第67話✤ドーラの街の依頼2

 ※前の話のタイトルを変えました。



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 聖が釣り上げたジャイアントイールはおよそ蒲焼300人前は軽くあった。

 5人前分ほど蒸してから網で焼いて業務用のタレを塗ってからまた軽く炙った。

 土鍋で炊いたおこげ付きのほかほかご飯にタレをひと回しし、その上から贅沢に2人前載せたものを聖とメルトに差し出した。

 僕はそんなに食べられないので1人前でも多いかも。

 サンドイッチ食べちゃったからね。

 目の前では聖とメルトが、美味しい!美味しい!と言ってあっという間に平らげていた。

 ほんと、その食欲はどこまで入るのか⋯⋯。


「このタレが美味しい。これでご飯3杯はいける⋯⋯」

「メルトも!」


 まだまだ食べ足りなさそうだったから、おにぎりを10個だしてから後片付けをした。


「まぁこれで採取しやすくなったかな。他にでかい気配は無さそうだし」

「そうだね。水晶草と水中草花をできるだけ沢山って言ってたから集中出来るのはありがたいね」

「水中草花は水ん中か。そっちは俺がやるから、水晶草はメルトとたのむな」

「うん、ありがとう」

「メルト、頑張る!」


 二手に別れた僕らはそれぞれ目的のものを回収することにした。


「水晶草は葉が透き通っているからすぐわかるよ。水が豊富にある水辺にしか生えないし」

「母、これ?」


 水辺を歩きながらメルトに説明していると、メルトは傍にあった水晶草を引っこ抜いて見せてきた。


「うん、そう。でも必要なのは上から2番目のあたりまでだから、次はそれでお願い」

「はーい!」


 水晶草の葉は対生でつくのが特徴で、1番上のちょん、とまとまっているすぐ下の葉から2番目の柔らかい葉が必要になる。

 根っこさえ無事なら摘み取ったところからまた生えてくるので、安心な薬草なのだ。

 逆に水中草花は根元ごと引っこ抜いた方が鮮度が保てる。

 空気に触れると早く乾燥してしまい、ポーションを作るギリギリまで水の中に浸して置かないとならない。

 聖は小さな巾着タイプの魔法鞄マジックバッグを何個か持っているので(そのうちの一つが死体入れと化してあるが)そこに水ごと収納するのだろう。

 それに、聖は水中でも動けるし、水の上も走れたりするからね。

 勇者ギフトすごいな。


「母ー!この辺のおわったー!10本の束でみっつー」

「おお!でかしたメルト。僕の方が10本束で4つだから、もう少ししたら聖の方に行こうね」

「はーい!」


 さて、もう少し頑張りますか。

 合計で120本程の水晶草をまとめたところで、僕らは聖が居る水辺まで移動した。


「大量大量。やっぱ手付かずだったせいで大量発生してたわ」

「もともと、水中っていうのもあるけど、ジャイアントイールが居たからねぇ」

「200本ほど巾着袋に突っ込んでおいたから、ペトラも驚くだろうな」

「だねぇ。さて、採取依頼はクリアとして、次は混合村の間引き、上位種が居たら潰して、蜂の駆除かな」

「だな。間引くのはメルト、上位種がいたら俺、蜂駆除は枢にお願いしていい?」

「任せて」


 日本じゃ蜂どころか毒蛇の駆除も日常的にしてたからね。

 水中に居た聖の体を温めるために暖かいココアを飲んでから、僕らは分岐道までもどり⋯⋯。


「草刈りを再開します」


 また同じように風刃ウインドカッターと収納を駆使してどんどん森の奥へと進んで行った。

 ちなみに収納後は聖が土魔法で綺麗に道を舗装してくれているから、次からくる採取人や冒険者は大分楽になるんじゃないかな。

 そんなことを10m単位でやっていたら、少し開けた場所に出た。

 どうやら奥に進む為の中継地点として使われていた場所のようだ。


「ほいっと!」


 僕は繰り返し作業を行い、ついでに場所を広げるために何本か樹を伐採した。

 その後から聖が土魔法でもこもこしてくれるので、あっという間に綺麗な中継地点が出来た。

 伐採した木を収納内で加工し、マップと連動して中継地点をぐるりと囲むように設置した。

 いわゆるオシャレなウッドフェンスで一応防腐と強化も掛けておいたから、イノシシ程度なら軽く防げるかな。

 ついでにと魔石ランタンも5m幅で設置する。

 いや、通販でソーラーパネル付きの背の高いガーデンライトがあってね、どうせならってね⋯⋯。

 幸い金貨10枚で済んだし、中継地点が充実したなら冒険者も来るからね。

 後でペトラに報告して、四隅に結界石を埋めといてもらおう。

 そうすればわりと安全に狩りが出来るだろう。


「枢ー。中央に共同竈作ったぞー」

「わぁ!ありがとう!」


 はて?拠点作りの依頼は受けていたかな?まぁいいや。


「簡単な結界も張っておいたから1ヶ月は持つよ。後でペトラに報告しないとな」

「そうだね。僕も思ってた」

「井戸も掘りたいけど、維持がなぁ」

「その辺は各自水魔石で対応するか、見張り小屋作ってタンク設置して管理でいいんじゃない?」

「だな、入口の横に小屋建ててくる」

「はーい」


 聖はそう言うと嬉々として見張り小屋を作りに行った。

 出来上がったのは平屋で受付と泊まる部屋があり、屋根に見張り台が着いている立派なものだった。

 聖さん、やりすぎです。


「今日はここに泊まろうなー」

「はーい!」

「そうだね。夕飯は何食べたい?」

「「うなぎ!!!」」


 あ、はい。

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