みんナのニチジョう
七瀬みどり
第1話 Sの自殺
Sが自殺した。まだ中学生なのに、自殺した。理由はなんとなく分かる。
「未来が見えないから」
Sはいつもそう呟いていた。未来なんて見えるわけないのに。
学校ではSの自殺で話題が持ちきりだ。成績が落ちて悩んでいた、いじめられていた、親子関係が、先生が、的外れな考えがあちこちから飛んでくる。
全部違う。未来が見えないからだ。
緊急の全校集会が開いた。校長先生が泣いている。嘘泣きかそうではないのかは分からないが。辛いときは誰かに相談してくださいと誰でも言えるような戯言を吐いた後に集会は終わった。Sは辛かったのか?辛いから死んだのか?多分違う。
Sの家の前には見慣れない車が2台あった。親戚だろうか。みんナ泣いている。僕も泣いた。
死のう。
家に帰った。ゴミが寝ている。タバコ臭い。でもよかった。死ねる。その前にカップラーメンを食べる。とてもおいしい。最初で最後の日記をつける。
10月9日(火)
前が見えない。暗闇だ。
日記帳を持って外に出る。真っ暗だ。学校に行く。給食室のドアはちょっとしたコツで開く。そのまま3年1組 —Sの教室— へと歩を進める。ロープをかける。怖い。怖い。怖い。それでも手は全く止まらない。興奮している。
準備ができた。やるか。首をロープにかける。そしてとぶ。痛い。痛い。だけどこれでやっと...
バタンッ!ロープが切れて落ちた。首と膝が痛い。目の前にSがいた、気がした。Sは怒っているのか、笑っているのか。よく分からない表情をしている。幻覚でも見ているのか。僕はSからのメッセージだと勝手に受け取り、帰ることにした。お前にはまだ早いってことかな。
完全に夜だ。星が綺麗だな。未来は見えなくても星はあんな綺麗に見えるんだな。エs
バン!鈍い音。トラックだ。腕がない。痛い。これは死ぬやつだ...。助けてくれS!
Sは笑っていた。
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