キマイラ転生
てつまめ
第1話 プロローグ
人間は様々な経験を積み重ね、インプットだけではなくアウトプットを繰り返す事で物事を冷静に分析出来ると思っている。
それは今でも間違っていないと思うが、理性メーターをぶっちぎると人間は固まる!!
何故断言出来るか……現状俺が固まっているからさ。
えっ?ホント何この状況……。
どうしてこうなった。
冷静になれ俺!!クールに、そう俺はクールなナイスガイ。
一から整理していこう。
俺の名前は、ーーーーーで、現在34歳の社畜マンだ。
言ってて悲しくなるな。
というか今ノイズがザザッとした気が……。
いかんいかん今はそれどころではない。
今日も普通に朝起きて会社に出た。
そして、今に至る…。
んー?あれー?回想早くね?
まあいいか、次は目の前の光景についてだな。
周りは真っ暗だな。うん。中央に光の柱が見える。
その光の柱に誰か居るな。あと、周りにも1,2,3……5人居るな。
中心以外真っ暗なのに1人1人の顔がしっかり分かるな。ふむ。不思議だな。
銀髪幼女と金髪幼女のセットに妖艶な雰囲気の女性に細身で色白の青年、死ぬ寸前のヨボヨボお爺様。
あとは中心に居る某緑色の巨人かってくらいの筋骨隆々のおっさんか……。
話しかけたくないな〜。
知らないけど知ってる人達。関わりたくないけど関わらないといけない、そんな気持ちになるのは何故かな。
そんな事を考えながら、その光の柱に近づいて誰に声を掛けようか悩んでいたら、金銀幼女が騒いでる
「やっと来た!!遅いからーーーーが暴れてるよ〜!!」
「ん?何だって?」
俺の両サイドにしがみつく金銀幼女に問い返すも震えるだけで応えてくれない。
仕方なく周りの人達を見るも皆視線は中心に注がれている。
溜息を吐きつつ中心に行こうした時、胸に激痛が走る。
「あがっ、ごぼっ、、なん、だこれ……」
ビチャビチャと地面に零れ落ちる自分の血を見ながら呻く。
痛みで思考にモヤがかかり始めた時、人の気配が増えたので顔を上げると金銀幼女以外の奴等も周りに集まっていた。
「お、前等、は、、、れ、だ」
口内には血が溢れまともに言葉が出てこなかったが意思は伝わった様で怠そうに色白青年が応える。
「僕達の存在に関しては意識が覚醒すれば理解出来るよ。でも今の僕達はこんな事しか出来ないから、まあ頑張ってよ。もう無理かもしれないけどね、ハァ〜だる」
更に追求しようとした時には光の柱に全員に掴まれて投げられてた。
どこにそんな力が、と言うか俺がこんな状況なのに怠いって酷くね?と愕然していたら頭に衝撃が走り意識が薄れ、徐々に暗幕が垂れ下がっていく。
……周りの騒音がガンガン響いてきて徐々に意識が覚醒してくる。
「ん……変な夢を見てたな、痛ッッ!!」
痛みが現実逃避を許してくれなかった。
自分の身体を見ると胸にナイフが刺さり身体中に切創、火傷、裂傷、打撲と胸の重傷以外は痛いが軽微な怪我をしていた。
そこで、段々と思い出してきた。
(あぁ、そういや俺はDIDだったんだっけ……んでさっきの夢みたいなのは深層心理の舞台っつうことか。なら痛みも代わりに受けてくれよ。まあ身体は1つだから無理か……)
自嘲気味にそんな事を考えながら周囲の音に耳を澄ませば物騒な言葉の数々が聴こえてくる、品が無いね。
やれ早く殺せだの、生きて帰すなだの、バラバラにしないと安心出来ないだの……。
(アイツ派手にやらかしたなぁ。まあ今更だから別に良いけどね。強いて言うなら最後は俺が派手にやりたかったけど、もう殆ど身体が動かないね)
動かない身体を観察して色々思考を巡らせていると、いつの間にか目の前に金髪美女が立っていた。
「……死ぬ前に女神が迎えに来てくれたのかな?それとも大罪人を断罪する死神かな?」
血を流し過ぎたのか喉元に溜まっていた血塊も既になく痛覚も意識も鈍っているので、やけに冷静且つ気楽な感じに話すと金髪美女は無機質な顔で淡々と今後の予定を語り始めた。
『貴方は命を奪いすぎた。輪廻の輪に帰す事は出来ない。ただ、私達は過度にこの世の理に干渉する事は出来ない。そのまま死ねば貴方は輪廻転生してしまう、よって追放する』
(……よくわかんねぇがラノベの定番の転生?つか頭に直接声が響いてる気がする、いやそんな事より転生って普通はクズか善人が行くんじゃね?俺は……まあいいか、次はもっと楽しい場所だといいな)
すんなり現状を受け入れるが、とりあえず適当に質問してみる。
「次の世界でもお前等は過度に干渉はしないのか?」
『私達は干渉出来ない。あちらの神々の都合は知らない。今は貴方が奪った命凡そ3万人の魂魄の対処で大変』
「あぁ……そりゃすまんね。とりあえず次があるんならもう聞きたい事もないな。そろそろ身体も限界だしね。そうだ、最後に貴女の名前だけ伺っても?」
その問いに少し思案顔になり、短く一言。
『ガイア』
倭国なのに大地母神の名前由来なのかと疑問に思いながらも深く追求せずに最後の言葉を交わす。
「良い名前だね。でもそろそろお別れみたいだ。もう君の綺麗な姿も見えないし、妖艶な響きの声音も聞こえないよ。それでは、さようなら……」
その言葉を最後に生命活動を終えた。
『歪みの修正完了。以後通常通りにシステムを移行します』
そして今までの喧騒が嘘の様に静まり、静謐な空間をただ美しい声だけが周囲へと木霊する。
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