大学職員の憂鬱
半社会人
プロローグ
待ちわびた昇進
小湊は、文部科学省に入庁して7年目の、29歳だ。平々凡々を絵に描いたような容姿で、これまた地方の平凡な大学を卒業した。本来ならそのまま地元の市役所か県庁にでも就職するつもりだったのだが、模擬試験感覚で受けた国家公務員総合職試験に何故か合格してから、運命の歯車が狂い始める。
試験合格後の官庁訪問でも人事に気に入られてしまい、あれよあれよと言う間に、文部科学省に入庁した。
つまり、これでも、小湊は、キャリア官僚というやつだった。
もちろん、中央省庁はひと昔前ほど人気の就職先ではない。相次ぐ不祥事や、パワハラ、超時間残業などで、かつて官僚輩出機関だった東京大学からは、すっかりそっぽを向かれている。小湊の大学はお世辞にもトップレベルの大学とは言い難かったから、そうして余った枠に、お情けで入れてもらったのかもしれない。
それでも、世間的にはエリートに違いない。合格が決まったとき、小湊と同じく平凡な両親は、文字通り泣いて喜んだ。
それから、早7年。
就職できたのは運だったのかもしれないが、その後の公務員生活は、決して運だけで乗り切れるものではなかった。
月100時間以上の残業など当たり前。300時間をこなして、初めて見えてくる景色がある世界だ。
フィクションにあるほど露骨ではないが、政治家の
そんな地獄を耐えられたのは、矛盾するようだが、ひとえに、小湊が平凡だったからだ。
警察庁や財務省などの人気省庁と違い、小湊が就職した文部科学省は、良くも悪くも、平凡な省庁だ。
キラキラ輝くわけではなく、どちらかといえば、落ち着いて、事を淡々と進めていく。
そんな組織の体質と、小湊の気性が合っていたのだろう。
地味に、ぶれることなく、やるべきことをきちんとこなす。そんな文科省だからこそ、小湊は地獄を乗り切ることができた。
そうした役人生活にもいよいよ慣れてきた頃、小湊は
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