第12話

 



「ここが、王都アルフィリアですな。ここまで来れば安心です。…本当にお二方、助かりました」


 街を出発してから2日、ようやく王都アルフィリアに着いた。道中は初日に盗賊に襲われたこと以外特にこれといったことは起きなかったので割愛だ。


「これも依頼ですので、当たり前のことをしたまでですよ」


「感謝してます。これは、報酬分と盗賊の件の分です」


 イラードさんから報酬の硬貨を入った皮袋を貰う。ズシッと来たのでかなり入っているのでは?


「いいのですか?」


「えぇ、命に比べれば安い物です。命あっての商売ですから」


「強いですね」


 精神的に。


「商人はある意味冒険者様より過酷な道を歩んでますからな」


「それもそうですね」


「えぇ。では、私はそろそろ」


「分かりました。ありがとうございました」


「ん、ありがとう、ございました」


「こちらの方もありがとうございます。では、イラード商店でお待ちしておりますのでいつでも、どうぞ」


 そう言ってイラードさんは馬車を引いて王都の中へと入っていった。ちゃんと衛兵に何かを見せてから、だけどね。


「じゃあ、僕たちも行こうか」


「うん」


 僕とミルアは手を繋いで門へと近づく。そして、分かっていたことなので文句はないが衛兵に止められて「中に入るには銅貨2枚だ」と言われたので銅貨4枚渡して中へと入った。

 レイドさん曰く『王都アルフィリアに住んでいるものならいちいち金を取られなくなる。他にも商人、貴族、アダマンタイト以上の冒険者も免除されるから覚えとけ』らしい。




「「わぁ」」


 中はとても賑わってる。それに、街並みも美しい。


「流石王都だな」


「うん」


「…じゃあ、まずは滞在する宿を探そうか」


「はーい」


 僕とミルアは王都の街並みを見ながら宿を探し始めた。



 ◆



「う〜ん、高いけど…この辺りじゃ一番安いし鍵付き、お風呂付き、ここにしようか」


「うん、お風呂楽しみ」


 王都の宿は軒並みお高い。何軒か回ってみたけど、どれも一日泊まるだけで銀貨9〜11枚持ってかれる。


「…なら、ここに……そうですね。取り敢えず3日泊まります」


「分かりました〜!お食事とお風呂の方はどうされますか?」


 店員のとても元気な看板娘さんがそう聞いてきたので「どちらもお願いします」と答えた。


「分かりましたっ!えぇと、銀貨13枚となります」


 おっと、食事やお風呂込みの分を忘れてた。まぁ、いっか。


「はい。…銀貨12、13枚っと…はい、これで」


「はい!たしかに、ではこちらはお部屋の鍵になってます、お食事が出来た時はまた呼びに行きます」


「ありがとうございます」


 僕は鍵を受け取ってから早速部屋へと行ってみる。


 この宿には魔法が付与されてる。王都、だからなのか?


「この宿、凄い」


「やっぱりミルアもそう思う?」


「うん、魔法のお陰で壁が壊れにくくなってるし、風化もしにくい」


「そうなんだ、あ、ここかな?」


 部屋に着いたので鍵を使い中に入る。


「「おぉ」」


 中は清潔でベットが2個ある。そのベットも狭くて小さいやつではなく、かなり余裕のある広さだ。


「えいっ」


「あ、ミルア。やめなさい」


 ミルアがトテトテと小走りして、バフンッと音を立ててベットにダイブした。


「このベット柔らかい!」


「音で分かったよ」


 あんな音は硬かったら絶対に鳴らないだろう。もっと、死んだ音がする。……死んだ音ってなんだ?自問自答だな。


「レオっ、ほらレオも!」


「はいはい」


 期間が決められてるわけではないのでのんびりとしよう。


 僕は手招きするミルアに近づくと、首に手を回されてそのままベットにミルアが引っ張ったため僕の体はミルアを押し倒す形になってしまった。


「…ミルア、危ないからやめなさい」


「大丈夫」


「なにが?…取り敢えず、解放してくれないかな?押し倒す姿勢も楽じゃないから」


「なら横になって一緒に寝よ?…というより寝よ?眠い」


「あれ、寝れなかった?」


「うん、あんまり」


 どうやら野宿はミルアには合わなかったようだ。…気付かなかったな。


「…なら寝るか」


「よしっ」


「ミルア?」


「な、んでもないよ?」


 ……まぁ、もう同意したからいいか。


 ミルアは僕の首に回してる手を解放してそのまま横になる。僕もそれに続くようにミルアの隣に横になった。


「これぞ夫婦の醍醐味」


 ミルアと目が合う。妖艶な笑みをミルアは描いた。


「ほぼ毎日これだけどね?」


「野宿の時は出来なかった」


「そうだけど」


「レオは私のこと好き?」


「っ…ごめん。まだ」


「ううん、分かってる。分かってて聞いた。…でも、分かった。レオがだんだんと私のこと好きになってることは」


「…最初に比べれば傾き始めてるね」


「その調子。そのまま反転していいよ」


「反転したら好きから嫌いになり始めてるんじゃないのか?…あ、でも好きの反対は無関心って聞いたから違うのか」


「それはダメ、レオは私の夫、私だけのもの、誰にも邪魔させない」


「おぉ、独占欲が強い嫁さんだな」


「それが私の取り柄」


 それでいいのか、ミルア。言ってて悲しくならないのか?


「あと、我慢してるだけで普通に欲求もある」


「え…」


「普通にやってほしいことや夜の事やその他いろいろ…でも、一番やってほしいことはずっとそばに居てくれること」


「…うん、僕は君のそばに居るよ」


 ミルアの目を見る。…あ、顔が赤くなった。あ、逸らされた。


「レオ、目を瞑って」


「うん?…うん、はい。これでいいのかな?」


「うん」


 何をするつもりなのだろうか?そう思った瞬間、唇に何かが触れた。


 僕はほぼ反射的に目を開いて何が起こったのかを確認する。すると、ミルアが目と鼻の先に居た。


「…み、ミルア?」


「…これは誓い」


 顔を赤くしながらミルアがそう言う。


「魂が二人を裂くまで私とレオは一緒に居ると、誓って」


「……。うん、誓うよ。ミルア」


 そう言うとミルアの顔がふにゃっと盛大に崩れた。…先ほどまでの雰囲気が一気に台無しである。もう少し保って欲しかったものである。


「レオは自慢の夫、だから。おやすみ」


「うん、いきなりだね……おやすみ、ミルア」



 まだまだ昼間だが、僕とミルアは一つのベットで仲良くお昼寝をした。


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