誓いの連盟、重なるほうき星

 「助けてくださいぃいいいい!!」

 突然夢野が叫び、俺に抱きつく。ということは敵襲だ。即座に身構え臨戦態勢をとる。敵は6人……何か見覚えのある顔がいる。

 「リサさん!?」

 「6班だと!?」

 メガネの男と声がシンクロした。攻撃はしてこない、敵意はないのだろうか。

 「夢野、どうだ?あいつら攻撃する感じか?」

 振り向くと夢野は俺の服に涙と鼻水をこびりつけていた。きたねぇ。

 「い、いえさっきまでは襲ってくる感じだったけど……私たちを見てやめたみたいです……あ、でも油断させる罠かも……。」

 夢野は3秒先の未来が分かる。確かに罠という可能性もなくはないが、リサもいることだし出来れば争いたくない。

 「罠ではない、失礼。私たちは君たちと争うつもりはない。顔が見えなかったので1班だと勘違いしたのだ。」

 メガネの男性は争う気はないというアピールなのか両手をあげる。

 「レン、やっぱり生き残ってんじゃん!てか6班全員いるの?すごい!」

 リサが飛び出てきて、俺の手を握る。俺に抱きついている夢野が軽く悲鳴をあげた。

 「夢野さんだっけ?ごめんて、そんなビビらないでよ。」

 リサは笑いながら夢野に対しても握手を求めるが夢野は応じない。どうしたというのか。

 「陽キャコワイ、陽キャコワイ、陽キャコワイ、陽キャコワイ……。」

 呪詛のように後ろで呟いている。とりあえず怖いなら俺の腰から手を離して背中から離れて欲しい。鼻水が背中にあたってしっとりする。

 「有栖川くんは彼らと知り合いだったのか?そんな素振りは全然見えなかったが。」

 リサから軽く紹介を受けた。メガネの男がリーダー格で二階堂というらしい。

 「6班が5班と3班を全滅させて、しかも全員無事っすか。決めた、あーしもリサちゃんの、派閥に入るっす。これで過半数賛成っすよリーダー?」

 派閥とは何だ。何か揉めごとでもしていたのだろうか。

 「う、うむ……有栖川くんは知り合いだったから、彼らと手を組みたかったのだな……いやしかしそれ抜きにしてもバッジを既に18個獲得しているとは……!」

 二階堂は腕を組んで悩んでいる。彼には彼なりの考えがあるのだろう。

 「よし決めたぞ、6班の諸君!我々と同盟を組もうではないか!共に東郷を倒すために!」

 彼らから話を聞いた。彼らの目的はあくまで1班打倒であると。バッジは1班の分だけでよく、仮に4班と出会ったら協力して倒し4班のバッジは全て6班のものにしても良いということだ。

 「な、何よその話……うまみがありすぎるじゃない!ぜ、絶対何かあるわ。」

 伊集院の言うとおりだ。2班にメリットがない。同盟を結ぶというのなら確かに何かしらの理由があるはずだ。

 「メリットならあるさ、高橋くんが味方につくというのは我々としてもありがたい話だ。」

 高橋さんに視線が集まる。当の本人は「あ?」と分かっていない様子だ。

 「高橋さんのレベルは我がクラスでもトップクラスなのは既に承知だ。そして一人で6班全員を守りきったその高潔な精神と能力の高さ。私は君のことを誤解していたようだ。」

 二階堂はあくまで高橋さん一人で全て5班も3班も倒したと思っている。まぁ6班の印象を考えたらそうなるのは自然なので仕方ないが。

 「……いいぜ、同盟の話。こちらとしても東郷の奴に痛い目合わせてやろうと思ってたところだしな。」

 何か気に入らない様子だったが、同盟について特に異論はないみたいだ。他のメンバーも異論はなく、こうして2班との共同戦線を結ぶことになった。

 「でも、1班をどうやって探すんだ?何か心当たりでも?」

 俺は凝視すると見える光のことを隠して2班の人たちに問いかける。答えは意外にもあっさりと返ってきて、2班の栗栖という女子が探知能力を持っているようだ。俺たちと合流したのもその能力のおかげだという。

 それから話し合いで今後の戦い方について決めた。高橋さん以外は戦闘に参加しなくても良いのでサポートにまわること、下山ルートを教えるので何かあれば真っ先に逃げろということだ。

 「それは駄目だな。1班と戦うのはあたし達も全員だ。」

 どうしてかとざわつく。高橋さんの気持ちは分かる。ここまで全員でやって来たのだ。だというのに最後だけ見ているだけというのは気が収まらない。

 「僕もそれには同感です、戦うなら全員で。」

 誰だ今の声と振り向くと剣だった。初めて彼が主張したのだ。

 二階堂は頭を抱えた。二階堂からすると足手まといが増えるのだから、避けたいところだろう。彼は本気で6班の無事を祈っているのだ。

 「分かっているのか、相手は1班……お前たちを守りきる何て保証はないぞ。」

 「誰が守れって言ったよ。あたし達の身はあたし達で守る。」

 無論、高橋さんの思惑としては打算的なものもあっただろう。だがそれ以上に、2班の人たちは本気で自分たちの身を案じていたとしても、それは根底に6班は力にならないという考えがあるからだ。それならば意味はないのだ。6班全員で力を合わせてこの試験を乗り越える。でなければ、ここでどれだけ結果を出しても、それは決して俺たちが認められることには繋がらないのだ。俺たちの覚悟を理解してくれたのか、二階堂はそれ以上、口を挟まなかった。

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