第3話 振込
俺はセカンドハウスを持つと思うとワクワクしながら家に帰って来た。
主な目的は気兼ねなく女の子と会うため。家に女の子を呼ぶと、全然関係ない日にいきなり訪ねてくるかもしれない。だから、自宅には呼びたくない。そうなると、あちらの家かホテルに泊まることになる。俺は毎月5万くらいホテル代を払っていたから、そんなに払うくらいだったらあの部屋を借りた方がいいと思ったんだ。
それに、前から温めて来た、事業をこれをきっかけに始めようかと思った。うちの会社は副業可だったから問題ない。今は働き方改革で残業できなくなって、給料が減ってるから副業を認める会社が増えてるらしい。うちもそうだった。
不動産屋はすぐにメールで計算書を送って来た。
俺は、早めにネットバンクで金を振り込もうとした。
そしたら、エラーになってしまったんだ。
もう一回やっても振り込めなかった。
そんなことは今まで一度もなかったのに。
「あれ・・・」
俺は考えなおした。何かしようとして、すんなりいかなかった時は、やらない方がいいと思っているからだ。前もちょっとした引っ掛かりがあって、取りやめたお陰で犯罪を犯さなくて済んだという経験があった。
みんながキャンセルするような曰くありげな部屋だし、やめよう、と俺は決心した。
すぐに、担当者にキャンセルしたいというメールを送った。
次の日、電話がかかって来た。
「いいんですよ・・・これで5人目ですから。記録更新です」
「そんなに?ほんとごめんね。今度、飯でもおごるよ」
「いやぁ・・・いいんですよ。そんなに気にしないでください。でも、同じような間取りの部屋があったらご紹介しましょうか」
「いや。やっぱり、一回やめようかと思ってるんだよ。会社やろうかと思ったけど、コロナだし・・・時期が悪い気がするから」
俺は担当者に適当に言ったつもりだったけど、本当に、金をつぎ込んですぐに廃業っていうことになるかもしれないと思った。今、やらない方がいいんだ・・・それに、当てにしてる女の子とも別れるかもしれない・・・。
俺はまた普段の生活に戻った。
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