第77話✤マルドラの村の依頼5

 レジャーシートを広げて本格的に昼食を広げた。

 いつお客様が来てもいい様にと多めに出したけれど、足りなかったらまた出せばいいか。

 サンドイッチはタマゴ、ツナマヨ、レタスとハム、カツとキャベツ、照り焼きと辛子マヨの5種と、いちごジャム、ブルーベリージャムとクリームチーズ、ピーナッツ、チョコと生クリーム、カットフルーツと生クリームの5種。

 おにぎりは梅、鮭、そぼろ、炊き込みご飯の4種。

 スープはコーンスープ、具沢山ミネストローネ、クラムチャウダーの3種。

 飲み物はコーヒー、紅茶、果実水。

 その他はマカロニ入りポテトサラダとスライスオニオンとグリーンサラダ。

 具も一緒の主食だからおかずらしいおかずは無くてもいいか。


「ご飯沢山!やった!」

「母!この炊き込みご飯おにぎりおいしい」

「ゆっくり食べてていいからね。足りなかったらだすから」


 のんびりと食べ進めた所で、ふいに頭上が暗くなった。

 やっときたようだ。

 結界魔法で周囲を保護し、食事を守る。

 すると、ばさっと近くに舞い降りたのはほんのり桃色の虹彩を放つ、白い竜だった。


『何やら旨そうな匂いにつられてきてしまった……』

「えるかむえるかむ」

「お待ちしてました。ご一緒にいかがですか?」

「父、母。すごくきれいな竜さん来た!」


 邪魔して済まない、お呼ばれするとしよう、と白い竜は変身魔法でヒトガタになると改めて自己紹介をした。


『私はこの山を住処と決めた皇帝竜の末の娘、桃鈴トウリンという』

 

 薄桃色のツインテールに白い革鎧と短いドレス姿の可愛らしい少女だった。


「ん?皇帝竜……?もしかして君は、皇帝竜王インベリスの娘さん?」

『え?父を知っているのか?ああ、その……一応末娘としているがその……妾腹だし娘だし、そもそも皇帝印を持たず産まれて来たゆえ、認知と保護はされたがそれだけの存在でな……。ぶっちゃけ、皇帝竜としての力なんぞないただの虹彩竜だな!』

「母ー。皇帝竜って?」


 桃鈴ちゃんの説明に、メルトは首を傾げた。


「えっとね。竜族の中で一番偉いのが皇帝竜の一族で、その長が皇帝竜王インベリスさんなんだよ。で、他の主要6大竜種……火、水、風、土、光、闇の竜族がいてね、それぞれの配下に亜種や希少種、劣化種がいるよ」

『随分とお詳しいのだな。ハイエルフの方ゆえか?』


 僕の説明に、桃鈴ちゃんが感心したように言った。


「まぁ。イスとは一緒に戦った仲だしなぁ」

「そうだねぇ。荷運びとか移動とかすごくお世話になったなぁ」


 うんうん、と思い出に浸っていたら、桃鈴ちゃんはえ?という顔をした。


『あの皇帝竜王の父が……荷運び……?』

「うん。カレーライス食べ放題で引き受けてくれた」


 懐かしいな。

 野営でカレーを作っていたら突然やってきて、何でもするからそれ食わせろって言ってきたっけ。


『カレー……父……カレー……昔聞いたような……。はっ!まさか貴方たちは先の勇者様ご一行!?』

「今はもう勇者の役職は返上したがね。あきらだ、よろしく」

「僕はかなめ

「メルトはメルトだよ!よろしくね」

『えーーーー!?』


 空間収納からカレーの鍋土鍋ご飯を出しながらそう告げれば、桃鈴ちゃんはびっくりして声を上げた。


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