第40話 三頭さんとプールデート

 一話でこの場面を済ませたかったので長いです。


――――――


 俺は、二十分前には着こうと家を午前八時五十分に出た。待合せの駅まで九つ。何も無ければ予定通り着くはずだ。


 電車に乗って二つ目、いつも涼香ちゃんとこの駅で別れる。あの子と居るとどうしても涼子の事が記憶から消えない。裏切られたとはいえ、やはり気になるものだ。今頃何しているんだろう。


 元カノの事を思い出しても仕方にと思い、別の事を考えようと見慣れた景色を見ながらぼーっとしているといつの間にかプールのある駅、三頭さんの家のある駅に着いた。


 まだ二十五分ある。彼女の家のある方の改札で待っていると、何故か俺をチラッと見ては直ぐに視線を外してそそくさと改札に入って行く。

 俺ってやっぱり…だよな。でも恰好かな。黒のTシャツに濃いブルージーンズ。黒のスニーカーにサングラスだ。俺は普通の恰好をしているつもりなんだが。


 改札を行き来する人達の目に晒されながら彼女を待っていると駅前の信号が変わるのを待っている三頭さんを見つけた。


 いつもながら目立つなあ。ピンクのTシャツに白の短パン。オレンジ色のかかと付サンダルで、髪はアップにしている。綺麗な顔の輪郭がはっきりと出ている。


 隣に立っている男がチラチラ彼女を見ている。まあ、仕方ないだろう。ずっとそのまま見ているとこちらにやって来た。


「達也待ったあ」

「いえ、そんな事ないです」


 急に周りの人が驚いた顔になった。どうせいつもの事だ。やっぱり俺じゃあこの人には合わないんだろうな。


「どうしたの難しい顔して」

「いや何でもないです」


 ジーっと俺の顔を見た後

「そっ、じゃあ行こうか。駅を回る様にしてプールに行くから」

「分かりました」


 なんと、何気に手を繋いで来た。まあ今日ぐらい良いかあ。


 ふふっ、達也。今日も手を繋いでも離さない。キス作戦成功かな。じゃあ今日は予定通りに行きますか。




 俺達はプールの入口でチケットを買うとそのまま別れて更衣室に行った。まあ、男は簡単だ。Tシャツとジーンズそれにパンツを脱いで海水パンツに履き替えれば良いだけだ。スイムキャップは、ここは必要なのかな?


 あれ、隣の人が俺の体を見て驚いているけどどうしたんだろう。あっ、早く海水パンツ履かないと。


 隣の人曰く、すげーっ、俺負けた。ガクッ!




 更衣室を出て待っている事十五分。女の子は長いな。まあ、仕方ないか。


 あっ、出て来た。こ、これは……。


 髪をアップにして綺麗な顔の輪郭をはっきりさせ……。この人制服の上からも大きいなと思ったけど、黒のビキニからはみ出しそうだ。


 更にぜい肉一つないお腹に括れた腰、大きすぎないお尻に黒のビキニ、それに曲がりが無いすらっとした足。その上凄い色白。

 ラッシュガードと防水のバッグを手に持っているけど…。


「達也、お待たせ。どうしたの?目が点になっているよ」

「い、いやいや。三頭さんが眩しすぎて」

「ふふっ、達也が選んだのよこの水着。どう似合うかな?」


俺は横を見ながら

「はい、とっても」

「達也、こっち見なければ分からないでしょ。私を見て!」

「はい」


 恐る恐る顔を三頭さんの方に向けると嫌でも胸に目が行ってしまう。うーっ、どうすれば。

「ふふっ、達也そんなに私の胸が気になるの。プール止めてホテルに行く?直ぐ見れるわよ」


 俺は直ぐに鼻を押さえた。…良かった出ていない。


「ふふっ、冗談よ。さっ行こうか」

「分かりました三頭さん」

「ねえ、お願い今日だけで良いから加奈子って呼んで。せっかく二人でプールに来ているんだから」

「わ、分かりました、か、加奈子さん」

「まあ、いいわ」


「あの」

「なあに?」

「ラッシュガード着てくれると嬉しんですけど」

「えーっ、そうなの。達也に私をしっかり見せようと思っているのに」

「い、いやそういう事は別の所で」

「えっ、本当。今の言葉嘘じゃないよね」

「あ、はい」

 俺なんかおかしな事言ったのか?


 加奈子さんがラッシュガードを着てくれたのでやっと普通に彼女を見る事が出来た。ただ、真っ白な綺麗な足がしっかり見えているけど。


「加奈子さん、あそこのテーブルが空いています」

 監視員の近くだ。良く空いていたな。


「えーっ、達也あっちが良い」

「少し離れているけど」

「良いじゃない」

 せっかく達也とイチャイチャしようというのに監視員の側じゃ出来ないでしょ。



 テーブルに着くと

「ねえ、達也、流れるプール入ろうか」

「良いですよ」


 俺達は貴重品を防水型の小物入れに入れて、浮輪を一つ借りると加奈子さんをその中に座らせた。


 ぷかーっ、


 ぷかーっ。


ただ浮いている。何となく流れている。俺は加奈子さんの傍に立っているだけ。

まあいいか。


「達也浮輪押して」

「はい」


 加奈子さんの正面に立つとそのまま浮輪を押した。思い切り胸が強調されている。


「ふふっ、達也もっと」

「いいんですか」


 思い切り押すと


 キャーッ。ドボーン。

加奈子さん座ったまま後ろ向きにひっくり返った。


 やっちまった。加奈子さんが浮輪から落ちてしまった。急いで彼女を手を引くと


 ピタっ、思い切り抱き着かれた。


「もう、押し過ぎ」

「だって加奈子さんが…」

「駄目、だからこうして抱き着いていれば落ちないわ」


 俺の鳩尾から少し上辺りに強烈に二つの柔らかい物が、潰されてギューッとくっ付いている。脳が沸騰しそうだ。


 ふふっ、達也の顔が真っ赤だわ。もっとぎゅーっと。


「か、加奈子さん。これ以上抱き着かれると」

「抱き着かれると?」

「頭が破裂しそうです」

「ふふっ、分かったわ」


 彼女は俺が持っている浮輪にまたお尻から乗ると

「ねえ、達也、あれしない」

 加奈子さんが指差したのはウォータースライダーだ。あれは涼子の時に…。


「ねえ、しようよ」

「分かりました」


 俺達は流れるプールを途中で上がり、浮輪を借りた場所に返すとウォータースライダーの所に行った。親子やカップルが待っている。でも五分位か。


 ふふっ、達也とウォータースライダーやるなんて。もっと私を意識させてあげる。



 俺達の順番になると係員が

「彼氏さんが前で、彼女さんが後ろに座って、手を彼氏さんのお腹に回してしっかり掴んで下さいね」

「はーい」


 私は少し恥ずかしかったけどぴったりと体を付けて足も思い切り開いて彼のお尻にくっつけた。


「いってらっしゃーい」


 係員の声の元滑り出すと


 す、凄い、今度は背中にアドバルーンが二つ付いているよ。なんかお尻も彼女の足に挟まれているし。


 考えている内にゴールした。ちょっとあそこが元気気味、不味い。


「達也、もう一回」

「え、ええ」


 結局三回やって、俺のメンタルは壊れた。

「達也、大丈夫疲れた?」

「い、いえ肉体的には全く疲れていません」

「じゃあ、何処が疲れたの?」

「ど、どこも」


 達也にはちょっと強すぎたかな。

「じゃあ、少し休もうか。何か買って来る?」

「後で俺が行きます」


 十五分位テーブルの傍で横になった後、飲み物を買いに行こうと思ったが

「加奈子さん、少し早いですけど昼食にしません。室内で」

「えっ、なんで?」

「いやちょっと…」

「いいよ。外で食べよ。あっ、私を心配しているなら二人で買いに行こうか。ラッシュガードをおいてバッグは貴重品を除いておいて行けば大丈夫だから」

「分かりました」


 ふふっ、達也。私を心配してくれたのね。確かに今日はちょっと声掛けられる可能性大きから。でも嬉しいな。やっぱり達也だ。思い切り腕にしがみついた。


「えっ!」

「ふふ、いいじゃない」


 加奈子さん、周りからの視線が凄すぎるんですけど。ラッシュガード着ていないから余計。


 俺達はテーブルに戻ってゆっくりと昼食を摂った後、波の出るプールに行った。ここでも加奈子さんは思い切り俺にくっ付いて来た。


 波が来ると


きゃーっ、と言って俺にピッタリくっ付いてくる。

俺も仕方なく彼女の腰に手を回すけど、細くて柔らかい。折れてしまいそうだ。


 これを一時間近く繰り返して、


「加奈子さん、少し休みましょうか」

「うん、ちょっと疲れた」


 私はちらりとプール内にある時計を見た。午後三時、家族が帰るのは午後六時。ぎりぎりかな。


「ねえ、達也。もうプール上がって、私の家に来ない」

「はっ?」

「プールも疲れたし、でもまだ達也と別れたくないから家でお話しよう」

 加奈子さんが考えている事って、まさかなあ。でも…。


「さ、達也あがろう」

「はい」


 俺達は更衣室でシャワーを浴びて元の洋服に着替えて外に出た。加奈子さんの髪の毛はもうアップしにはしていない。でもまだだいぶ濡れている。


「達也、行こ」

「はい」



 私三頭加奈子。ここまでは予定通り。後はなんとかうまく…。




 彼女の家に着くと

「上がって」

「…………」

「どうしたの。ここまで来たんだから」

「はい」


 玄関を上がって右側にある階段を登ると左に回ってドアを開けた。

「ここが私の部屋。入って」

「で、でも」

「遠慮しない。入って達也」


 加奈子さんの部屋からは甘い香りが一杯流れ出て来た。これ入ったら断れるか?


「達也」


腕を引かれてしまった。ドアを閉じられると


「達也、今日は午後六時まで家族は誰も帰ってこない」

 じっと俺の顔を見ている。


 俺の手を引いてベッドの上に座らせた。俺に抱き着いて来ている。

「達也、お願い」

「…………」


 こんな事絶対に駄目だ。俺にはこの人への責任が取れない。それに嫌いじゃないけど、俺の心がこの人に向いていない。



「達也、責任取れとかって言わない。でもね、私ももう高校三年生。今まだで好きになった人がいない。あなたが現れるまで。

 私は残りの高校生活を好きな人と過ごしたいの。だから私の体にあなたの印が欲しいの。好きな人の印が。

もし、もしあなたが後一年いや半年で私を好きになってくれなかったら、私に心が向いてくれなかったら…。それでもいい。だからお願い。私を抱いて」

「加奈子さん…でも」

「お願い!」



……………………。


「くっ!い、痛い」

「大丈夫ですか?」

「う、うん」



 ふふっ、これでいい。多分大丈夫だと思うけど、妊娠するかも知れない。でもいいこの人だったら。


「あのっ、すみません。勢いで…」

「いいのよ。全て私の責任でしたんだから。でもね達也、明日からううん、今から私の事は加奈子って呼んで。さん無しよ」

「分かりました、加奈子さん」

「ぶっ、ぶっー。加奈子」

「済みません。加奈子」


 加奈子は俺の首に腕を回して思い切り唇を付けて来た。そしてもう一度……。


 俺はその後、午後六時ぎりぎりまで加奈子の家に居た。幸い家族の帰宅は少し遅れているらしい。

「達也送る」

「でも歩きにくそうだし」

「いいから」


 結局駅まで送って貰ったと、心配になってまた家まで彼女を送った。

「ありがと達也」


 唇に一瞬だけキスされた。


――――――


うーん、避けきれなかったとはいえ。達也二度目の体験です。どうなる事やら。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る