第7話
英会話、脱毛サロン、転職、婚活…
電車に乗る機会は月に1、2度だけど、車内広告はいつ見ても同じ気がする。どうせなら景色を楽しみたいが、窓の外は雑木林の木々ばかりだ。山武線の、特にこの辺りは山を切り開いて線路を敷いたらしく、見えるのはとにかく緑色。ここで海でも見えたら、正に大冒険にでも出るような感覚が味わえたのかもしれない。
『間もなく
抑揚のないアナウンスと共に、電車が速度を落とす。緑だらけだった景色に、徐々に建物の灰色やら白色やらが混ざり始める。舟戸大野は街と呼べるほど栄えていないが、果たして商業施設などあっただろうか。
開いた扉からホームに降りて、周りを見渡しみる。降車客はまばらだ。入れ替わりに乗り込む人も少ない。この時間なら仕方ないだろうが閑散としており、電車が行ってしまうと、あとは鳥の声と自販機の稼働音くらいしか聞こえない。時計を見ると、12時27分。乗車時間はざっと5分。短い。
「なんか店とかあるといいけどね」
改札へ向かう階段を下りながら、まっくんが言う。やはり彼もこの駅で降りたことはないらしい。この辺りはベッドタウンで、中学生がわざわざ電車で遊びにくるような場所じゃない。
改札から出てみると、案の定ではあるが、駅前にも関わらず時間つぶしにすら苦労しそうな寂れっぷりだった。コンビニや薬局、ファストフード店に小さな本屋。それくらいしか見当たらない。駅前として最低限の需要以上をそろえる気がないような、そんな町並みだ。当然、人出も少ない。
「どこ行けばいいのかな、これ…」
さすがのまっくんもこの閑散ぶりは予想外だったようで、戸惑っている。腹も減ってきたので何か食べたいが、飲食店はまずい。この時間帯に制服で入店すれば、間違いなく不審に思われるだろう。それに失念していたが、閑散しているとはいえ交番くらいは駅の近くにあるはずだ。幸い目に付くところには見当たらない。だがうろついていれば、警察官の目に止まる恐れは十分にある。
「なんかもう、あの本屋くらいしかなさそうじゃない?」
通りを渡った先にある、小さな本屋を指さして、まっくんが言った。
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