レビュー散文の箱

紺野しぐれ

第1話 フィフティシェイズオブグレイ(2015)

友人がかなり推した作品で、SM映画だから勧めにくいけどとてもいい、とのことで視聴。

あらすじ等については書きません。

ただ思ったことと、考察だけを述べていきます。


三作品のうちのファースト作品で、まだ全部を観ないままの感想。予想を大いに含みます。


クリスチャンとアナ、ドミナントとサブミッシブという契約愛人の関係性のお話。

正直、個人的に序盤の時点で個人的な経験から嫌な予感しかしなかった。

はじまる前から穏やかでは居られないことが分かり切っている関係。ましてやアナは処女だった。

契約前に、さらに処女に、手を出したクリスチャンには嫌悪と大人気なさを思ってしまう。

もちろん、どうしても欲しい渇望感、初めてすら自分に染め上げてしまえてさぞ支配し甲斐のある従属者ではあるだろう、気持ちが全くわからない訳ではない。アナの振る舞いは何も知らない仔犬、仔羊、まさに従属者の素質はあったと言えるだろうし。

だけど、いつかの終わりがある以上、彼女の人生を思うなら関わること自体が間違いだと感じる。

おそらく根底にはそういう理性の叫びがクリスチャンの中にもあり続けている……といいが。


理性と欲とのシーソーゲームはとても悦楽的である。

それに溺れるのは本能そのままだと知っている。

建前もプライドもそこにはない。

だけど、何かを得ることはできるだろうか。

渇き続けるだけだと私は思ってしまう。

そこを埋められるのが金銭なのかと思うほど。


アナはこの関係が苦しいのにやめることはできないだろう。

与えられた罰の痛みさえ、クリスチャンの痛みだと受け容れてそこに歓びさえ見出していくかも知れない。

彼を愛せるのは、救えるのは自分だけであると思い込めるなら。


倒錯的愛の根本には条件付きの愛が見え隠れする。

親が与えたものが、その個人にとっての世界の見え方そのものになってしまうものだと私個人は理解している。

歪んだ愛で育ったものは歪んだまま育つ。

成長過程でコテ入れこそできても、性根は変えられない。それをカルマと呼ぶように。


願わくば、続編でクリスチャンの抱える根の傷を癒して欲しい。

寛大な心と大きな視野がないと彼を本当に癒すことはできないと私は思う。

並大抵じゃない根気と信念がなければ、大抵の人間では音を上げるだろう。


心に残るいい作品だと思った。

が、単純に面白いだとかつまらないだとかで済ませられる作品ではなかった。

作品は鏡である。

自分の持つものが照らし出される、という意味ではこれだけ考えさせられている時点で自身に根の深い問題があるということだと思う。

問題を抱えていない人にとってはただのSM映画で終わることだろう。


最後に。

アッパークラスの恋愛はスケールが大きくていいなあ。

これが、貧困層だと目も当てられない、泥沼のバッドエンド、よくてビターエンド止まりだろう。

金銭は大抵のことを解決する、と感じてしまった庶民の感想。

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