第140話 それぞれのクリスマス その二

済みません投稿が遅れました。


――――――


俺、立石達也。今日は木曜日だ。午前中の授業が終わると

「達也さん、帰りましょう」

「はい」


 涼子は無表情だが、早苗が怒った顔しているが仕方ない。二人で校門を出て駅に向かうと

「ふふっ、嬉しいです。こうして達也さんと二人で帰れるなんて。初めてではないですか?」

「そうでしたっけ?」

 学校から玲子さんと二人だけで帰るのは初めてかも知れない。もう周りの生徒からの俺達を気にする視線は無くなった。流石に助かる。



 玲子さんのマンションに着くと彼女の後ろに付いて一緒に部屋に入った。

「達也さん、上着をコートハンガーにかけて下さい。洗面所で手を洗ったらダイニングで待っていて下さいますか。私は着替えて来ます」

「はい」


 洗面所で手を洗い、ダイニングに行くと私服に着替えた玲子さんがダイニングに来た。部屋着とは思えない素敵な洋服だ。

「達也さん、座って待っていて下さいね。直ぐに用意をします」



 玲子さんがクマさんエプロンを着けて準備に取り掛かった。しかし三人同じエプロンなんて偶然が有るんだな。俺がエプロンを見ていると


「達也さんどうしましたか。エプロンに興味があります?」

「いえ、良く似合うなと思って」

「ふふっ、嬉しいです。これを着けると何となく達也さんと一緒に居る気がして」

 そういう事だったのか。しかし俺はあんなに可愛いクマさんじゃないぞ。


 玲子さんは冷蔵庫から仕掛中の料理を出すとテキパキと調理を始めた。それを見ながら

この人と初めて会ったのは一年の正月の時、あれから二年になる。色々有ったが、関係をはっきりさせた。後四年友達として付き合うが、本当に必要なんだろうか。もう俺を見捨てて他の誰かを好きになってくれてもいいのだが。


 料理をしながらチラチラと俺を見る玲子さんが、

「達也さん、私はあなたを見捨てるなんて絶対にしません。達也さん以外の人が私の前に現れる事も有りませんよ」


 えっ、本当にこの人俺の考えている事が分かるのか。そう言えば四条院さんが玲子さんは人が考えている事が分かると言っていたけど本当なのか?


「ふふっ、達也さん。私は人の心なんて読めないですよ。達也さんのお顔を見て想像しているだけです」

「…………」

 やっぱり分かっているじゃないか。変な想像出来ないぞ。


「いいんですよ達也さん、私にならどんな想像しても。もちろんどんな要求をなされても良いですよ。私は達也さんのものです。貴方が西伊豆で助けてくれなかったら、もうここには居なかったかもしれませんから」


 なんか、涼子の時と同じ展開だぞ。これは切り換えないと。


 玲子さんがまたこちらを見てふふふっ笑っている。これは不味い。


 ダイニングテーブルの椅子に座っていると

「達也さん、出来た料理をテーブルの置いてくれますか」

「はい良いですよ」


 ここはオープンキッチンなので受取易い。もちろん大きな料理はキッチンの中に入るけど。


 ふふっ、達也さんと一緒にテーブルの準備が出来るなんてなんて素敵なんでしょう。本当は私が全部準備すればいいですけど、こうして達也さんに手伝って貰うと一体感が湧きます。この方と結婚すれば毎日このような事が出来るかも知れない。

 



 しばらくして一通り出来た。最後は一羽分のローストチキンだ。大きなテーブルが一杯になっている。


「昨日から仕込んでおいたのですが、少し時間が掛かってしまいました。ごめんなさい。お腹空いたでしょう」

「いえ、大丈夫です。全部綺麗な盛付けで美味しそうですね」

「ありがとうございます。では飲み物を持ってきますね」


 持って来たのはノンアルコールシャンパンだ。

「アルコールは入っていませんが、やはりクリスマスはシャンパンですね。さあ頂きましょうか」


「「メリークリスマス」」

 シャンパングラスはカチンと合せる事はしない。近づけるだけだ。良く冷えていて空き過ぎたお腹に沁みる。


「全部食べて下さい」

「はい」



 玲子さんの作った料理はどれも美味しかった。一時間半程ゆっくりお話をしながら食べるとお腹が一杯になった。


「玲子さん、流石にお腹一杯です」

「ふふふっ、嬉しいです。片付けますので座っていて下さい」

「いや俺も手伝います」

「では、一緒にシンクに食器を持って来てくれますか」

「はい」


 達也さんと片付けも一緒にしている。一緒に準備をして一緒に食べてそして一緒に片付ける。なんて素敵なんでしょう。この人に寄り添って生きたい。でもライバルは一杯います。でも負けません。



 一通り片付けが終わると

「達也さん私の部屋に行きましょう」

「玲子さん、話だけですよ」

「はい分かっています」


 部屋に入ると大きなベッドが置いてあるが他にもローテーブルとソファが置いてある十分な広さだ。


「達也さん、ここに座って下さい」

 言われた通りに座るといきなり俺に抱き着いて来た。


「玲子さん」

「達也さん、本当は、本当は抱いて欲しいです。私の体が達也さんを欲しております。こんな事言うとふしだらな女に思いますけど、私はそれでもいい。達也さんの前ならどんなにふしだらな女と言われても良いです。

 でも今日は我慢します。だからこれだけはさせて下さい」


 玲子さんが俺にしがみつきながら思い切り腕を背中に回して来た。


 達也さんのこの広い胸。大きな背中。太い腕。そして彼の匂い。皆好きです。でも今日はこれだけにします。いずれの時にはこの人の子を宿します。だから今は我慢します。


 長い長い時間が過ぎた。彼女の細い体。大きな胸が俺の鳩尾辺りに当たっている。彼女の顔は俺の胸にある。流石に俺の個人的な生理的な欲求が我慢出来なくなった。


「玲子さん、そろそろ帰ります」

「いやです。もう少しこのままで」

「でも」



結局、食事が終わってから三時間近く玲子さんの部屋に居た。


「ふふふっ、達也さんあり、がとございます。また次まで我慢しますね」

「…………」


 彼をマンションの出口まで送って行って姿が見えなくなるまで待ってから自分の部屋に戻った。


 彼のぬくもりがある。彼の匂いが有る。そして私の体には彼の名残りが一杯ある。幸せです。私はふしだらな女。でも彼の前でだけはそれでいい。


――――――


 玲子さん、作戦勝ちかな?


次回をお楽しみに。

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面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。




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