250.急がば回れってこういうことよね
「とりあえず魔物退治でいいのか?」
【そうですね。まあ、今のわたし達なら余裕だと思います。ただ、フレイムバードは準備をしていかないとキツイと思いますよ】
「そうなの?」
ドルブさんが受付の方へ行き、あたし達もその後を追う。
魔物退治はそれほど難しくないとレスバは言う。だけどフレイムバードは手ごわいらしい。
【というのもわたしとカナは火属性の魔法が得意ですからね。フレイムバードに魔法が通じないというのがまず苦戦理由の一つです。これがミズキなら水属性でかなり有利になるんですけど】
「一応、使えるわよ?」
【ミズキほどではないですよね?】
あたしが水の塊を手に出すがレスバは水樹より格段に落ちると言っていた。確かにあの子は水系の魔法はあたしや風太とは比べ物にならないくらい強力だ。
リクが言うにはあたし達の魔力量はそれほど変わらないけど、属性は本人の資質が大きく関わってくるとのこと。
水樹は名前の通りか、水属性の適性がかなり高いのよね。
【まあ、夏那は火属性に特化していますから落ち込むことはありませんよ】
「別に落ち込んでいないわよ!?」
【いひゃいいひゃい】
あたしは生意気なレスバの頬をひっぱってやった。すぐに逃れて距離を取ると、バスレーは頬をさすりながら口を開いた。
【ふう……とりあえず依頼はどうするんですか? ささっとフレイムバードを倒してしまって、先に進むのが最善な気がしますけど……】
レスバが小声でドルブさんの背中を見ながらそんなことを言って来る。確かにその通りだと思うけど、距離が問題だ。
「あの、ドルブさん。ここからロカリス国までどれくらいかかりますか?」
「ん? フレイムバードを倒さないと先には進めないが……そうだな。山を越えてから十五日というところか」
【……!? 結構離れていますね……】
「馬を持っているみたいだからもう少し短縮できるとは思うが、それくらい見ておいた方がいいだろう」
「ということね」
【なるほど……】
あの地図では端の方に『ロカリス国』としか書いていなかったので、実際どれくらい遠いか気になっていた。
ひとまずお金を稼いでから聞こうと思ったけどレスバの問いに答えるならこれが手っ取り早い。
五日くらいなら少し稼げば良さそうだけど、十五日となると食料だけでもかなりの金額が必要になる。ソアラもいるしね。
テントとかも欲しいし、火山に行くのに必要なアイテムもあるかもしれない。まずは手持ちがないため相場を知るためにもお金が必要だ。
「ここが依頼の掲示板だ。そういえばランクを聞いていなかったが、どうなんだ?」
「あ、そういえばそんなのあったわね。はい、ギルドカード」
あたしは首に下げていたギルドカードを取り出して見せる。
そこには『Bランク』と記載がり、全然ギルドとかに立ち寄っていないから忘れていたけど、そこそこいいランクだったことを思い出す。
「Bランクとはなかなかやるじゃないか。そっちの嬢ちゃんは?」
【わたしは持っていないんですよねー。カナの付き添いってことじゃ駄目ですかね?】
「それは構わないが、あった方がいいんじゃないか?」
「そうね……」
転移で飛ばされてきたという話をしたからか、なぜあたしだけしか持っていないのかという目を向けられた。
さて、リクならこういう時どうするかしら。
あたしは少し間を置いてから口を開く。
「この子は一人でギルドに行くことができないんですよ。だからいつもあたしが連れて行って、報酬は山分けって感じなんです」
「あんまり強くないのか? そう考えればBランクについていけば報酬は美味しいと思うが」
【なにおう! わたしはめっちゃ強……もが!】
そういう人も中には居るとドルブさんが語ってくれた。
レスバを弱いと勝手に判断してくれ、自己完結してくれたのでレスバは黙らせておくことにしよう。
「あたしほどではないですけど、戦えるのでどんな依頼でも大丈夫です!」
「ほう、それは頼もしい。……なら、この辺がBランクで受けられる限界だ。決まったら声をかけてくれ」
ドルブさんがBランクならだいたい大丈夫だろうと、大まかに教えてくれた後で受けへ戻って行った。
レスバの口から手を離して張り紙に目をやる。
「お金がいいやつがいいわよね。レスバ、あんたなら倒しやすいやつとか分かるんじゃない?」
ネイルドモールとかいう魔物の張り紙を手に取って見ながらレスバに声をかける。しかし、彼女から返事は無かった。
「ちょっとレスバ……って、うわあ!?」
【……】
見れば顔から床に突っ伏し、お尻を突き出して倒れていた。口を押えていて酸素不足になったのかもしれない。
「しっかりしなさいって。それでよくめっちゃ強いとか言おうとしたわね」
【ハッ!? 死んだおじいちゃんが手を振っていましたよ!?】
「危ないわね!? クソ雑魚じゃないあんた……」
とりあえず頬を抓って意識を取り戻させておく。おじいちゃんは亡くなっているらしい。
それはともかく、立ち上がらせて再び掲示板へ目を移す。
【……結構、厄介な魔物が多いですねえ】
「そうなの?」
すると掲示物に目を通したレスバが神妙な顔で口を開く。あたしが尋ねると、レスバが一枚剥がしてから言う。
【このスカンクスという魔物は酷い匂いを撒き散らしますし、カナが持っているネイルドモールは素早い動きで地面から突撃してくるようなヤツなんですよ。ロックトタースは単純に硬いという感じです。……そうですねえ、この中ならロックトタースがいいかもしれませんね。攻撃力は我々が上なので】
「オッケー、硬いだけなら魔法とかでなんとかなるでしょ」
ロックトタースは亀型の魔物らしく、動きはそれほど速くないとのこと。それなら遠距離からの攻撃で倒せると考えたあたし達は目標をそいつに決めた。報酬は一体倒せば金貨一枚となかなか高い。
「とりあえず宿代と細かい道具、ソアラの餌と厩舎代を稼がないとね。三頭くらい倒せればラッキーかな?」
【そうですね。わたしはともかく、ソアラには元気で居てもらわないと困りますから】
「なんであんたはいいのよ?」
【移動の問題ですねえ。……わたしは空を飛べますが、荷物はそれほど持てません。やはり荷台のある馬車が最適です。……痛い!?】
あたしの問いにそう答えるレスバに、目を細めてひっぱたいた。
「あんたになにかあっても寝覚めが悪いからそーいうのは止めてよね。ここまで旅をしてきた仲間なんだから、一緒にみんなと合流するわよ」
【カナ……そうですね。あなたを一人にしておくと大変なことになりそうですし、ミズキやフウタさんの行方も気になりますし】
「ビカライアとかじゃないんだ……」
魔族の仲間よりこっちを心配しているあたり、レスバも仲間意識があるっぽい。改めて握手をすると、掲示物をもってドルブさんのところへ行く。
「これでお願いしますー!」
「決めたか。……ふむ、これなら問題ないだろう。素材を入れる荷台を貸してやるから、この手形を持って厩舎へいけ。馬は自前のを使うんだ」
【わかりました! では、美味しいご飯のために頑張りましょう……】
「正直だな、そいつ……」
「気を付けてな嬢ちゃん達!」
ということであたし達は早速、ギルドを後にして魔物退治に向かうことにした。
荷台を借りてソアラを外に出す。
「ソアラ、手伝ってもらうわね」
【しゅっぱぁぁつ!】
ソアラが『平気です』といったように鳴き、レスバが調子に乗って大声を出していた。ドワーフの人達に注目されて恥ずかしい。
ま、これくらいがあたし達って感じがしていいかと思いつつ町を後にするのだった。
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