第118話 明日香と南部のデート
私、四条院明日香。今日は玲子と久々のテニスをやった。とても楽しかったし体も活性化したけど、この後の予定を入れていない。前の学園のお友達と会う約束は有るが、もう少し先だ。
…今日の南部君可愛かったな。彼、来宮さんが好きなのかな?あの様子だとまだ友達範囲内の気もする。
私の彼と会っても退屈なだけ。もう少し積極的なら楽しいんだけど。仕方ない夏休みの宿題でもやるか。
翌朝、起きて朝食を食べた後、自分の部屋で宿題を始めた。まだ九時半だ、なぜかやる気が起きない。
目の前にあるスマホをじっと見ると最近登録した子に連絡を入れた。
「南部、お前のスマホ鳴っているぞ」
「ああ、ありがと」
俺、南部和人。今日の練習は午前九時から午前十一時半までだ。夏休みの練習も明日で終わる。仕上げメニューを始めようとしていた。
仲間の声に仕方なくテニスバッグのポケットのスマホを取り出すと
えっ、四条院先輩からだ。何だ?練習中だから要件でだけ聞くか。あの人には恩があるからな。
『もしもし南部です』
『あっ、南部君、練習中ごめんね。今日の午後空いている』
『…特に用事は入っていないですけど』
『じゃあ、会わない?』
『何か用事あるんですか?』
『まあ、顔見たくなったってとこ』
『じゃあ、我慢して下さい。それでは』
ガチャ。
あっ、切られた。何よあいつ、人が下手に出れば生意気に。こうなったらメッセージを送ってやる。
『南部君、さっきはいきなりの電話ごめん。今日午後会いたいな。午後一時にデパートの有る駅の改札で待っている。
もし君が来なくて私が変な男に襲われたら君の責任だからね』
送信っと。これでいいか。まあ、私が襲われる事は無いけどこの位書かないとあいつ来なそうだからな。
俺が、四条院先輩からの訳の分からない誘いを断った後、スマホをバッグのポケットに入れた所で今度はメッセージが送られてきた。仕方なくそれを見ると
何だこれ、俺の知った事か。再度スマホをバッグのポケットに仕舞った。
午前十一時半になり、部員の練習もクールダウンが終わった所で
「ようし皆、今日はここまでだ。明日が夏休み前半の最後の練習だ。明日は練習ではなく、夏休み前半のこの練習の反省と後期練習のメニューの説明だ。だから普段着でいいぞ」
「「「分かりました」」」
「解散。一年はネットとボールの片付けとコートのローラ掛けしとくように」
「「「はい」」」
俺は、部室で着替えていると
「南部、この後用事あるか?」
「あっ、ああ有るな」
「何だ歯切れ悪い。まあ明日も会える。明日のミーティングの後、遊びに行かないか?」
「いいな。付き合うよ」
「じゃあ、これで俺達は帰るから。お疲れ」
「お疲れ」
俺は皆が帰った後、着替えを終わってから一年の様子を見て、駅前の〇ックに入った。
くそっ、なんで行く必要が有るんだ。でもなんか行かないと悪い気もしている。練習後だから汗臭いだろうけど構うか。練習があるの分かっていて誘ったのは向こうだ。
俺は一番でかいハンバーガーとコカ・コーラのLサイズを頼んで食べると時間を潰したが、潰し切れず待ち合わせ場所に行く事にした。と言っても隣駅だ。十分も掛からないだろう。
待合せの改札に着いたが、まだ二十分前居るはずも無かった。仕方なくスマホを弄りながら待っていると改札からひと際目立つ人が現れた。
モデルかと思う程の抜群のスタイル、長い髪は後ろでロングポニしている。薄茶色のホットパンツで長い素足を惜しげもなく出してピンクのTシャツを着ている。
足にはオレンジ色のかかと付サンダルだ。周りの男性や女性が思い切り視線を注いでいる。
目立つ格好して来たな。
「南部君待ったあ」
「いえ、少し前には来ましたけど」
「そういう時は定番のセリフを言うものよ」
「別に俺、先輩の彼氏じゃないんで」
ほんとこの子はっきりモノ言う子ね。今日は思い切り刺激的な格好で誘ったのに。まあいいわ。
「南部君、昼ご飯食べた?」
「はい」
「私まだなんだ。高校生なんだからまだ入るでしょ。付き合ってよ」
「良いですけど安い所にして下さいね。さっき食べて財布が軽くなっているので」
「ふふっ、心配ないわ。私がご馳走する。誘ったのはこっちだからね」
「…………」
俺が、連れて行かれたのはデパートの隣にあるSCのレストランフロアの中のイタリアンのお店だ。ランチが最低で千五百円以上だ。こんな所に入るのかよこの人。
店員が入り口に迎えに来て席に案内された。彼女の方を見て俺の方を見ると複雑な顔をしていた。
「好きな物食べていいわよ」
「さっきハンバーガー食べたので、このスパで良いです」
それでも千五百円する。消費税別だぞ。
「分かったわ」
先輩が注文を頼んだ後
「先輩何か用なんですか。俺の顔を見たいなんて冗談なんですよね」
「ううん、本当よ。君と色々話したくてさ。この前は映画見て買い物したからね。今日は話を一杯したいの」
「…………」
何考えているんだ先輩は。
「ねえ、テニスの夏期練習はいつまでやるの?」
「明日までです」
「ふうん、そう。夏の宿題は終わった?」
「練習優先だったので。少ししか進んでいません。明日の夜からやる予定です」
「そうなんだ。夏休みの宿題以外は何して過ごすの?」
注文の品が来たので、今度はそれを食べながら話し始めた。先輩が頼んだのは魚介類のリゾットだ。
「そうですね。仲間とプールに行ったりゲーセンに行ったりですかね」
「そうなんだ。じゃあそれ以外の日は空いているの?」
「あの、なんでそんな事聞くんですか?」
「良いじゃない。夏休みの間に君の事一杯知りたくてさ」
先輩どういうつもりなんだ。俺なんかの事知ったって意味ないだろうに。まさか、それの結果で付き合うとか考えているのかな?まさかね。
一時間位そのお店に居た後、駅の反対側にある公園に行った。ここでも先輩は積極的だ。
「ねえ南部、君彼女いないんでしょ」
「でも好きな人はいます」
「本宮さんなら諦めなさい。君が彼女と付き合える可能性は一パーセントも無いわ。酷い言い方かも知れないけど事実よ」
「…………」
「彼女を引きずるより新しい彼女を見つければ」
「俺の事なんかどうでもいいでしょ。それより先輩はどうなんですか。モテそうですよね」
「そうね。モテるわ。彼氏っぽい友達もいるし。でもその人極端な奥手でね。合わないの」
「…………」
どういう意味だ?
「だからさ、今新しい人を見つけているという所」
この人どういうつもりで言っているんだ。これじゃあ、まるで俺を誘っている見たいじゃないか。
「そうですか。良い人が見つかると良いですね」
いきなり先輩が俺の前に来た。俺も背は低くないが、先輩よりほんの少し高いだけだ。だからいきなり両頬を両手で掴まれてしまった。
「ねえ、私とキスしてみる」
「冗談は止めて下さい」
俺が先輩の腕を捕まえて顔から手を離そうとさせた時、
「私は本気よ。キスの後だってしてもいいわ」
「…………」
俺の唇に先輩の柔らかい唇が触れた。こんなに柔らかい物なのか。抵抗出来なかった。
唇が離れて両手が俺の頬から離れると俺をじっと見て
「行っても良いよ。行く?」
「…………」
興味はあるけどいきなりなんて。でも……。
「行こうか」
先輩が俺の手を握って歩き始めた。
俺、工藤正人。参考書を買いにSCにやって来た。ここには伊ノ国屋という大きな本屋がある。一応俺も受験生だ。三年の夏は重要だ。塾以外にも自分でしっかり勉強しないと志望大学には受からない。
問題集を買ってSCを出た時だった。
えっ、明日香さんが知らない男の子と手を繋いで歩いて行く。怖い人は何処に居るんだ。
周りを見ると五メートル位離れてついて行く。下手に俺が二人を邪魔したら…。でも何処に行くんだろう。気になる付いて行こう。
えっ、こっちって。あっ、彼が拒否している。明日香さんが、何か言っている。あっ、戻って来た。なんか、二人で笑って話している羨ましい。俺ではあんな事出来ない。
でもこの前、明日香さん俺の事恋人って言てくれた。じゃあこれって?
そのまま、二人はコンビニに入って行った。仕方なく俺は帰る事にしたけど気になる、どうすればいいんだろう。
俺はどうしても気になって家に着いてから明日香さんへ電話した。
でも出ない。どうしたんだろう。……振られたかな。俺みたいな人間じゃ駄目なのかな。
明日もう一度電話して駄目だったら諦めるしかないのかな。
――――――
むむ、四条院さん、良いんですか。工藤君に見られていますよ。
工藤君頑張れ。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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