今も僕は土の中
水定ゆう
事件編—立花子息誘拐事件
都内の高校に通う
テーブルにはまだ温かいカプチーノ。対面にはトレンチコートを着た男がいる。
「雨。お前を呼んだのは他でもない」
「どうせいつもの事なんだろ。刑事さん」
雨が対面しているのは刑事だった。
名前は
しかしそんな彼に待っていたのは難事件だった。そこで出会ったのが彼、鵜上雨だった。突然のことだったが、その特殊能力により事件を解決に導くまさにサイキック探偵。この国では信じられていない、特別なものだった。
「まさか俺の能力を信じるなんてね」
「人の持つ能力は使いようだ。それにお前は頭もいい。その能力とやらには信用していないが、お前自身のポテンシャルには少しは賭ける価値がある」
「そうかい。でもまぁいいよ。それより事件の内容は?」
「これを見てくれ」
啓二は雨に資料を見せた。
クリアファイルに入っていたのは三枚で一束になった紙。そこにはびっしりと事件の内容が記載されている。
「この分厚いフォントは……誘拐か?」
「そうだ。誘拐されたのは
「つまり公園で遊んでいた際、少し目を離した間に姿を消したというわけか。かなりミステリーだな」
雨は唇に手を当てて考えていた。
面白い。そうは思わないが、人の目を一瞬背ける何かがあったんだろうか。
「その公園はこの近くか?」
「そう思っていた。表に車を停めてある」
それを聞いてにやける。
雨は啓二の運転するボックスタイプの車に乗車して、事件のあった公園に向かった。その間に、渡された資料から気になる点をピックアップしていた。
・立花家は
・家族構成は父:立花理格、母:立花美里(旧姓:布瀬美里)、長男:立花理都、次男:立花理柚(今回の誘拐対象)
・長男:立花理都は前妻(立花美玖)との間の子
・立花美里は前妻が死亡してから三か月後に結婚
・長男:立花理都は現在イギリス在住
・遺産相続権は長男に有り
なるほど。かなりどろどろだ。
しかし問題はこの立花美里、もとい旧姓布瀬美里の存在にある。雨はそれを睨むと同時に、気が付くと例の事件現場に着いていた。
「ここだ」
「ここか。至って普通だね」
そこは何ってことない芝の公園。
今は警察が張り込みをして情報収集をしている中、そこに一人の女性の姿がある。
「あの人……」
「おい、雨!」
雨は気にせず公園に立ち入る。
その顔を見ただけで察した。彼女こそが、
「すみません、立花美里さんですよね」
「は、はい?」
やっぱり立花美里だった。
美里は困惑した顔をして、そんな中でも雨は気にせず話をし始めた。
「俺は鵜上です。立花さんですよね?」
「は、はい。確かに私は立花ですが……」
如何やら合っているようだ。
しかし啓二は雨の態度に愕然とした。
「おい、雨!」
「失礼ですが、少し聞きたいことがあるんです。構いませんか」
「えっ、あ、あのー」
困惑する美里に啓二は溜息交じりに、仕方なく手帳見せた。
すると美里は目を見開くと、雨の質問に答える。
「早速ですが、大変でしたね。大丈夫ですか、息子さんが誘拐されてしまって」
「おい、雨!」
「失礼ですが、息子さんは……」
美里は顔色を悪くした。やっぱり言いたくないことか。だけど今のは本意だ。
雨は微妙な意識の変化に気が付いた。しかしこれは白だ。ポイントはそこではない。
だったら……
「長男さんは、如何ですか? 弟さんが誘拐されてしまって……」
「大丈夫です! 何なんですか貴方は」
「すみません。じゃあ最後の質問です」
今の反応はだいぶ黒い。
だけどそれで大体は分かった。頭の中に流れ込んできたのは、どろどろとした空気。波のように押し寄せる。
これが最後の質問。
「長男は今何処にいるんですか!」
「イギリスにいますよ。あの子は……」
流れ込むのは重たくて酷い波の流れだった。
だけどその瞬間、雨は全て分かった。繋がりのない質問が答えを導く。
「啓二さん、分かりましたよ。理柚くんの居場所」
「本当か!」
「はい。でも、一人呼んでほしい人がいるんです」
「呼んでほしい人?」
「犯人ですよ。行きましょっか」
雨は啓二の車に乗り込むと、ある場所を指示した。
そこに呼んだのはもう一人。この事件の首謀者だった。
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