第84話✤イシュラークの街2

 アズールおんじ……アズールフェルト・ライディは200歳↑の僕の叔父だ。

 ハイエルフ……いや、古代種エルフアルトアールブとして生を受けた僕はその魔力保有量の高さから、物心ついた頃にはアズールおんじの元で魔力操作の修行をしていたのだ。


 その後、僕はある程度【使い物】になったあたりで里を出て過ごし、そこからカルナじっちゃんに見いだされて連合軍最高軍師として活躍して今に至るんだけれど。


「クルルフィール……いや、今は……元か?神宮寺枢だったか」


 頭に一発食らった後、ギルマス部屋に連れ込まれてお茶を出されて一息ついたところ、アズールおんじはそう呟いた。


「前世もちなので今代の名前よりも前からの名前がすんなり返事できるので……」

「まぁお前は昔から変な子だったからな。前世もちと言われても今更驚かんよ」

「でしょうね。でもアズールおんじはなんでここに?」


 だってあの里……人が少ない上に来るものも出るものも拒む方じゃない?

 おんじが里を出たとしたら僕が居なくなった後だと思うし……。


「前の戦のときにな、我が里に助力を求めてきた人間のコムスメがいてな」

「えー。あんな辺鄙なド田舎に??」

「なんでも家に伝わる秘密の地図に示されていたらしい。自らを聖女を名乗り、過去の勇者様の関係者の子孫だとも言っていたな」

「そういえばあの里、自称魔王が発生したあたりの勇者に協力したのいたんだった」


 そうそう。

 この世界何度か勇者召喚されているんだけれど、自称魔王みたいなちょっと強い魔族程度では勇者なんか召喚されることはない。

 なのでこの場合、国指定の【民間勇者】となる。

 少数民族とはいえ変わり者&面白好きハイエルフしかいない里だったし、自称勇者についてって面白い事見聞きしたいのが居てもおかしくないしね!


「で、その聖女様についてきたんですか?」

「面白そうだったしな。それにその聖女は今私の嫁だ」

「ア、ハイ……」


 この人も大概だよ……。


「でだ。お前は今、人の世にいて幸せなのか?」

「うん。伴侶の聖もいるし、娘のメルトはすごく可愛くていい子だし」

「そうかそうか。ならそれでいい。それとお前の母親なのだが……」

「母さん?」


 いえ、ちゃんといますよ?僕だってエルフの腹から生まれましたからね??


「天に召されたぞ」

「どっちの意味で?」

「自分から天司様についていった」

「そっちかー」


 ちなみに父親は既にいない。

 通りすがりの変身機能を持つ魔道具を使う武装ハイエルフだったので。

 多分どこかで生きてるんだとは思うけれど、連合軍時代にそんなハイエルフの話を聞いたことが無いので参戦しなかったんだろうな。


「天司様についていけばもっと強くなれるときいて!と……」

「あー……」


 うん。あの母ならあり得るな。

 ひたすらに強さを求めるだけ求めて探求心と研究心と熱意を凝縮したようなハイエルフだったし。


「そんな訳で、母親へ連絡したい場合は神殿に行って祈れ」

「はぁい」


 ハイエルフって基本的に厳かな感じがするじゃない?

 うちの里以外はほんとそうなのよ。

 うちの里だけなのよ、こんな奇人変人の集まりみたいな場所。


「そんなわけで。私がアス君の妻のハルカよ。よろしくね、枢君、聖君、メルトちゃん」

「あ。お茶出してくれた人……」

「そうよ。で、このイシュラークの街の長でもあるのでそっちでもよろしくね」

「はぁ……」


 やはり変人にはそれなりの人との縁があるんだろうなっておもいました、まる。

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