から這い上がってくるからだ。
適度な間引きも必要なんだよね。
「②鉱山に棲む鉱山妖精……ノッカーとかコブラナイへの慰問。毎年要望や給料関係の王権を更新するので商業ギルドの担当者を派遣するのでその護衛かな。古い鉱山で産出量も減っているんだけれど、ノッカーの代表がいうには下を掘ればまだあるそうで、そのルートの確認も込みだね」
「地下に行くにつれて希少価値の高い鉱石とか宝石が取れるからねぇ。鼻のいいノッカーがいうんならあるんだろうけれど、鉱山自体の強度によるよねぇ」
「そうなんだよなぁ。ある程度までなら吹き飛ばしていいって言われたんだけどなぁ」
「ああ、上の方に変なの棲み付いたりするから……」
鉱山リザードとかロック鳥とか……。
調査&慰問に入る時には数日程鉱山はお休みになるようだ。
「③イシュラーク神殿で祈ってくれってさ」
「あー」
これは完全に僕の母親案件だな。
このイシュラークの街は神龍様の配下であり花の乙女神イシュラーク様の神殿がある。
神龍様の眷属らしいが、邪龍ちゃんによると一番仲の良い妹分のようなもの、だそうだ。
その神殿で祈れってことは母ともつながるってことで……。
なんだろう……嫌な予感しかしない……。
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