第135話 心の中の席
この話の最後に大切なお願いがございます。
-----
俺、立石達也。中間考査の結果が発表された日の放課後、いつもの五人で塾に行く道すがら
「早苗、玲子さん、涼子。俺の事を思ってくれるのは嬉しいが、教室での事は良くないぞ。俺達だけならまだいいが、他の生徒もいるんだ。口に気を付けてくれ。こんな事言いたくないが、ああいう事を口にするな」
「ごめんなさい達也。でも達也の彼女は私だよね」
「そうだ。早苗は俺の彼女だ。だから言うな」
私、立花玲子。達也さんはああ言っているけど、まだ最後の座は決まった訳じゃない。彼女の座なんてこの三人の間では価値なんてない。最後に達也さんの傍にいるのは私。
私、本宮涼子。誰が彼女かなんて関係ない。私はいつも達也の傍に居て彼を支える。例え達也が結婚しても。私は諦めない。
「達也、再来週に行われる模試の準備はどう?」
「早苗、中間考査の結果が出たばかりだけど、もう始めている。今回も一人だ。誰からも声を掛けてほしくない。自分でやりたい」
「分かった。我慢する。でも模試終わったら一杯一緒だよ」
「達也さん、私もです。模試が終わったら一杯一緒に居て下さい」
「そういう話はもう止めないか。また同じ事になるだけだ」
「「でもう…」」
最近、玲子さんが凄く積極的だ。前はこんな事無かったのに。この人とは一応後四年半ある。何故今こんなに積極的になっているんだろうか。
いずれにしろ、この三人と学校、塾以外で会うのは模試後だ。加奈子さんも模試後だ。そして模試後にはっきりさせる。
塾での勉強も最近は理解出来ない部分がだいぶ少なくなって来た。四人には悪いが、理解しづらい所は、受講後に講師に直接聞いている。おかげで大分レベルアップ出来たようだ。
そして十一月第二週の水曜日。学校で模試が行われた。結果は再来週に分かるが、流石にもう良いだろう。
模試が終わった次の日の朝の登校時に四人に話しかけた。
「みんな、今度の土曜日塾は有るけど俺の家で模試の見直しとか答合わせしないか?」
「えっ、ほんと達也?」
「ああ、四人共来てくれ」
「ふふっ。嬉しいです。達也さん」
「達也の家、二回目だ。楽しみ」
「うん、達也行く」
みんなが来て貰う理由は模試の答合わせともう一つの目的がある。別々に言うよりいいだろう。
その日の夜、父さんが帰ってくのを待って話しかけた。
「父さん、少し時間有る?」
「なんだ達也」
「実は…。隣の桐谷早苗と大学卒業後結婚したい」
父さんは、俺の顔をじっと見ると
「達也の気持ちは分かった。お前が言うからには早苗ちゃんの気持ちは聞いているんだろう。だが早苗ちゃんの両親とも話さなくてはいけない。それに婚約はどうするんだ。大学出ていきなり結婚というのはな。それに三頭さんの所の話もある。簡単には行かないぞ」
「分かっている。今すぐ決めて欲しいと言う訳じゃない。ただ将来そうなる事を父さんに分かっていて欲しい」
「それなら、高校卒業してから籍を入れるという事も出来るぞ。披露宴なんぞ大学卒業後で十分だ」
「その話だけど。…早苗と俺はまだ高校を半年、大学四年ある。高校卒業後籍を入れるとか婚約するとかして早苗の心や行動を制限したくない。
彼女には色々見て知って欲しい。それは我が家の為にもなる。だけどそれによって万が一早苗の心が変わるならばそれは仕方ない事」
「達也、随分自信のない事を言うな。早苗ちゃんの心を繋ぎ止めておく自信が無いのか?」
「俺は彼女の伸びしろを俺の所為で潰したくないだけだ。今度の土曜日に彼女達を呼んでいる。そこではっきりさせるつもりだ」
「そうか」
土曜日、学校が終わった午後十二時半に四人を我が家に招いた。場所はリビング。
最初は何気なく模試の答合わせをした。凄い事だが、四人と俺の解答がだいぶ一致している。
「達也、やったね」
「達也さん、これでA判定間違いないですね」
「ああ、まだ結果は出ていないが、結構いい線行ってそうだ。ところで今から皆に大事な話が有る」
「「「「えっ?!」」」」
「玲子さん、涼子。俺は大学を卒業したら早苗と結婚する。父さんには了解を取っている」
「「「「えーっ!」」」
涼子と玲子さんの顔が思い切り曇った。早苗は目を丸くして満面の笑みを浮かべた。
「た、達也。ほんと、ほんとに私、達也と結婚出来るの?」
「ああ、本当だ。しかし、高校卒業したら婚約とか籍を入れるとかはしない」
「なんで!」
「早苗、俺は婚約とかする事によってお前の行動を制限したくない。高校は半年。大学は四年ある。色々な事を経験し覚える事が出来る時間だ。
そんな大事な時間を俺との約束事で制限するような事はしたくない」
涼子と玲子さんの顔がパッと明るくなった。
「そんな。私は達也と一緒にいれる事が自分の行動を制限するなんて思わない。大学卒業して結婚なら高校卒業してから婚約しよう」
「駄目だ早苗。理由は言った通りだ」
「達也さん、分かりました。正妻の座は桐谷さんに今は譲っておきます。だからと言って達也さんの心の中にある一つの席を桐谷さんに譲る気は有りません」
「達也、あなたが生きている限り私はあなたの物。そして心の中の席は一つだけじゃない。一番目の席は正妻、二番目の席は内縁の妻、そして三番目の席には私。だから私はいつもあなたの傍にいてあなたを支える。私達のどちらかが死なない限り」
私、四条院明日香。うわっ、凄い事になった。達也思いきった事を言ったと思ったけど、これじゃあ今までと何も変わらない。
変わったのは四年半後に達也が桐谷さんと結婚するだろうという事。でもこんな事どうにでもなるのは世の中の常。それに三頭さんがこのまま座して黙っている訳がない。
ますます、面白くなって来たわ。案外四人倒れもあるかも。ふふふっ、楽しみだわ。
「明日香、何を笑っているのです」
「玲子、気の所為よ。私は部外者だから」
「本当にそうなんですか」
「やだぁ玲子。この混戦の中に私が入ると思っているの?」
「いえ、でも案外漁夫の利を狙ってはいませんか?」
「あ、あははっ。そんな訳無いでしょう」
あぶない、あぶない。
「達也、私婚約したい。今すぐにでも。そうすればこの人達が達也の周りに寄りつく事も無くなる」
「駄目だ早苗。自分を大切にしろ。立石の嫁になるには色々な事を学ぶ必要がある。その準備の為にも大学四年間は色々な事を吸収しろ」
「分かった。でも達也私を捨てないよね」
「そんな事は絶対にない。天に誓ってない」
「分かった。それならいい」
ふふふっ、これなら達也との関係は維持できる。
「後、大事な事だが、玲子さん、涼子。今後は絶対に友達の範囲を超えない形で会います」
「達也さん」
「達也」
私、桐谷早苗。ふふっ、達也良く言ってくれたわ。これで達也は私だけのもの。いずれ三頭さん共話を付ける。
「みんな、もう午後六時も過ぎた。ここらで解散としよう」
私、立花玲子。不味いです。こうなったら最終手段しかありません。今度の日曜日実家に帰ってお父様の許可を貰うしかない。
――――――
いよいよ決着の時が迫って来たようです。…ほんとかな?
次回をお楽しみに。
(下記内容近況ノートにも記載しております)
いつも私の作品を読んで頂いている読者の皆様、大変ありがとうございます。
12/1から応募が開始されたカクヨムコン8に本作品を応募しました。
このカクヨムコン8は読者の皆様の★★★で決まります。作品をフォローして頂いている読者様、フォロー頂いてなくても読んで頂いている読者様、ぜひぜひお星様★★★を頂けるととても嬉しく思います。
宜しくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます