(一)-9

 そう感心したが、実際は違っていた。

「俺たちは既に持っているからな」

 ツポレフは首を振った後にそう付け加えたのだった。

 なるほど、そういうことか。操縦するならいつでもいける、というわけか。それはそれでうらやましい。

 すると、どこからともかく教室の中から声が上がった。

「よし、勝負だ! 誰が一番早く木星にたどりつけるか!」

 教室では男子たちが雄叫びを上げていた。自分たちの手で宇宙船を操縦し、木星まで行く。その競争が今、始まった……ようだ。

 そう思っていると、学校のチャイムが鳴った。ホームルームも終了だ。チャイムと同時にクラスメートは一斉に立ち上がり、教室を出て行った。もちろん男子たちは、我先にと競うように走って出て行った。


(続く)

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