第68話✤ドーラの街の依頼3
※一ヶ月ぶりです。まだ忙しいけれどなんとか……
◆◇◆◇◆
鰻がいいと言われたので。
ジャイアントイールって川に住んでたんだ。海のイメージが大きかったけれどそういや川で採れたよな。とか思いながらも1.5人前くらいに大きく切り分けたジャイアントイールの肉を3つの蒸し器に突っ込んでいった。
先ずは蒸しで。
背開きと腹開き、蒸すか蒸さないかで好みが分かれてるけれど、僕は蒸しから入る方法しかしらない。
骨は……うん、大きすぎて骨煎餅にすら出来ないね……。
そういえば血圧上昇抑制効果だったり、骨粗しょう症に効能があるとかなんとかは通販スキルで買った本に書いてあったような。
その辺はペトラに丸投げでいいかな!
蒸しあがったら焼きにはいります。
蒸しは時間がかかるので時間経過10倍の
大きめだし肉厚なせいか、皮目と身の間の脂がブルブルしているのが見えた。
鰻の油は融点が低いけれど、ジャイアントイールだと少しは残るものなんだなぁ。
焼き目が付いた辺りで刷毛でタッパーに入れておいた鰻のタレを満遍なく塗っては焼いてを繰り返す。
この作業は各自でやってもらっているおかげか、すぐ20人前が仕上がった。
まだ蒸しているものもあるし、食べながら焼いておけばストックとして魔法鞄の共通フォルダに入れて置ける。
「母!うなぎおいしい!ふっくら!」
「あー!これこれ。うな丼って言ったらこれだよなぁ!」
聖もメルトもうな丼はお気に召したようで。
タレをかけて焼いた鰻をつかった鰻巻や鰻と大蒜のチャーハン、白焼き、白焼きの酢の物(うざく)なんかも作っておいといた。
汁物は豆腐と蒲鉾と三つ葉であっさり目に。
うまいうまいと喜んでくれるから作り甲斐があるね!
「美味しかった……」
「やっつけてよかったなぁ」
「そうだねぇ。帰ったらペトラにタレと白焼きをおすそ分けしようか」
「だなー。これは食わせたい美味さだしな」
「美味しいは正義……」
うんうん。と三人で頷いた。
余談だけれどこの数年後、ドーラの町では鰻の養殖に成功し街道沿いの町とあって宿場町としての価値が上がったとか。
名物はもちろんうな丼で、長距離移動をする商隊などに大人気だったという。
さて、次は混合村の任務です。
間引きで問題ないならいいんだけれど、街の近くまで来てるってもうそれは無理な話になってるんだろう。
というのが丸解りな状況を目の当たりにして、僕らは頭を抱えた。
混合村……村?てかんじでなんかちょっとした防衛拠点見たくなってるんですかれど??
村の周りの囲いはしっかりした石積みの上に木の柵ができており、物見やぐらも四方に設置されている。
僕らは1km離れた高台にある丘あたりから望遠鏡を使って確認したんだけれど、山肌を背にしていてそこには洞窟もある。
きっとキングなんかはその奥にいるんだろう。
「メルト、洞窟の中わかる?」
「ちょっとまってー」
流石に洞窟の中までは僕ら人間にはわからないので、魔族であるメルトのスキルに頼ってみよう。
最近生えたらしいんだけれど、サーチと気配察知が融合して新しいスキルになったそな。
イメージとしては赤外線サーモグラフィ機能みたいな感じで、よくある海外アクションドラマである、人の形が浮かび上がってるあの映像らしい。
なので魔物のおおよその形がわかれば、それに当てはめてスキルさんの方で勝手に判別してくれるそうだ。
なにそれ超便利。中まで火が入ってるかどうかとかすぐわかるからタタキとかローストビーフとか低温調理に使えそう。
「えーとね。洞窟の中には大きな個体が3つ。人間サイズはいない」
「でかしたメルト。では遠慮なく……」
僕は魔法鞄から大きくてごっつい弓を取り出した。
スキル:
風魔法で火薬矢を包み、空気摩擦を限りなく低くし、指向性を持たせた。
つまり、洞窟の中に直接Go fire!というわけだ。うむ。
僕が弓を引き絞ったのと同時に、聖は槍を、メルトは魔法詠唱を始めた。
うん。慈悲が無くていいね。
「導け!焔滅の弓よ!」
指からするりと矢が放たれる。
次いで聖の槍が村の中心部へ、メルトの広範囲魔法が村の上空に展開した。
爆炎と衝撃波、そして轟音をとどろかせて、混合村だった場所は跡形もなく一掃されたのだった。
「戦いはいつもむなしい……」
「戦ってすらないけどなー」
「メルト、大きな魔法使ったからおなかすいた……」
「確認し終わったらごはんにしようか」
「賛成!ひつまぶしとうな茶たべたい!」
「メルト、鰻の名孫とじ丼!」
二食連続鰻ですかそうですか……。
若いっていいなぁ。
僕は酢の物そえてさっぱり頂こうかな……。
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