第32話 体育祭でも揉めてます その二


 少しいつもより長いです。


――――――


 午前中の競技も終わりお弁当の時間になった。俺達は教室に戻ると

「達也、立花さん今日もう一人いるんだがいいか?」

「あっ、ああ。そうだな」

「私は構いません」

「ありがとう、ちょっと呼んでくる」


 健司の奴どっかに行ったよ。


「立花さん、机を付けて食べましょうか」

「ありがとうございます」


 俺は立花さんの机を持ち上げて俺の机をくっ付けると彼女が、持って来ていたバッグを机の上に置いた。

 中から大きなタッパーを二つと大型の水筒が二つ入っていた。

「本当は健司さんの分も作って来たんのですけど、あの様子だと必要ないかもしれませんね」

「…………」


 立花さんの言っている意味が分からないまま、タッパーを開けると

「おおっ、凄い。すみませんいつも」

「何を言っています。達也さんの昼食を作るのは私の役目です。今日は水筒の中にスポーツドリンクと麦茶の二つを入れて来ました」

「ありがとうございます」


 そんな話をしていると

「いいから入って」

「でも」

「大丈夫だから」

 後ろを振り向くと健司が小松原さんを連れて来ていた。


「達也、事情は後だ。今日佐紀が一緒に食べる」

「小松原さん、こっちの机を利用すれば四人で食べれるよ」

 俺はそう言って健司の横の席を移動させた。


「健司いいの?」

「いいよ。いつも食べている人達だから」


 思い切り躊躇しながら小松原さんがバッグを机の上に置いた。そして中から

「これ健司の」

 と言ってタッパーを一つ出した。もう一つ出してから紙コップと大きな水筒を一つ出した。


 なるほど立花さんが言っていた意味が分かった。


「立花さん、立石さんいきなり済みません。本当は健司と二人で食べるつもりだったんですけど、健司がお二人と一緒にって言うものだから」

「佐紀が、百個人終わった後、あんなことしたからだよ。もう達也には話しておこうと思ってさ」

「そうなの健司?」


「高頭さん、小松原さん。時間が無くなります。早く食べましょうか」

「そうだな。健司食べるか」


 昼食が先になったので、二人のなれそめは後で聞く事になった。


 立花さんが作ってくれたのは、大きなから揚げ、俺の口に合わせたのかな?おにぎりこれは大きのと小さいの、だし巻き卵、口直しのショウガ、ミニトマトときゅうり、それに太巻きとお稲荷と結構な量だった。


「本当は高頭さんの分も作って来たんですけど要らなくなったみたいですね」

「いや、せっかくなので頂きます。良いだろう佐紀」

「うん、私も食べたい」

「ふふっ、どうぞ召し上がれ」


 何か周りの視線が痛いが、無視する事にした。


 食べ終わるとまだ二十分残っていた。

「達也ちょっといいか」

「ああ」


 俺達はグラウンドの木陰のある木の下に来ると

「実は佐紀とは中学からの付き合いなんだよ」

「えっ、でも全然分からなかったけど」

「そりゃ、達也みたいに登下校一緒じゃないし、俺はバスケだがあいつはバレーボールだ。会うのは休みの日だけだからな」

「そうか」


「俺は中学からバスケやっていて、中学二年の時、俺が初めて出た試合を見に来ていた中に佐紀いたんだ。

 始めは分からなかったけど、終わってから知合いに紹介されて、まあ何度か会っている内に俺から告白したんだ。付き合ってもう三年になる」

「三年かあ、凄いな」


 話の途中で集合が掛かった。クラス毎の集合場所に行くともう立花さんと早苗は座っていた。


「午後一番の競技は借り物競争です。出場者はスタート地点に集まって下さい」


「達也さん、行って来ます」

「達也行って来る」

 あれ、二人共これに出るのか。


 二人が先に行くと

「達也、お前も出るんじゃなかったっけ?」

「健司俺出たくない気分」

「なんで」

「嫌な予感が」



 男子から始まった。スタートに並んだ俺はスタートの合図が響くと急いでお題の書いて有るカードを取りに行った。


 花の好きな人。なんだこれ。皆好きじゃねえかよ。しかし俺の頭に浮かんだのは危険な人物ばかり。仕方ない。


 俺は教員のいる所に行って

「郷原先生、先生花好きですか?」

「まあ、好きだが」

「じゃあ俺と来て下さい」

「えっ?!」

「早く」

「あ、ああ」


 これしか選択肢はない。俺は先生の手を引いて走ると

「な、なんとー、剛腕立石君が柔道顧問郷原先生の手を引いている。これは新たな伝説がー」

「「「「おおーっ!!!!」」」


 くそ、顔が赤くなっているのが分かる、チラッと見ると何故か先生の顔も赤い。これは…。


 俺はゴールした後、お題を係員に渡した。

「立石君の取ったお題は、な、なんとー花の好きな人でしたー」


「「「「おおーっ!!!!」」」


 達也さん、何で私に声を掛けて下さらないの?


 達也、なんで私に声掛けないの。一緒に花の水やりしているよね。


 達也子供の時から一緒に庭の花の水やっていたのに。


2Aの集合場所に戻ると健司が

「達也、上手く逃げたな」

「ああ、誰だあんなお題書いたの。書いた奴分かったら絞めてやる」


 何故か隣の奴が震えていたけど。


 続いて、立花さんがスタートした。お題の所に行って一枚拾うと、あれっ、こっち向かって来る。


「達也さん、私と一緒に来て下さい」

「えっ、あ、ああ」

「達也行ってこい」


「おっとー。さっき郷原先生を引っ張った立石君が、今度は美人の誉れ高い立花さんから手を引かれています」


「「「「おおーっ!!!!」」」


「おい、うちの学校にあんな綺麗な人いたのか」

「俺も初めて見た」

「でも引かれているの立石だぜ」

「ああ、静かにするか」



 俺達がゴールして立花さんがお題を係員に渡すと

「立花さんのお題は…なんとーっ、私の大切な人です」


「「「「おおーっ!!!!」」」


「ふふっ、達也さんと手を繋げました」

「…………」



 俺だけ2Aの集合場所に戻ろうと歩いているといきなり早苗が俺の所に来た。

「達也、私をお姫様抱っこして」

「はあ、何言っているんだ早苗」

「お題なの。やってよ」

 お題書いた奴絶対絞め殺してやる。


 仕方なく早苗をお姫様抱っこすると俺の首に手を回して来た。

「達也、ゴール行かなくてもずっとこのままでいいよ」

「何言っているんだ、早苗」


 俺は仕方なく早苗をお姫様抱っこしてゴールに向かうと


「おおーっ、今度は立石君が学校で可愛さNo1の桐谷さんをお姫様抱っこしてしています。立石死ねー!」


「「「「そうだあー!!!!」」」」


 俺は聞こえない振りをした。ゴールについて早苗を降ろそうとすると

「このままでも良いけど」

「駄目だ」

「けち」

 何で俺がけちなんだ。早苗がお題を係員に渡すと


「桐谷さんのお題は…なんとーっ、お姫様抱っこして欲しい人でしたー」


「「「「ぶ、ぶ、ぶーっ!!!!」」」」



 疲れた、もう帰りたい。重い足で2Aの集合場所に帰ると

「達也、大変だったな」

「俺もう帰りてー」

「あはは、そうもいかないぞ。見てみろ前を」


 なにー、三頭先輩がこっちに向って来る。逃げようとすると

「駄目だ。達也、今日は最後まで付き合ってやれ」

「しかし…」



「達也、私と一緒に来て」

「三頭さん学校じゃあ…」

「そんな事どうでもいい。早く」


「行って来いよ達也」



「な、な、なんとーっ、今度は校内No1美女の三頭さんが立石君の腕を引いています。立石死ねー!」


「「「「そうだあー!!!!」」」」


 三頭先輩思い切り俺の手を握っている。

「ねえ、達也、このまま区役所に結婚届出しに行こうか」

「な、何言っているんですか」

「ふふっ、冗談よ。でも気持ちは本気よ」

「えっ」

 やばすぎる。


 俺達がゴールに着くと三頭先輩が係員にお題のカードを渡した。


「三頭さんのお題は……。良いですかこれ言って」

「いいわよ」


「三頭さんのお題は…。私が一生側にいたい人でしたー」


「「「「立石死ねー!!!!」」」」


 俺もう駄目―。HPとかライフって奴ゼロだ。お題書いた奴皆絞めてやる。


 もう座りたくなった俺はゆっくりと歩いていると男子からの凄まじい妬み、嫉妬の視線が浴びせられている。

 やっと2Aの集合場所に戻ると立花さんと早苗が物凄い顔で俺を睨みつけていた。


「達也さん、後でしっかりとお話したい事があります」

「達也、後でちょと時間作って、話したい事がある」

「…………」


 隣で健司が腹抱えて笑っている。健司の奴覚えてろ。



 その後、俺の四百メートル個人があった。普段からその位走り込んでいるので大した事無かったが、何故か同じ組の男子達が物凄い形相で俺を追いかけて来ていた。

 


 やっと体育祭も終わり、最後に教室に戻って男女別で着替えた後、下駄箱に行くと何故か、立花さん、早苗、三頭先輩、それに少し離れて涼子が待っていた。


 しかとして履き替えて一人で帰ろうとすると

「「「待って」」」


「えっ」

「「「私と一緒に帰って」」」


 俺は無言で駅まで走り抜けた。


――――――


 達也。修業が足りん(笑)


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る