第57話 涼子の誘い、玲子の考え


 俺は加奈子さんと少し濃い目のデートをした後、自分の家に帰った。


 食事の時、母さんと瞳が物凄く疑いの目を向けられていたが、なんなんだろう?


 夕食後、洗面所で着ていたもの脱いで風呂に入った。ゆっくり風呂から上がると

 えっ何だこの匂い。ま、不味い。加奈子さんの匂いだ。だから母さんと瞳が疑いの目を向けてたのか。確かに早苗とは違う匂いだ。

 これはまた何か言われそうだ。白を切るしかないが。



 もう寝ようとベッドの中で本を読んで居るとスマホが震えた。えっ?


 涼子からだった。俺は直ぐ出ると

『涼子か?』

『はい涼子です。学校以外で連絡してはいけないと分かっています。でもどうしても…』

『涼子、俺とお前は友達だ。別に学校の外で連絡しても問題ない。それに中間考査の時、二人だけで勉強しただろう』

『達也…』


『どうした涼子』

『達也聞いて。もし駄目だったらはっきり言ってくれていいから』

『………』


『達也、今度の土曜日会えないかな?涼香から聞いた。もう土曜日の担当はしていないって。だから…駄目かな』

『何か用事か?』

『ううん、でも達也に会いたい』

『…分かった。いいよ』

『ほんと!えへへ、やったー。ありがとう達也。これだけなんだ』

『涼子、なんか悩みあるなら聞くぞ』

『ありがとう。じゃあ土曜日に』


 涼子の奴どうしたんだろう。変な奴に絡まれているのかな。いずれにしろ高校卒業までは側にいないと。それがあいつと俺の運命だ。




 俺は翌日いつもの様に玄関を出ると門の所で早苗が待っていた。もうずいぶん寒いはずだ。

「達也おはよう」

「おはよう早苗。もうここで待っているの寒いだろう。俺が迎えに行くから家で待って居ろ」

「やだ」

「じゃあ、俺の家の中で待って居ろ。早苗が風邪ひいたら困る」

「私が風邪ひいたら達也が看病すればいい。だから私が待っている」

 参ったなあ、明日から俺が先に門で待ってるか。それとも

「なあ、早苗。お前が家を出る時、スマホで連絡くれ。そうすればお前が寒い思いしなくて済む」

「それじゃあ、面白くない。達也がいつ出て来るか待っているからいいの」

「…………」

 そういう事。


 そんな事を話している内に駅に着いた。電車に乗り二つ目の駅になると涼子が同じ車両に乗って来た。先週までは隣の車両だったのに。




 学校のある駅に着くと

「じゃあ、達也学校でね」

 サッと先に降りて行ってしまった。




 私立花玲子、今日も達也さんと一緒に学校に向っている。夏休み過ぎた頃は彼と私の心はとても近くに有った感じがした。でも最近、感でしかないけど、心が離れているように感じる。一緒にこうして歩いていても、昼食を一緒に摂っている時も。


 このままではいけません。理由は一つ。私が他の方達に比べて魅力が無いから。だから今度の日曜日、形勢逆転とはいかないまでも何とか向こうに傾いた心をこちらに向けなくてはいけない。


 でも恋愛経験のない私では、良い案が浮かばない。やはり帝都女子学園のお友達に聞くしかないのかしら。でも…。



「どうしたんですか玲子さん」

「えっ、はい。なんでも無いです」

 いけない。達也さんに気付かれるとは。本当に何とかしなくては。





 私はこの日の夕方、前の学園のお友達と会う事にしました。もちろん場所は家指定の喫茶店。セキュリティがしっかりしていて個室だ。


「玲子、久しぶりじゃない。どうしたのいきなり転校するからみんな驚いていたのよ。あれからもう半年だわね」

「お久しぶりです。四条院さん。今日は少しご相談したいことがありまして」

「なになに、恋愛相談かな?」

 

 この四条院明日香さん、私のお友達の中では恋愛経験が少し多め。お嬢様ではあるが、悪戯っ子的な所がある。


「ふふっ、明日香はいつも通りですね」

「私は変わらないわ」

「あちらの方も」

「うんまあね。でも高校に入ってからはまだ二人目よ」

「そうですか。今日は明日香の経験を聞きたくて」

「ほうほう。いよいよ玲子もその世界に足を踏み入れると。じゃあ、今までの事話してくれるかなあ」

 相談に乗って貰う人間違えたかな?仕方なしに達也さんの事を一通り話した。もちろん別荘の事は上辺だけですが。


「なるほど、それは大変だわ。ライバル多しか。玲子奥手だからねー。中等部の時も高等部に入ってもことごとく告白断って来たし」

「それは仕方ない事です」

「まあ、玲子の眼鏡にかなう人なんて早々居ないからね。でもその立石って人。そんなに良いの。玲子がそれだけ気に入るんだから。写真ある」

「有っても見せません」

「えーっ。そんなあ。じゃあこの話は終わり」

「わ、分かりました。見せます」

 夏休みの時スマホに撮った写真を見せた。


「…………。玲子本当にこの人がその…そんなにモテる人?」

 私には怒ったゴリラにしか見えない。


「はい。とても心優しくて、強くて、いつも私を守ってくれます。私は安心して彼の側にいる事が出来ます」

「そうなんだあ。私が会って見ようか。ちょっとイメージでない」

「駄目です」

 明日香は相当に可愛い。桐谷さんにも負けない位。だから会わせられない。


「あははっ、嘘よ。ちょっと考えさせて。この人攻略するの結構大変かも」

 強くて優しくて側にいると安心その上将来は安泰かあ。私も会って見たいな。

 

「駄目ですよ明日香。変な事考えては」

「あははっ、大丈夫よ。流石に立花玲子の彼を取ろうなんて思わないから。でも興味あるわね」

「明日香!」


 それから二日後、四条院明日香は私にいくつか案を入知恵をしてくれた。それで彼の心がこちらに向くとは思わないけどやらないよりやってみた方がいい。少し危ういけど。


――――――


 なるほど。涼子も玲子も必死です。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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