君の心を覗いてみたい

れーよ

第1話

そう。私が恋したのは、11年前。

小学一年生の時。廊下ですれ違ったあの人はとても輝いていた。一目惚れだった。

あ、私の名前は杉並 風(すぎなみ ふう)。

その好きな人の名前は明日風 春太(あすかぜ はるた)。

小学六年生の時、私と春太さんは授業で同じ班になった。その時席は隣で2人ともくっついて話していたくらい仲が良かった。

そんなある日。仲良くくっついて話していた私たちは相槌を打つために横を振り向いた。でも距離が近すぎて向かい合った時の顔の距離は数mmだった。そしてその勢いでキスをしてしまった。

嬉しいハプニングだった。

そして、中学校に入学して、思春期だからか春太さんとはあまり喋らなくなった。

でもなんとかアプローチを続け、告白。

告白の返事は「ごめんなさい。今は無理です。嬉しいけど、ごめんなさい。」だった。

でも私はポジティブに捉え、「今は」だから!と思いながら時間は過ぎていき、何も無いまま中学を卒業。好きな人を追い、同じ高校に入学。高一でも何も無く、不貞腐れていた。

そして現在に至る。


「暇だー!」

部員4名しかいない幼馴染兼親友で構成された美術部で私の声が響き渡る。

「そりゃそうよ…恋も勉強も部活動もろくにしてないんだよ?」と部員の矢枝 由井(やえだ ゆい)がため息をついて言った。

「それ。でもまぁ、恋してる人はここにいるだろ?」と部員の村上 真野(むらかみ まの)が私を指さして言った。

「そうだねぇ。いいねぇ。恋してる目ぇ…してるねぇ…。」と部員の中村 花乃(なかむら かの)が私の目を覗きながら言った。

「やーめーろっ!!べ、別に?恋なんか?どうでもいいでしょ!恋は自分の心を汚すんだ!」

「でもキスしてんじゃん」

「あ、あれはただのハプニング!キ、キスなんてし、したくなかった!」

「あ、誤魔化してる。」真野がそういうと

「「うんうん。」」と由井と花乃が頷いた。

「んな!何よ、もう!小学生の時の話だし!てか恋だって苦しいだけだよ。1回振られてるし…?」私はそう言い、鼻と口の間にペンを挟んだ。

「でもそれだってさ、まだ好きじゃないから振ったって証拠はないよ?」由井はニヤついて腕を組み、「それはぁ、どういう…?」と首を傾げた花乃が私のペンを取って聞いていた。

「相手は家とか他の事情があったのかもよ」

「あぁ!良いこと思いついちゃったぁ!」花乃が大きい声を出し、立ち上がった。

「どした?」真野が花乃を椅子に座らせ聞いた。

「この美術部ぅ、廃部かもぉって言われてるじゃぁん。じゃあさぁ、めっちゃ優しくてぇいい先生のぉ軽井先生に頼んでさぁ、ここを「何でもやる部」にしようよぉ!」

「いきなりだな。ていうかそんな事できるのか?」真野が疑うような目で言った。

「確かぁ高校は部活を作ることもできたはずぅ。しかもぉ軽井先生さぁ校長先生とぉ仲良いじゃん。女の先生だしぃ。恋の相談とかできるしぃ!」

「おー!そして、恋とかの検証をすると!」乗り気な由井がウキウキして花乃を見た。

「そうそう!この部活で検証するのぉ!風のためにみんなで頑張ろぉ!」

「「「おー!」」」私以外の全員が賛成ところで「ちょちょちょ!ちょっと待って!検証って例えば何するの?」と私が聞くと由井が「それはその時決めよう!とりあえず先生に言ってみよう!」と軽く答えた。

私たちは軽井先生に頼んだ。

「「「「………お願いします!」」」」

「うーん…いいですよ!でもしっかり活動してもらいますからね!」

「「「「はい!」」」」

翌日の昼休み

「どうなったんだろう…」私はなんだかんだで心配していた。

「今日会議ぃ?みたいなのやるからぁ、その時だってぇ。」花乃がソワソワしながら言った。

「正直自信ないな。」真野が机に頭を打ちつけてため息をついた。

「私も」

「提案した私も自信ない…。」由井も花乃も不安そうな顔で言った。

「で、でも大丈夫だよ!ほら元気出して!」私は雰囲気を明るくしようと喝を入れた。

「それもそうだねぇ!」

でもみんな、私のために必死になってるけどみんなはなんか恋の事とか悩んでないのかなと私は思い、聞いてみる事にした。

「みんなはさ、さっき恋してないとか言ってたけど、ぶっちゃけどうなの?恋とかしないの?てかしたくないの?」

「正直ぃめんどくさくなぁい?」花乃は伸びをしながらつまらなそうに言った。

「そう?恋したいなー!真野はどうなの?」

「…私はあいつを嫌いと言うと嘘になるが…」

「え、あいつって誰?」真野から一度もそういう話を聞いたことがなかった私は真野の肩をガシッと掴んだ。

「えっと…あ!トイレ行きたくなってきた!じゃあ!」

「おいちょっと!逃げるな!真野!」

私たちは真野の足の速さには追いつかず、教室で待機する事にした。

「あいつは小学の時から足速いね…確か負けた事ないよね。陸上大会でも何回も優勝してるし」

由井が息切れをしながら言った。

「ねぇー。」

結局昼休みが終わるまで真野は来なかった。


翌日の朝。

先生から報告があった。

「この学校に「何でもやる部」という新しい部活ができる事になりました。」

「それってどんなことするんですか?本当に何でも?」

生徒達は「何でもやる部」という名前を書きざわついた。

「先生もよくわからないけど…廃部寸前の美術部変えただけだから…。」

ホームルーム後、軽井先生にお礼を言った。

「「「「軽井先生ありがとうございます!」」」」

「軽井先生が顧問ですか?」

「そうなりますね。でも基本的先生はいないので自由に活動する形になると思います。

「はぁい!」

「風、良かったね!」由井からの言葉に良かった…のか?と内心首を傾げながらも私は頷いた。

そうして何でもやる部の活動が始まったのである。

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