懐かしい闇

小日向ななつ

懐かしい闇

 私は夜の闇が好きだ。


 月明かりが優しく降り注ぐ日も、星空が輝く日も、雨がシトシトと降る日も、ビュービューと唸る風の日も好きだ。

 なぜ好きかというと、不思議な温かさを感じるからである。


 しかし、昔の私はこうでなかった。幼い私はとにかく夜が怖くて堪らない子どもだ。

 深まった夜の時間、トイレに行くのが怖かった。一人で寝ることが怖くて堪らなかった。現実逃避するために拙い物語を考え、気がつけば寝ている日々を過ごしていたのだ。


 でも怖い物は怖い。何度も祖父母がいる部屋に駆け込んだことがある。もう頼み込んで祖母と一緒によく寝たものだ。

 その時は優しく背中を叩かれながら眠っていた。今となっては懐かしい思い出である。


 そんな恐怖心も、成長すると共に薄れた。ある意味慣れたともいえ、新鮮さを失ったともいえる。

 今となっては懐かしい夜。もう戻ってこない日々でもある。


 だからそれを思い出すたびに、私は夜が好きになる。それが私を作った出来事でもあるからだ。

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懐かしい闇 小日向ななつ @sasanoha7730

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