誰にも言えない秘密の恋 ~遅刻寸前、正拳突きから始まった御曹司との恋物語~

マナシロカナタ✨2巻発売✨子犬を助けた~

誰にも言えない秘密の恋 ~上~

「やばいやばいやばい~! 学校に遅刻しちゃうよ~!」


 私は神園まどか!

 今は食パンを咥えながら朝の通学路を走っているところ!


 なんでかって?

 それはもちろん学校に遅刻しちゃいそうだからに決まってるじゃん!


 風でスカートがめくれちゃうのはもうこの際、仕方ない。

 今は遅刻しない方が最優先事項!


 ってわけで私、今ちょー急いでるんだから!


「月曜日から遅刻とかほんと笑えないし! 目覚ましが止まっちゃってるなんてマジ信じらんない!」


 月曜日の一時間目は英語。

 英語のセンセー、めちゃくちゃ厳しいんだよね。

 しかもすっごく怒りんぼ。


 だからチャイムが鳴るまでに何がなんでも教室に滑り込まないなの!


「遅刻厳禁、急げ私! ハリー・アップ!」


 私は駆ける、どこまでも駆ける!


「減速したら遅刻確定! ってわけで、次の角もクイックターン、ヨシっ!」


 私は次の十字路を高速右折しようとして、


「キャッ!?」

「ぐふぅッ!」


 減速せずに突っこんだ私は、勢い余って向こうから出てきた男の人を突き飛ばしてしまった。


「ご、ごめんなさい! 急いでいたんです。えっと、大丈夫ですか!?」


 突き飛ばした後になって慌てて急ブレーキした私は、すぐさまごめんなさいをする。


 や、やっちゃったぁ!?


 しかもただ突き飛ばしただけじゃなくて、昔習ってた空手(都大会入賞、えへん!)の正拳突きを、反射的に鳩尾に叩き込んじゃった!


 カウンターが見事に決まって、男の人をそれはもう派手に突き飛ばしちゃったの!


 し、死んでないかな!?


「う……ぐ……」


「大丈夫ですか!? 大丈夫ですか!?」

 私はしゃがみこんで男の人の耳元で大きな声で叫んでみた。

 

「む……う……」

 だけど男の人はただ小さく呻くだけだ。


「アー・ユー・オーケー? アー・ユー・オーケー?」


 もしかしたら外国の人かもしれないから英語でも聞いてみたんだけど。

 これまた反応らしい反応は見られない。


「わわっ、大変だ! 意識がないみたい! すぐに病院に連れて行かないと!」


 私はスマホを取り出すとパパッと119番通報、救急車を召喚する。


 救急車がやってくると、救急隊員に担架に乗せられた男の人に付き添いながら、一緒に乗り込んでついて行った。

 完全無欠100パーセント私のせいだし、もう学校とか行ってる場合じゃないもんね。


 あ、でも一応学校には連絡しておかないと。


 「ホウレンソウ」といって、社会に出ると「報告・連絡・そ、そ、早退(だっけ?)」っていうのが大事なんだって。

 お父さんが言ってたんだ。


 その後、病院につくと男の人は色んな検査を受けることになった。

 私は待合室でしばらく静かに待機する。


「怪我とか後遺症とかがなければいいんだけど……」


 でも幸いなことに。

 男の人は特に大きな怪我などもなく、検査の途中ですぐに意識を取り戻したようだった。

 後遺症もないみたい。


「良かったぁ~~」


 看護師さんから「もう大丈夫だよ」って言われて、私はホッと一安心。


 でもでも!

 ちゃんと反省しなくちゃだよね!


 今日の教訓!

 今度からはどれだけ急いでいても、見通しの悪い角を曲がる時には向こうから誰か出てこないか、しっかりと注意すること!


 私が心の中で大反省会をしていると、


「神園まどかさん、坊ちゃんがお呼びです。どうぞ病室にいらしてください」


 高そうなスーツを超かっこよく着込んだロマンスグレイのイケオジに呼ばれた私は、突き飛ばしちゃった男の人がいる病室へと案内された。


「失礼しま~す……」


 正拳突きでK.O.しちゃった負い目から、おずおずと病室のドアを開ける。

 真っ白な病室の中にはベッドとテーブルが1つだけ。

 しかもすっごく大きなベッドだった。


 もう見るからにフカフカって感じ。

 最高級の羽毛と言われるアイスランド産アイダーダックダウン100%だね、間違いない。


 こう見えて私は羽毛布団マイスターなのだ(意訳:昨日テレビの特集で見た)。


 机の上には木箱に入った高そうなメロンまで置いてある。


 こ、これってもしかしなくても!

 VIPルームってやつ!?


 すっごい!

 私こういうところ初めて入ったよ!

 帰ったらお父さんとお母さんに自慢しよっ!


 そんなVIPなベッドの上には、私が吹っ飛ばしてしまった男の人が上半身だけ起こして私を見つめている。


 私より少し上、ハタチくらいかな?

 広い病室だったので入り口で突っ立ってるのもなんだなぁと思った私は、トコトコとベッド脇まで歩いて行った。


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