第76話✤マルドラの村の依頼4

 翌朝、食堂で朝ご飯を食べ終わった僕らは早速山道の調査に向かうことにした。

 ギルドによって一言告げたら、「ギルマスからです」とお弁当を3包見頂いた。

 中身はケルコッコ……地球でいうブラマみたいな人間と同サイズの鶏の香草焼きをパンにはさんだものだった。

 この香草、人間には無害な香りのある草なのだが、魔物忌避剤の材料にもなり、道中で食べてても匂いで魔物が寄ってくることはないという。

 良いおやつができたね、と三人で喜んだ。



 ◆◇◆◇◆



 さて、皆がダンジョンに潜るための受付をしている列を横目に、山へ続く森の道を進んでいく。

 山に入るのはそんなに珍しい事ではないらしく、浅い所では人の気配が点在していた。

 お弁当に使っている香草も森の浅い所で採取できるようで、ちらほらと見え隠れしている。

 僕もちょいちょい摘んでは収納に入れ、あまり整備されているとは言えない道を進んでいった。


「ダンジョンが出来たことでこっちはあまり人の手が入らなくなったんだろうなぁ」

「だろうねぇ。ダンジョンの入場料を取っているみたいだけれど、インフラ関係までまだ回せるほどではないんじゃないかな。もう少しレベルが高いダンジョンだったら人も多く来て、もうちょっと発展はしていたと思う」

「村から1キロ圏内であればまぁ大丈夫だろ」


 聖と話しながらてくてくと進んでいく。

 メルトが大人しいとおもったらアプリルのドライフルーツをもぐもぐしていた。

 うん、朝ご飯はあまり多くなかったからねぇ。


「土魔法でドーン!とやっちゃってもいいけれど、今回の依頼内容が調査だからなぁ。刺激になるようなことはしない方がいいだろう」

「そうだね。それに、奥の方にちょっとばかり強めのが居るかな。駆け出しに毛が生えた程度じゃ無理っぽい」

「山の方の反応は動いてないから、それは茶っちゃっていいんじゃないか?」


 だねー。

 森の奥の反応はジャイアントボアかジャイアントディアーあたりかなぁ。

 でももう少し強めの反応だから、その上位種でストレンジが付くやつかもしれない。

 まぁ狩ったら即収納ストレージに入れて美味しいごはんになるんだけれどね。


「山の件が片付いたら道の整備位してもいいよなぁ」


 と、そわそわしているインフラ整備大好き聖さんであった。



 歩いて4時間ほどで山を越える山道の入り口までやってきた。

 あ、道中の強めの気配はやはりストレンジジャイアントディアーでした。

 通常のジャイアントディアーよりも二回りほど大きく、毛皮も赤い。

 この赤く染まった毛皮で作るコートや装備は、軽装備職にとって人気の一品だ。

 ちなみに防火効果もあったりする。


 さて、山道に足を踏み入れてからどうやら見られている気配がする。

 それは聖もメルトも感じているようで、なんかそわそわするー、とメルトが言ってきた。


「遠見魔法かな」

「だろうねぇ。僕らだから気付いたけれど、ここらに来る冒険者はわからないだろうね」

「自分の縄張りで活動するモノの確認だろうな」

「じゃぁ、もう少ししたら向こうから来るんじゃない?」

「だなー」


 だって、自分がのぞいてるって知られちゃったし。

 視線のする方にちょっとだけ手を振ってみた。


「まぁその前に。ここらでごはんにしようかね」

「賛成!」

「やったー!」


 ギルマスから貰った御弁当? とっくに聖とメルトの居の中ですよ、ええ。


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