第117話 玲子と明日香のテニス模様


 私、立花玲子。本当は達也さんと塾の夏期合宿に行きたかった。お父様にお願いするとセキュリティが維持出来ないと言われ参加を止めさせられた。


 今日から四日間とプラス二日彼に会えないと思うと胸が苦しくとても寂しい気持ち。昨日は達也さんの行動を監視していた者から午後七時には駅に三頭さんと一緒に着くと沖田に連絡が入り、報告を受けた私は駅で彼を待っていた。


 午後七時少し前、私は三頭家の車が駅に着き彼が車から降りて、三頭さんの車が見えなくなるまで待ってから家に帰ろうとするところで声を掛けた。


 ダメ元で部屋に誘って見たら拒否されたので彼の胸に抱き着き涙で訴えたら来てくれた。彼は優しいこの優しさは不安だけどいずれ私だけに向いてくれるなら、今は我慢するしかない。


 達也さんは、今彼女は桐谷さんだと言っているけどそれは彼女が後四年半今のままで居れればの話。彼女はモテる。今の学校は仕方ないにしても大学に行けば交遊範囲は広がる。


そして人の心は変わるもの。桐谷さんだって例外では無い。でも私は変わらない。男は達也さん以外認めないから。



 達也さん達が合宿に出かけたその日、仕方なく本を読んでいると明日香から連絡が有った。

「玲子、テニスしない?」

「明日香何を言っているのですか。出来る訳無いでしょう。大体何処で出来るのですか?」

「玲子、私この前ね女子テニスの練習を見に行ったのよ。前の学園の時の準備をして。そうしたら来宮さんが、私を相手してくれてさ。まあ簡単に勝てたけど、その話はともかく行けば少しさせてくれそうだから行かない?」

「そういう事ですか」


 私は前の学園の一年の時を思い出した。

私と明日香が一年生ながら学園内の選手選考会でダブルスで勝って地区予選、インハイ予選を勝ち抜いてベストエイトまで進んだ。

周りの騒ぎようは大変で雑誌のインタビューまで受けた。美少女ダブルスとか書かれて。でもその後はこの学校に来る為にテニスを止めた。だからもう一年半近くが経っている。

でも気分変えになるかもしれない。


「玲子どうかな。どうせ彼は合宿だし暇なんでしょ。テニスしようよ」

 

 私は少し考えた後、

「明日香いいわよ。いつにする?」

「明日。午前十時に校門で待ち合せしない?」

「いいわよ」



 私は早速、前の学園で着ていたポロシャツとスコートそれにラケットを取りに実家に帰った。

 いきなりの帰宅だったので両親が驚いたが、理由を話すとそれは良いと喜んでくれた。夕飯も一緒に食べながら近況を話すととても嬉しそうに聞いてくれた。達也さんの事も素直に話したが、お母様は嬉しそうにお父様は少し複雑な気持ちで聞いていたようだ。


 朝の事も考えて夕飯後帰ろうとしたが、このまま家の車で学校まで行けばいいという事になり、甘えさせて貰った。




 翌日、午前十時前に校門の所に一台の黒塗りの大型車が止まっていた。私の乗った車が近づいて停止すると後部座席から明日香が降りて来た。


「おはよう玲子」

「おはよう明日香」

「早速行こうか」

「ええ」


 私達二人がテニスコートの方に歩いて行くと来宮さんが走って近づいて来た。

「四条院先輩、立花先輩。見に来てくれたんですか。嬉しいです。ぜひまたお手合わせ下さい。後ご迷惑でなければ部員へのアドバイスも」

「いいわよ来宮さん。いいでしょ玲子」

「もちろんです。私で良ければ」

「謙遜しないで下さい。四条院先輩と初めて手合わせして頂いた後、家に帰ってからテニスの月刊誌を掘り返して見たらお二人の輝かしい姿が載っていました。それ皆で共有して喜んでいた所です」

「ふふっ、恥ずかしいですね。もう昔の事です」

「そんな事ありません。あっ、こんな所で足止めして済みません。早速部室で着替えて来て下さい。コートで待っています」



 明日香に連れられて女子テニス部の部室に行くと早速二人で着替えた。

「玲子、少し大きくなったんじゃない。達也に揉んで貰っているの?」

「何を言っているんですか。いきなり。そんな訳は…」

 一昨日の事が反射的に頭に蘇って少し顔を赤くすると


「あちゃー。まさか玲子がそこまでお盛んとは。人間変るものね」

「な、何を言っているんです。はしたない」

「あれ、はしたない事して貰っているんでしょ」

「そ、それは…」

「ふふっ、上手く行っていて良かったじゃない。さあ早く着替えましょ」


 二人で前の学園のユニフォームで歩いて行くと


「「「おーっ!」」」

「す、すげえ。俺テニスクラブ入って良かった」

「俺もだ。もしかしたら見れるかと思っていたけどまさかこんなに早く見れるとは」

「立花先輩、制服だと分からなかったけど、四条院先輩より大きいかも」


「こらーっ、そこの三人。練習に戻れ」

「部長代理に怒られちゃった。戻るか」

「ああ」



 私、立花玲子はコートの中に入り練習に邪魔にならない様に二人で柔軟をした。前の学園でやっていた二人でやれる柔軟だ。懐かしい。あの頃がふと蘇った。達也さんのお話が無かったらまだやっていたかも知れない。


「先輩達、ダブルスします。それともお二人でシングルスします?」

「そうね。慣らし代わりに玲子二人でやろうか。一セットだけ」

「良いですよ」

「私達見てます。模範にします」

「ふふっ、模範になればいいんだけど」


 最初のサーブは私から。ラインを踏まない様にしてルーティンに入りボールを高く上げた。

スパーン。


パコーン。

パコーン。


「す、凄い、四条院先輩のサーブも凄かったけど立花先輩のサーブも凄い。それを四条院先輩が返している」


 フィフティーンラブ。


スパーン。


 サーティラブ。


「凄いわ。立花先輩のサービスエースよ」


 玲子は自分のサービスゲームを取るとサーブが明日香に交代した。


 結局、デュースまで持ち込み、玲子が勝った。

「ふーっ、流石玲子ね。一年半もしていないのに私が負けるとは」

「ふふっ、さっきの部室で言った事のお返しです」

「まあ、あんな事で玲子に恨みかったの私」

「そうですよ」


 私達がベンチに戻ると

「先輩達凄かったです。とても参考になりましたと言いたいんですけど、上手すぎて参考になりません。少し皆に教えて貰えますか」

「いいわよ来宮さん」



 そんな事を話していると南部君が

「立花先輩、四条院先輩。凄かったです。俺でも勝てる自信ないです。ぜひ女子テニスの底上げお願いします」

「ねえ、南部君、それ言い過ぎじゃない」

「だって来宮まず地区予選通ってからそれ言いなよ」

「でも言い過ぎでしょ」


「ふふっ、二人共仲いいのね」

「「まさか!」」

「あははっ、ハモっている」

「先輩、誤解です」

「良いのよそこまで言わなくても。さっ、皆で少し練習しようか」

「「「はい」」」


 私立花玲子と四条院明日香は、クラブの練習が終了する十二時まで付き合ってから女子テニス部員と別れた。



「ふふっ、楽しかったですね。明日香の言う通り気分転換になりました」

「それは良かったわ。玲子、まだお昼だし、昼食兼ねてどこか入ろうよ」

「良いですね」


 私達は車で帰るのは止めて徒歩で駅まで向かった。二人で歩いていると変な男達が声を掛けようとしたけど、私のセキュリティの沖田や明日香のセキュリティが、ほとんどブロックしてくれた。


 少し痛い目に合った人もいる様ですけど、仕方ないですね。私の身長は百六十八センチ、明日香の身長は百七十二センチ。一学期の身体測定の時計りましたが、私はもう伸びないようです。

 達也さんの為にもう少し伸びても良かったのですが…。


 でも私も明日香も自慢はしませんが、綺麗な方と思っています。私達が歩いていれば声を掛けられても仕方ありません。


「明日香、何処にしましょうか」

「そうねえ。ファミレスは嫌だし」

「では、駅の向こう側に静かな喫茶店があります。あそこのBLTは美味しそうでした」

「いいわよ」


 私と同時に明日香も後ろを歩いている二人に目配せするとそのまま駅を通り過ぎて目的の喫茶店に入った。



 私達が、喫茶店で食事をしながらお話していると喫茶店の前に二台の黒塗りの車が止まった。


「明日香、もう帰りましょうか。今日は楽しかったわ。ありがとう」

「お礼はいいわ。私も久しぶりに玲子と楽しめたから。達也にも宜しくね。どうせ彼が合宿終わったら会うんでしょ。もみもみ良いなあ」

「明日香、こんな所で何てこと言うのですか」

「でも本当でしょ」

「な、何言っているの。早く帰りますよ」

 期待も有ってつい顔を赤くしてしまった。周りの人が好奇心いっぱいの目で聞耳を立てている。

  二人でお金を払って喫茶店の外に出るとそれぞれの迎えの車に乗った。



以下余談…………。


二人が喫茶店を出て行くと周りの客が

「へえ、凄いお嬢様達なんだ。でもあんな会話もするのか」

「そりゃそうでしょ。どんなに高貴な方でも子孫繁栄の為の努力はするんだから」

「まあな。しかしあんな美少女達がねえ」

「なに、羨ましいの。悪かったわね。平凡な女で。ふん」

「いや、それは…」


――――――


 なんとも賑やかなお嬢様達ですね。周りのお客様も驚いていました。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。



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